【No.91】年明け最初の桜 カワヅザクラ
いつもは野生植物がネタなんですが、今回はたまにやる栽培種ネタの回。
といっても、これは野生種同士の交配種。それも、自然交雑でできたものが発見されて接ぎ木で増殖されたものです。ただし、野生ではあるはずのない組み合わせで出来たもので、そういう意味では野生種とは言えません。そういう、ちょっとややこしい生い立ちを持つ桜がこれ。
カワヅザクラ(バラ科)
Cerasus × kanzakura ‘Kawazu-zakura’
カワヅザクラです。
2月上旬から咲く、超早咲きの桜として、近年は結構有名になってきました。
この桜の際立った特徴は二つ。
・超早咲きであること
・花色が濃いピンクであること
です。
この品種が生まれたのは、静岡県の河津町。伊豆半島南部の東岸側にある町で、町の中央を河津川が流れていて、上流部の渓谷には「河津七滝」と言われる連続する小さな滝があり、下流にはこのカワヅザクラが両岸に植えられた長い桜堤があります。
カワヅザクラは、この河津川沿いの草むらの中に生えていた幼木を、1955年に飯田勝美さんという方が発見して庭先に植えたものが始まりと言われています。現在でもこの原木は生存しており、「河津桜原木」として河津町田中地区で見ることができます。
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このカワヅザクラ、オオシマザクラとカンヒザクラの交雑種であることが分かっています。
オオシマザクラは、白い大振りな花を咲かせる桜で、伊豆諸島が原産と言われています。ソメイヨシノの片親としても有名なこの種、桜餅を包む葉にすることでも知られています。各地で植栽されており、伊豆半島や房総半島では野生化したものも見られます。
オオシマザクラ(バラ科)
Cerasus speciosa
もう一方の交配親は、カンヒザクラ。
カンヒザクラ(バラ科)
Cerasus campanulata
カワヅザクラよりさらに濃い、紅色に近い花を咲かせます。花期は1~3月。カワヅザクラの早咲きの性質はこのカンヒザクラによるものです。特徴的な半開きの花が下を向いて咲きます。学名のcampanulataは「釣鐘型の」という意味で、半開きで下向きに咲く花の形を表現したものです。分布は中国、台湾で、沖縄の石垣島にも自生地があるとされますが、これについては台湾から人為的に持ち込まれたものが野生化したという説もあり、真相ははっきりしません。
カワヅザクラは、たまたま近い所に植えられていたこの2種が偶然に交雑し、さらにそこにもう一度カンヒザクラが交雑したものだそうです。河津川の桜堤を見ていると、花色には若干の変異があり、ソメイヨシノと違って複数の系統があるようです。
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最後に、河津川の桜堤の写真を。
<河津川の桜堤>
河津川の両岸の堤防には、河口から3kmほど上流までカワヅザクラが植えられており、開花期には見事な景観になります。ちなみに、カワヅザクラの後ろに少し覗いている冬枯れの木の枝は、まだ咲いていないソメイヨシノです。毎年2月上旬から3月上旬頃まで開かれる「河津桜まつり」では、左岸側の堤防沿いにいろんな屋台が出て賑やかになります。たこ焼き、牛串、桜饅頭、その他色々。変わったところでは、まな板の屋台(!)なんかが出ることも。
あと、地元で獲れた柑橘類が良く売られています。このあたりはみかん畑が多いんです。私のお勧めは「はるか」というみかん。色はレモンイエローで、皮は厚く、いかにも酸っぱそうな見た目をしているんですが、食べるとこれがとても甘い、美味しいみかんです。知ってる人は沢山買っていきます。
ちなみに、「はるみ」っていうみかんもあります。こっちはオレンジ色で濃厚な味が特徴。
この寒波が通り過ぎたら、咲き始めるんじゃないですかね。
週末のお出かけに、どうでしょうか。




