【No.15】自力渡来説あり スイセン
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。
スイセン(ヒガンバナ科) Narcissus tazetta var. chinensis
今年最初の花は、スイセンです。
ラッパ水仙や口紅水仙等、スイセンには色々な種類や品種がありますが、日本で普通にスイセンといったらこの花。白い花弁で、中央に黄色い小さな副花冠をもったこの種類。地中海沿岸が原産地と言われ、日本には平安時代頃に、薬用または観賞用として中国経由で入って来たとされています。
ヨーロッパから中国へは、普通に陸路で人の手によって運ばれたと考えられますが、中国から先はどうやって渡来したかについては、以下の2説があるようです。
1.人の手で、船によって運ばれて来た。
2.球根が海流によって運ばれ、日本の海岸に漂着した。
二番目の方は、まあ言ってみれば自力渡来説、ということになるでしょうか。
でもこれ、決して荒唐無稽な説というわけではなく、球根が生きた状態で、海流に乗って日本の海岸に流れ着くことは、距離的に充分可能なのだそうです。
また、状況証拠と言えるのが、各地にあるスイセンの名所。越前海岸や千葉の鋸南町、伊豆の爪木崎、淡路島といった所が有名ですが、いずれも海岸または海岸近くに自生地があります。
例えば、揚子江や黄河等の川岸で野生化していた株の球根が、洪水等によって流されて海へ届き、そこから海流に乗って日本の海岸に流れ着いたかも知れません。流れ着いた先の海岸は、もともと植生が少なく、競争相手が少ない環境ですから、スイセンがそこに、自分達が生きていくための生態系の隙間を見出して繁殖した、と考えることは、充分可能なように思われます。
冒頭の初日の出の写真は、伊豆半島の南端近くにある爪木崎で撮影したものです。前述したように、ここもスイセンの自生地として有名です。私は、ここ十年ほど毎年爪木崎に初日の出を見に行くのですが、1月は丁度スイセンの開花時期でもあるので、初日の出を見た後は、海岸の崖に群生するスイセンと、辺りに漂う香りを楽しんで帰ることにしています。
ところが、今年はスイセンの花がずいぶんと少ない。去年の猛暑が影響したのでしょうか。よく見るとつぼみが多かったので、開花時期も遅れているのかも知れません。下の写真は今年の爪木崎の群生地の様子ですが、スイセンの花は、いつもの年の1/3以下という感じに見えました。黄色いツワブキの方が目立っていたくらいです。
<2025年 爪木崎のスイセン群生地の様子>
来年は、いつも通り綺麗に咲いてほしいものです。




