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彼女が聖騎士の転生者!タイムリミット24時間で故郷に帰るはずが、全部演技だった件

「ごめんね、あと24時間しかないの」


え?何それ、死ぬの?って思ったけど、彼女は真顔で言ってた。

夏の夕方、蝉の声がジリジリと鳴いている。普段ならのんびり聴いてる音も、今はなんか不安を煽るだけだ。

それにしても、突然「時間がない」とか言い出されると、頭の中が完全に真っ白になる。


「……どういう意味?」


僕、完全に混乱して聞き返す。だって「時間がない」って、普通の会話じゃ出てこないワードだよね?しかも彼女、いつもと違う真剣な表情してるし、何か本当に深刻そうだ。


「私ね、転生者なの。明日にはこの世界を去らなきゃいけないの。もう君とは会えなくなる」


は?転生者?何それ、冗談だろ?

僕の脳は情報過多で処理落ち。彼女の真面目な顔と、あまりにぶっ飛んだ内容に、しばらく言葉が出なかった。


「本当に?」


「うん、マジだよ。転生してからこの世界で過ごせる時間が限られてて、あと24時間しかないんだ」


マジか。急に現実味が増してきたぞ。24時間って、おいおい、めっちゃ切羽詰まってるじゃん。しかも、今までそんなこと一言も言わなかったのに、今さらかよ!


「もっと早く言ってくれたら、なんかできたかもしれないだろ……」


「言ったところで何も変わらないよ。私はもう行かないといけない。だけど、最後の日は君と一緒にいたかったんだ」


あぁ、なんかもう泣きそうになるじゃん。今までそんなこと考えたことなかったけど、彼女と過ごした時間が急に重みを持って感じられてくる。


で、ここで思い返すと、確かに彼女の行動はちょいちょいおかしかったんだ。


「ご飯作る時、やたらと手を仰いで、何か透明なものでも持ってるみたいにしてたよな」


「荷物運ぶ時も、わざわざ手を高く上げてから運んでたし」


「あと、寝る前は必ず『任務完了』って言って寝てたよな」


今思うと、明らかに不自然なんだよな。でもその時は「個性かな?」って感じで流してた僕もアホすぎる。

あ、そういえば――。


「本当に異世界とか、転生者だったのか?」


「うん、そうだよ。前世では異世界の騎士だったから、その癖がまだ抜けないんだよね」


やっぱりか……いや、やっぱりってなんだ?

でも、もう全部信じるしかないんだ。何言っても説得力あるし。



---


そして、いよいよ別れの時間が来た。


夕焼けが美しい丘の上、彼女は静かに立っていた。風が吹いて、彼女の髪がゆっくり揺れる。その光景があまりに綺麗で、僕は言葉が出なかった。


「これで本当にお別れだね」


彼女がぽつりと呟く。うん、ここまで来たらもう映画だよ。演技じゃないなら、泣く準備しといたほうがいいかもしれない。


「本当に行くのか?」


僕は震える声で聞いた。最後まで信じたくない気持ちが溢れてくる。


「うん。でも君と過ごした時間は本当に楽しかったよ。きっとまたどこかで会えるから」


彼女は優しく笑った。夕日をバックにしたその笑顔は、どこか儚げで、綺麗で、そして悲しい。もう、泣きそうだ。でも、泣いちゃダメだ。僕、ここでは男らしく送り出さなきゃ。


「ありがとう、今まで……さよなら」


そう言うと、彼女はふわりと風に乗るように歩き出し、姿が薄れていく。

消えていく彼女を見送ることしかできなくて、僕はただ立ち尽くしていた。ああ、これで本当に終わりか……。


そう思った瞬間。


「ふぅ、やっぱ演技って疲れるね!」


――え?

振り返ると、そこには彼女が笑顔で立っている。え、消えたはずじゃ?いや、え?なにこれ?


「何がどうなってんだ……?」


僕が混乱していると、彼女はケラケラと笑い出す。


「ごめんごめん!実は全部演技だったの!次の演劇で転生者の役をやるから、ちょっと練習させてもらっちゃった!」


……は?え、嘘だろ。僕、完全に騙された。

この24時間、ずっと深刻に考えてた僕って一体何だったんだ?


「え、じゃあ全部嘘だったの?」


「うん!ほんとにごめんね。でも君、リアクション最高だったから、すっごく助かった!」


彼女は満足げに言う。

ああ、もう、僕は頭を抱えるしかなかった。完璧に騙されてた。けど、なんか彼女が嬉しそうだから、もう笑うしかない。


「ほんとにお前ってさ、こういうとこあるよな……」


「でしょ?でもね、これからも君と一緒にいたいって思ったのは本当だよ!よろしくね!」


そう言って彼女は笑う。結局、演技だったけど、まあこれで良かったのかなと思うしかないか。


そして、僕は大きく息をついて、笑いながら言った。


「……ああ、こちらこそ」


でも、その瞬間、心の中でポツリとつぶやいた。


(まあ、実は俺も転生者なんだけどね。ずっと一般人のフリしてたけど、まさか彼女にバレなかったとは……)


彼女が去っても僕はここに残る。僕は、異世界から来たただの「転生者」だ。次の転生までは、この世界でのんびりするつもりだけど、彼女が転生騎士をやるなら、僕も次は本気で役に挑戦してみようかな。


実は「お互い演技」だったってオチ、バレるのはいつになるんだろうか。

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