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記憶の楪  作者: 燈
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【序章】記憶の探究者の物語

世の中には、大切にしなきゃいけないモノがある。

それらのことは、大抵はお金で解決が出来てしまう……

いや、お金が無いと生きてけれないのだ。

それは違うと言う人もいるが、何を楽しむのにもお金は必要だし、

お金が無いとそもそもの基盤が崩れてしまう。

思い出や家族、仲間、趣味はお金があってこそモノだと思う。

ある漫画には名言がある。

命より金の方が重い

確かに、お金で買えないモノの方が少ないかもしれない。

お金があれば、趣味であれば、自分だけの作品を描いてもらうことも可能だろう。

お金があれば、色んな人からちやほやされるだろう。

だけど、お金で買えないモノも確かに存在する。

それは、自身で身につけた技術力、記憶、経験はどうだろうか?

記憶は人の人格を形成する上で最も重要な要素の一つである。

経験や技術力……

それは、自身の手の知識や経験によって培われた力。

これは、お金を出して有名なスクールに通おうが、

インフルエンサーと言われる有名人に習っても、

自身が地道に積み重ねなければ習得が出来ない、唯一無二の才能だ。

お金は、知識や技術、経験を手助けしてくれるモノだが、

それも扱う人次第で、全くの無価値である。

チャンスと言うのもそうだ。

チャンスは対等に巡ってくるものでは無い。

自身で行動をして、掴みにいくモノだと常々感じている。

何も行動を起こせない人にはチャンスは巡って来ないし、

例え巡ってきたとしても、その段階でそれ相応の知識や経験が必要になってくる。

つまりは、チャンスを掴むだけではダメで、掴んだら離さない為のスペックが要求されるのである。

そして私も、そのチャンスを逃そうとしていた。

少なくとも私、東雲遥は、そうだった。

私の職業はVTuberで、そこそこ売れていて、本業として生計を立てられるくらいには有名だ。

だけど、それ以上に成長が出来なくて日々悩んでいた。

そんな最中、1つのチャンスが舞い込んでくる。

それは、有名VTuberとのコラボ企画である。

これはチャンスだと思ったけど……

でも、私の声とはかけ離れていて、この企画の当て馬にされると分かってしまった。

あぁ……私の声がもっと可愛いければ、主役になれたのに……

「その願い叶えてあげようか?」

すぐ傍で声が聞こえた。

いや耳元だ。

怖いもの見たさに振り向いて見ると、そこには1人の少女が微笑んだ。

紅い瞳に、薄く赤い唇、透き通りそうな粉雪の肌。

丸みを帯びながらも通った、胸の下へと伸びる、淡く白い髪の毛。

服装は、和服?だろうか。白い着物に下はスカートで、どことなく今風だけど、古風を感じさせる衣装だ。

小柄で幼い感じを受けるが、雰囲気に飲み込まれそうになるほど幻想的な少女だった。

「あ……あなたは……誰……?」

この場所は、関係者以外は立ち入り禁止の筈なのに、なんで……?

恐る恐る聞いてみた。

「ん?私が必要とされているみたいだったから……♪」

幼くも柔らかい声が、やけにオトナびて聞こえた。

「必要?それって、さっきのこと……なの?」

「そうさ。ましろならキミの願いを叶えることが出来るよ。」

と、少女の横から黒い猫が現れた。

「え?今……その黒猫……喋って!?」

その言葉に少女は、黒猫が喋ることが当たり前かのように、不思議そうに。

「あっ、そっか。」

少女は察したように

「この子は、ロゼ。私の使い魔だよ。」

「え?えぇ!?」

遥は、混乱して何から突っ込んでいいのかあたふたしていた。

「ん~?なら、これなら信じるかな?」

「ロゼ、あれ取りたい。」

「おっけー。」

ロゼがしっぽで環を作ると、そこに少女は手を突っ込んだ。

「あぁっ!そこぉ…くすぐったいよぅ~!うひゃっ!」

「うぅ……。ちょっとロゼ黙ってて。」

と、その環から大きな鎌を取り出した。

その風貌は、見た目は天使の様だが、大鎌を持ったことにより、それは死神、悪魔とも取れる存在に見えた。

あまりのギャップに震えながらも……。

「あ……あなたは、天使?それとも、悪魔?将又死神なの!?」

じっと遥を見つめると。

「そっか。なら自己紹介が先だね。」

「私の名前は、ましろ。」

「天使ではなく、悪魔でもない。将又死神でもないよ。」

ましろは遥の問いに淡々と答える。

「じゃあ、ましろは一体何者なの?」

ましろは息を整えると……。

「私は、メモシーカー。記憶の探究者だよ。」

「この世にはね?色々な者が存在しているんだよ。」

「ほら、天使や悪魔、死神だっている。不思議な存在は発見されていないだけで、あなたの傍にも意外といるんだよ。」

それはおとぎ話のような、でも現実としてそれはいて、

何より、黒猫が喋るのだから信じずにはいられなかった。

「な、なら!100歩譲って、そのメモシーカーとやらのましろは、どうやって私の願いを叶えてくれるの?」

この質問を待っていたばかりに、ましろはさっきより少し声のトーンを上げて……。

「そうだね。メモシーカーは、さっきも言った通り、記憶の探究者なんだ。」

「私達はね?人の記憶を断裁して、自身の知識や見識を得るのが仕事なの。」

「でもただ断裁するだけでは、人間には何のメリットも無いよね?」

「だから私達メモシーカーは、人間と取引をするの。」

何だろう、これを聞いてはいけない気がしたけど、今の遥には聞く以外の選択肢は無かった。

「取引。つまりあなたの願いを叶える為に、その代償としてそれ相応の記憶も貰うってことだよ。」

「それって、それ相応なら何でも願いを叶えることが出来るの?」

遥はさっきまでの恐怖心が嘘のように消え、欲望が完全に勝っていた。

「もちろん。ただ等価交換だから、願いの大きさによって、記憶も沢山持っていかれちゃうから気を付けてね。」

「そ、そうなのね。なら、そのあげる記憶は選ぶことは出来るの?」

「ううん。断裁する記憶は、選ばないの。」

「ふ~ん。つまりはランダムってことなんだ。」

「じゃあさ。私の願いは、どのくらいの記憶をあげれば叶えられるの?」

ましろは、少しの間無言になり、寂し気な表情を浮かべながら、再び口を開いた。

「あなたの願いなら、記憶のワンシーン程度かな。」

……やったぁ⁉

遥がそのことを聞いて、安堵したのか、漫勉の笑みを見せると……。

「ならお願い。私の願いを叶えてっ!!」









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