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第4話 勉強も一緒なのです

 予想はしていたけど、勉強を始めても放してくれなかった。



「今から勉強したいから、放してくれないか? 腕をつかまれたままだと字も書けない」

「そうですね。じゃあ、太ももを掴ませて下さい」

「うおっ! おおー、あぶねー」

「どうしたんですか?」

「今、もう少しで当たりそうだったぞ!」

「何がですか?」



 こいつ、わざと言っているのか? そもそも、確信犯か?



「もう少し、膝の方にしろよ」

「こうですか? それともこの当たりですか? それとも」

「ちょっと待て! そうやってナゼナゼ触るんじゃない!」

「んーー、注文が多いでのすぅ」



 なんか凄い身体を寄せて、俺の太ももを触ってきやがる。

 いかん、いかん、なんか向こうのペースなっているぞ。



「何でそこまで掴もうとするんだ? まさか、エネルギーを吸収しているわけじゃないだろうな?」

「違います! ルナの方から愛を注ぎ込んでいるのです」


「返します!」

「じゃあ、ルナの太ももに手を置いて下さい。それで返せます」

「なっ!」



 短いスカート履いているから、素足じゃないか。

 こんな所に手なんか置いたら……って! いかん、いかん!


 完全に向こうのペースだ。ここは負けを認めよう。

 


「俺が悪かった。でも、勉強したいから大人しくしてくれないか?」

「はい。ルナは邪魔したくありません」



 こうして、暫く俺は勉強していたのだが……。



「すぅー、すぅー、すぅー」

「ん?」

「すぅー、すぅー、すぅー」


 

 これはあいつの寝息か?

 俺はゆっくりと、顔を覗いてみた。すると……。



「か、可愛い……」



 いやいや、何を言っているんだ俺は!?

 冷静になれー、冷静に。


 これは逃げるチャンスではないか。一度外に出よう。そうすれば向こう慌てて外に出るだろう。あとは隙を見て家に戻って鍵を閉める。


 よし、この作戦でいこう。



「そーと……」

「すぅー、すぅー、すぅー」



 俺はゆっくりと手をどかした。しかし!



「だめですぅ……ルナから……はにゃれないで……くらしゃい……すぅー」

「駄目だこりゃあ」



 ここまで来るともう執念だな。

 別にこんな手振り払って、強行突破すればいい話なんだが……。

 何故かそうしようとしても、不思議と出来ないんだよなぁ……。

 

 傍にいても悪い気がしないし、逆に妙に落ち着く。勉強も集中出来たし……。

 知らない子だったら、こんな風になるかな……。

 

 もしかしたら、本当にこの子は……。

 いや……そんなはずは……ないさ……。

 なんか俺も眠くなってきた……。


 ……。


 ……。



「起きてください。勉強しなくて大丈夫ですか?」

「むにゃむにゃ、ルナ……」

「え!? 今ルナの名前を……」

「ルナ、ごめんな……俺は……俺は? え? あー? 夢か? なんか切ない夢だったけど、何の夢か忘れた。あー、寝てしまったか……」


「今、ルナの名前を呼びました! 何か思い出したのですか!?」

「え!? そんなこと言った!? 何も覚えてないわ。それより、もう夕方になってないか?」



 なんか変な寝言を言ってしまったのか? 口を押さえて凄い驚いているぞ。

 もしかすると、あいつの妄想の夢でも見ていたかもしれないな。



「本当に……ルナのことを覚えてないのですか?」

「覚えてるも何も、お前の妄想だろう?」

「妄想じゃ……ありません……」

「悪かった。もう妄想とか言わないから、そんな悲しい顔するなよ」



 今にも泣きそうな顔は、勘弁して頂きたい。



「それより、昼食食べてないから、腹減っただろう? 夕食にしよう」

「うん……」



 ちょっと、落ち込んでいるな。グイグイ来る割には、メンタルが強い子ではないかもしれない。


 

「はっ、ル、ルナは大丈夫ですよ。元気が取り柄です」

「なんか無理に笑顔作ってないか?」

「そんなことはないのです。ルナのことは心配しなくても大丈夫です」



 そんな無理な笑顔で言われると、何故か心が痛む。

 罪悪感でも感じているのか? 俺……。



さてと、夕食となると買い物に行かないといけないが……多分、腕を掴んでついて来るだろうな。あんまり、そういうところは見られたくない。


 今日は、無難にピザでも頼んでおくか。

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