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最弱モブの俺がうっかり黒幕を倒したら…  作者: 空野進


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間話 ブヒートリヒ男爵

 田舎村から少し離れた地に、この辺りにしてはやや賑わっているブヒートリヒ男爵領の町があった。

 歴史を感じさせる古びた城門に守られた都市の中へと入ると石畳がまっすぐ領主邸へと伸びていた。

 道行く人たちの多くは商人でたくさんの商品を運んでいる。

 その大多数が貴金属であり、ほとんど全ての商人が領主邸へ向かっていた。


 それ以外の住人はほとんど見かけない。

 それにはある深い事情が絡んでいたのだ――。




「ぶひひひっ、今回も中々いい宝石だな」

「お気に召していただけたようで何よりです」



 縦にも横にも大きく、今にもはち切れんばかりに悲鳴を上げている服を着ている豚、もといブヒートリヒ男爵は商人が持ってきた宝石を見て不気味に口元を歪めていた。

 その側で商人は若干眉をひそめながらも笑顔を見せている。


 男爵が座っている椅子は足が折れ曲がり、すでに座椅子に近くなっているが、そんなこと気にしていない男爵。

 片手に宝石を持ちながらももう片方の手では肉を頬張っている。


 しっかりとカトラリーが置かれているにも拘わらずにそれを無視して素手でわしづかみにして……。


 商品に男爵の食べかすがつくことをあまり良くは思わないながらも気に入った商品は全て男爵が買い上げてくれるためにゴマを擦ることも大切であったのだ。



「この商品、全て貰った」

「ありがとうございます」



 宝石を無造作に後ろへ放り投げると彼の執事がそれをそのまま箱の中へとしまっていた。

 そして、商人に金を払っていく。



「そういえば最近こちらの方に勇者様が来られた、と聞きましたけどブヒートリヒ男爵様はなにか聞かれてますか?」

「勇者? 知らんな、そんなやつ。お前は何か聞いているか?」



 男爵は後ろに控えている執事に問いかける。



「なんでもここより西に位置する村が魔族に占拠されているとかで、そこを解放するために動かれているそうですね」

「そのような金も生み出さない村、捨て置けば良いものを」

「全くその通りにございますね。世の中、やはり金で回っておりますから。ただ、私どもが王都で仕入れた話では勇者様の他にも色んな方がこちらのほうへ向かっているそうにございます」

「とうぜんであろう? 魔族を倒すのに一人で旅に出るなどバカのすることではないか。そもそも魔族なんぞを倒しに行くこと自体がバカのすることではあるが」



 男爵は口の中に入ったものが飛び散るのも気にせずに笑い声を上げる。



「それが魔族連中も中々宝をため込んでいるようで……」

「……ほう。その話を詳しく聞かせろ」

「私どももあくまでも噂程度で詳しくは知らないのですが、まことしやかに好んで金品を集める話はよく聞きますね」

「ぶひひっ、そういうことなら話は変わってくるな。おいっ、筆を貸せ」



 図ったように差し出される紙と筆。

 そこに男爵は汚い文字で書き殴っていく。



「ぶひひっ、今日より我が領地では魔族討伐の際に得た金品の九割を税としていただくことにする。これでどうだ?」

「それはそれは。良いお考えにございます。金品の一割も頂けるなんて勇者もきっと喜びにむせび泣くことでしょう」

「よし、では早速その勇者から取り立ててこい!」

「かしこまりました。すぐに手配をさせていただきます」



 執事は一度頭を下げるとすぐさま姿を消していた。




◇◇◇◇◇◇




 数日が過ぎ、男爵の下に先日の取り立てについての話が報告される。




「ブヒートリヒ様、ご報告が……」

「なんだ、私は忙しいんだぞ」




 肉を食べ宝石を見てニヤけているだけなのだが、執事は本当に申し訳なさそうにいう。




「先日の勇者からの取り立ての件でございます」

「ほう、いくらとれた。白金貨数枚くらいはいったであろう?」

「いえ、我々の取り立てに感づいた勇者は税から免れるために卑怯にも罠を仕掛けたようで、取立て屋が全滅したとのことです」

「……ちっ、使えない奴らだ」



 男爵は食べかけの肉を放り投げる。

 執事はそれをサッと躱すと肉はそのまま壁にぶつかって、ゆっくりと床に落ちていった。



「勇者も勇者だ。せっかくこの私が慈悲を与えてやったにも拘わらずこんな仕打ちをしてくるなら考えがあるぞ」



 男爵は目の前に置かれた机を力いっぱい殴りつける。

 すると机に置かれた料理の数々が床に落ちる。



「そのへんぴな村は私に逆らった反逆者として、消すことにする。異論はあるか?」

「もちろんありません。全てはブヒートリヒ様のお心のままに」



 恭しく頭を下げる執事。

 男爵は自身が愛用している杖を手に、男爵が乗っても壊れないように特注した馬車に乗り込むとそのまま田舎村へ向かって出発するのだった。

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