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最弱モブの俺がうっかり黒幕を倒したら…  作者: 空野進


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第21話 剣士アーカス

 ただ少し気になることもある。

 『ドラゴンの秘宝』だと職業でも勇者になっていたはずだ。

 勇者が勇者じゃなくなったとしたら職業は……無職?


 俺はこっそりと駄剣に問いかける。



「今勇者の職業って何になってるんだ?」

『えっ? 勇者様は勇者様ですよ?』

「俺のことじゃないぞ? あいつのことだ」

『あぁ、あの人ですか。何か仕事をして欲しいですよね』



 聖剣の言葉でおおよそ事情を察する。

 つまり今のあいつは俺同様にモブ、ということだ。


 あまりにも簡単にエリザベートに洗脳された事といい、勇者の割には不自然な行動が目立っていたが、モブだったというなら納得がいく。


 それどころかモブなのに世界を救おうと頑張っていた、ということに驚きを隠しきれない。


 そうわかるとなんだか急に親近感がわいてくる。



「まぁ、戦い詰めで疲れたんじゃないか? 一旦ここでゆっくり休んでいくと良いぞ」

「……どう見ても敵陣ど真ん中なんだが?」



 勇者はあきれ顔を見せている。



「ここに敵なんて……」



 無理やり勇者にしようとしているミリアやマーシャ。

 敵側に勧誘しようとしている魔王やサヴァン。

 なぜか居座っているオーガ。

 うるさい駄剣。



 思えばここには敵だらけしかいない。

 ある意味危険察知する力は勇者らしい。



「……大丈夫だ。周りは敵だらけだけど危険はないからな」

「どう見ても危険なだけじゃないか……」



 確かにこんなメインキャラだらけなところにモブが住むべきじゃないよな。



「よし、それなら俺も――」

「どこか行くのですか? 私もついて行きますね」

「ボクも一緒に行くよ」

「ご一緒させていただきます」



 俺が声を出すと当たり前のようにミリアとマーシャとオーガがついてこようとする。



「いやいや、なんでついてくるんだよ!?」

「私はどこまでも勇……リック様について行きますから」

「ボクはミリアについて行くだけだからね」

「俺はリック様の部下ですから」



 仲間になったらイベント以外では外せない、ということか。



『もちろん私もついて行きますよぉ』



 艶々しい声を出してくる聖剣をとりあえず放り投げておく。


 結局ついてこられるならどこにいても一緒なので、それならこの村にいる方がマシだった。



「さて、聞きたいことも聞いたけど、どうする? さすがに村一つ滅ぼしてる相手をこのまま逃してしまうのもよくないか?」

「それならボクに良い考えがあるよ」



 マーシャはにっこりと微笑む。



「えっと、キミってたしか以前にボクたちに声を掛けてきてたラグーンって人だよね?」

「あ、あぁ、そうだが?」

「それならちょうどいいね。洗脳に負けないようにとある人を紹介するよ」

「――いいのか!?」



 勇者は驚きの表情を浮かべる。

 元々エリザベートを仲間にした理由も他に仲間が作れなかったからだろうし、勇者にとってはすごくありがたい提案なのだろう。


 そんな勇者の反応を見て、マーシャはにっこり微笑む。



「もちろんだよ。あいつもちょうど特訓相手を捜していたし、鍛えてもらうと良いよ」

「確かに私も誰かいないかと聞かれてしましたね」



 どうやらマーシャとミリア、二人の知り合いらしい。


 そこまで言われると俺も誰のことを差しているのかわかってくる。



――戦士アーカスのことだろうな。



 あまり頭では考えずに常に筋肉がどうとか言っていた記憶しかない。それでもパーティー内で圧倒的な丈夫さをほこり、常に最前線で味方を守ってくれる頼もしい盾役だった。


 そんな彼の下へ連れて行かれる、ということは……。



――うん、ご愁傷様。



 たかがモブ程度がアーカスの訓練について行くのはなかなか大変そうではあるが、勇者はやる気のようなので問題なさそうだった。



「それじゃあちょっと連絡しておくね、あいつからの返事があったら王都に向かうと良いよ」

「済まない。助かる」



 こうして勇者は剣士マーカスの下で修行させられることになるのだった――。




◇◇◇◇◇◇




 勇者が王都に出かけて、この村は安全に……と思っていたのだが、そう簡単にいかなかった。


 なぜか勇者は俺たちの家の隣に小さな家を作り住み着いている。

 案外手先は器用なのかも知れない。


 ってそうじゃなくて……。



 なぜかマーシャがアーカスから返事をもらったあとも勇者は俺たちの家の側に住み続けていた。

 その理由は簡単で……。



「アーカス、一度こっちに来るんだって」



 朝の何気ない会話でそんなことを言われる。

 それを聞いた俺は思わず口をぽっかり開けて朝食を食べるのすら忘れてしまっていた。



「あっ、アーくんもくるですね」



 ミリアはどこか嬉しそうにしている。



――なんで勇者パーティーが全員揃うんだよ。勇者もいるし、捨てたはずの聖剣は戻ってきてるし……。



 もう絶対に戻ってくるなら、と今は物干し代わりに使っていた。



『わ、私は物干しじゃないですよぉ』

「表札になるのとどっちがいい?」

『どっちも嫌ですぅ』

「じゃあ両方試してみようか」

『え゛っ!?』



 明日には表札をやってもらう予定となっていた。


 剣士アーカスのことも大体知ってはいるものの、既に原作はないに等しいので詳細を聞くことにした。



「そのアーくんってどういうやつなんだ?」

「んーっ、一言で言うならバカね」

「ずっと体を鍛えててすごいんですよ」



――つまり筋肉バカ……と。



「それなら落とし穴に落ちそうだな」

「なんで罠に掛けようとしてるのですか?」



 一瞬場が凍り付く。



「いや、危険だから?」

「あー、確かに危険だね」

「それもそうですね」



 なんとなく適当に言ったのだが、同意されてしまい俺は不安に苛まれるのだった。



 許可ももらったので家の周りに剣士アーカス用の罠を張り巡らしておく。

 害獣用でも勇者用でもないためにとりあえず隙間なく、大量に設置しておく。


 一応俺たちはかからないようにして……。

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