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あてどない植物記  作者: 蘭鍾馗


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【No.89】大人のりんご酒に フウトウカズラ

フウトウカズラ(コショウ科)

Piper kadsura

挿絵(By みてみん)


 フウトウカズラです。

 日本に2種しかない、コショウ科コショウ属のうちの1種。葉や実はコショウに似ています。

 関東以西の本州と四国、九州、南西諸島に分布するつる性の木本植物。フジとテイカカズラの時に出てきた、最初は草本のつるが成長すると木のようになる、いわゆる「藤本植物とうほんしょくぶつ」というやつですね。

 生育場所は海岸沿いの樹林の林縁部。伊豆半島の海沿いなんかに良く生えています。花は4~6月頃に、花弁のない、白いごく小さな花がひも状の花序につきます。残念ながら花の写真がありません。生えてる場所は分かってるんだから、今度撮りに行かないとね。

 実は冬に熟します。オレンジ色というか、明るい朱色みたいな感じの色です。実の形やサイズは、ちょうどあれ、「海ぶどう」くらいの感じですかね。他に木の実が少ない時期に熟すので、山では結構目立ちます。この実、鳥には人気があるようで、自生地では、林縁の足元におびただしい数の実生の子株がみられます。芽が出てしばらくは日陰で育つのですが、上の木が枯れたりして明るくなると、大きくなって木の幹に張り付いて登るようになり、やがて実をつけるようになります。この辺の育ち方はフジやテイカカズラと似ています。登攀の仕方はテイカカズラと同じ「張り付き型」。フジのように木に巻き付くのではなく、気根を出して木の幹に張り付いて登っていくタイプです。


 ◇


 このフウトウカズラの実、弱いながらコショウの香りがします。味は、コショウと比べると辛みはだいぶ控えめ。なので、コショウの代用品にはなりそうにありません。利用方法としては、酢漬けや塩漬けにすると食べられるそうですが、私はまだ試したことありません。今度やってみようっと。


 私の場合、フウトウカズラの実は果実酒に使います。

 といっても、これだけで果実酒を作ろうと思うとすごい量が要るので、私はこれを他の果実酒の風味付けに使います。

 良くやるのが、りんご酒に入れるやつ。

 りんごをホワイトリカーに漬けて果実酒にすると、かなり甘い酒になります。これだけでも美味しいのは美味しいんですが、私はこれにフウトウカズラの実を入れます。量は1リットルあたり2~3房あれば十分です。りんごを漬ける時にこれを同時に入れて、半年くらい待ちます。砂糖は入れません。りんごだけで充分な甘さが出ます。漬けるりんごは少々酸っぱくても大丈夫。漬けている間に酸味がある程度飛んで、元のりんごより甘い味に仕上がります。


 出来上がったりんご酒は、何というか、大人の味。

 じゃあ「子供のりんご酒」があるのかよ、っていうツッコミはこの際なしで。

 程よくスパイシーな風味が加わって、何ともいえない美味しさです。

 サルナシとかカリンとか、他の果物でも幾つか試してみたんですが、風味の相性はりんごが一番良かったかな。


 ◇


 このフウトウカズラ、私が毎年初日の出を見に行く伊豆の爪木崎にも沢山生えていて、冬のこの時期にはオレンジ色の実があちこちに生っているんですが、今年は(昨年は、かな)だいぶ少な目でした。シロダモやガマズミ、ヤブニッケイ等、他の木の実も少なかったので、木の実全般が不作だったのかも知れません。あちこちで熊が出没したのとまんざら無関係でもないのかも。そういえば、この間伊豆でも熊が出たらしいですが。


 ◇


 日本のコショウ、フウトウカズラの話でした。


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