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あてどない植物記  作者: 蘭鍾馗


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【No.13】日本三大薬草② 漢方にはない センブリ

センブリ(リンドウ科

Swertia tosaensis Makino

挿絵(By みてみん)


 センブリです。


 とても苦いことでつとに有名な薬草。千回振り出してもまだ苦いから「千振せんぶり」なのだそうです。

 私は飲んだことありません。なので、どれくらい苦いかは知りませんが。


 薬としてのセンブリは、胃薬、あるいは整腸剤として使われます。血流を良くするため育毛剤になる、という話もありますがどうなんでしょうか。優れた薬効を持ち、「まさに薬である」という意味で「当薬とうやく」とも、またこれがあれば医者はいらない、ということで「医者倒し」の名でも呼ばれるとか。

 ドクダミほど幅広い薬効は持ちませんが、その効き目は折り紙付き、というところですかね。


 実は漢方には記載がなく、日本独自の伝統的な民間薬なのだそうです。


 草丈は数センチから、大きくてもせいぜい20cmくらい。小さな草です。写真の個体は、これでも大きい部類に入ります。秋に白い小さな花を沢山咲かせます。花びらには紫の細い筋が入って、なかなかきれいです。リンドウ科ですが、リンドウにはあまり似ていません。

 リンドウ属の花びらの間には「副片」という小さな花びらのようなものがって、花びら10枚あるように見えますが、センブリにはそれがありません。なので普通の花、という感じですね。


<参考:副片をもつコケリンドウの花

 花びらが10枚に見えませんか?>

挿絵(By みてみん)



 センブリは、「二年草」というちょっと特殊な生活史を持ちます。秋に発芽して、小さなロゼット(地面に接するように葉を広げた姿)で越冬し、翌年の秋には咲かず、もう一年生長して翌々年の秋に開花します。開花・結実した株は枯れます。つまり、発芽から開花・結実まで丸2年かかるということ。


 生えている場所は、湿地までいかないが湿った場所で、わずかに水の染み出た固い赤土の土手など、いかにも栄養の少なそうな場所です。栄養豊富な土があるところでは、背の高い他の草に負けてしまうので、こういう場所を選んで生育します。

 昔は人里周辺には草刈りされた草地が多かったので、そういう場所によく見られたそうですが、最近ではそういう半自然の草刈りされた草地が少なくなったので、あまり身近な所では見ることができません。

 ちなみに栽培は難しいとか。


 写真は福島県某所で撮影したものです。古い溜池の堤体の上に咲いていました。












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