【No.90】春は風媒花から フサザクラ
早春に咲く花、色々あります。
去年の春にご紹介した「スプリング・エフェメラル」なんかが代表的なものなんですが、この時期を選んで咲く花には、またちょっと違ったものもあります。
風媒花。風で花粉を飛ばして受粉する花々です。
そのひとつが、これ。
フサザクラ(フサザクラ科)
Euptelea polyandra
フサザクラです。名前に「サクラ」とつきますが、桜の仲間(バラ科)ではなく、フサザクラ科。分類上はケシ科やキンポウゲ科に近い所に置かれる、被子植物の中ではどちらかというと原始的なグループになります。
フサザクラは、風媒花を咲かせる落葉樹です。風媒ですから、昆虫を呼び寄せるための美しい花びらを持ちません。上の写真に沢山写っている、くすんだピンク色のものは、花弁ではなく雄蕊。なので、本物の桜のような華やかさはありませんが、まだ他に花が咲いていない季節には、雑木林でこれが群開していると、それなりに美しいものです。
花を近くで見ると、こんな姿をしています。
<フサザクラの花>
緑色の葉芽の脇から、サーモンピンクの雄蕊が沢山ぶらさがっているのが分かります。これが花です。花びらはありません。このサーモンピンクに見えるものは、花粉が入った「葯」と呼ばれるもの。これが割れると、中から無数の花粉が出てきて、風に乗って散ってゆきます。
花粉を出し終わると、雄蕊はしぼんで糸くずのようになり、やがて脱落します。すると、雄蕊の陰に隠れていた雌蕊が顔を出します。こうして雄蕊が花粉を飛ばす「雄性期」と、それが終わって雌蕊が顔を出す「雌性期」に分かれることで、自家受粉を防いでいると考えられます。
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それにしても、何故「フサザクラ」と呼ばれるのでしょう?
これには二つの説があります。
ひとつは、樹皮に横長の皮目ができるのが桜に似ているから、という説。
でも、樹皮の色は灰色で、濃い茶色になる桜とはだいぶイメージが違う。皮目も桜ほどは目立ちませんから、これから「フサザクラ」の名がついたというのは、多少無理があるのではないか。
もうひとつの説は、花です。
花びらが無いとはいえ、くすんだサーモンピンクの雄蕊の色はそれなりに美しく、葉が出る前にこれが木全体に群開すると、それなりに見事です。なんとなく桜を連想してもおかしくないかも知れません。
というわけで、私としては「花が由来」説を支持しておきます。
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何故、風媒花はこんな早春の季節を選んで咲くのか。
理由があります。それは、葉が開く前の時期に咲かせることで、葉に受粉を邪魔されないようにするため。葉が開いていると、せっかく開いた花にうまく風が当たらなかったり、風で飛んできた花粉が葉に捕らえられたりするので、葉が開く前の今の時期が都合が良いのです。
これはスギのような常緑樹の風媒花も同じ。自分の葉には邪魔されてしまいますけど、他の落葉樹の葉が出ていないので、花粉はあまり邪魔されることなく、遠くへ飛んでいけます。
スギの話が出ると、どうしても気になるのは花粉症。調べてみると、スギ程ではありませんが、フサザクラも花粉症の原因となる場合があるようです。
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フサザクラの分布は本州、四国、九州。生育環境は、谷の源流や崩壊斜面、河原など、崩れたり流されたりして出来た裸地。いわゆる「先駆植物」です。
種子には小さな翼が付いていて、風に乗って飛んで行くようになっています。先駆植物にはこうした翼のある種子をつけるものが多く、谷や川を吹く風に乗って、新たな崩壊地へと旅立つのでしょう。
<フサザクラの葉と若い実>
早春の林の中で咲く風媒花、フサザクラでした。




