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第3話 妄想ではありません!

 どう対応する以前に話が意味不明だ。



「もっと、順を追って説明してくれないか?」

「そうですね。最初はルナのことをあまり相手にしてくれませんでした。でも、ルナの猛アタックで、叶えたい願いを変えてまでもルナを選んでくれたのです」



 駄目だこりゃあ。全然分からない。

 妄想でも、もっとストーリ仕立てに考えておけよ。



「えーと、そもそも俺は何で、異世界? 転移? 召喚? されたのか教えてくれよ」

「あなたは神様に召喚されたのです」

「何で?」

「神命です。神様の与えられた役目を努める為なのです」



 これはもしかして、俺が一つ一つ質問をしていかないと、前に進めないやつか?



「役目って何だよ?」

「それはルナにも分からないのです。神命は、神様とあなたしか分からないのです」

「俺、何も知らないけど」

「あなたは役目を果たしました。だから、神命の時に約束した願い事が叶う代わりに、記憶が消されてしまったからなのです」


「それで俺は何も覚えてないと?」

「はい」



 ようやくストーリになって来たぞ。



「俺の願い事って知っているのか?」



 もし、この話が本当だったら、あの時の俺なら『金持ちになりたい』とか言うと思う。



「教えてくれませんでした。でも、願い事をルナの為に変更した時も、『別にいい、気にするな』と言ってました」



 うーん、それはリアルに言いそう。でもその前に、いずれ記憶を失くして異世界とお別れすると分かっていたら、婚約なんて絶対にしないと思うんだよな。その辺りも聞いてみるか。



「そもそも、何で婚約なんかしたんだ? 神命を終えたら元に世界に戻るから、別れが来るって分かっていたんだろう?」


「はい、分かっていました。でも、ルナの気持ちは理屈とか関係ないのです。好きになってしまったら止められないのです。ただ真っ直ぐに突き進むだけなのです」


「お前なぁ……。俺なら、そうなる前にちゃんと断ると思うぞ」

「はい、断られました。それでもルナは負けずに頑張ったのです」



 確かにこいつなら、あり得そうだけど、俺なら絶対断り続けると思う……よな?

 いやいや、これはあいつの妄想だった。何を真剣に考えているんだ俺。



「悪いがその妄想は外れだ。俺はそんな状況で婚約したりしないぞ」

「妄想ではありません!!」

「怒るなよ」

「だって、ルナは嘘をついてません!」



 そこなんだよな。嘘ついているようには見えないから、逆に厄介だ。



「分かったから、落ち着けよ」

「……」

「何だよ? 急に落ち着くなよ」

「でも、ルナも悪いことをしたと思うことがあるのです」

「何で?」



 なんか急に視線を逸らして、落ち込んでしまったぞ。



「あなたは、ルナが後で傷つくと分かっていたから、そうした態度をとっていたのです。でも、ルナはそんなことお構いなく、突っ走ってしまったから、結果的にあなたを傷つけてしまったと思うのです」


「ははは……」


「でも、ルナとあなたは結ばれたのです。ルナは幸せでした。けどその反面、あなたは悩んでいるように見えました。そして、あなたは願い事を捨て、ルナと一緒になれるように神様と交渉したのです」


「うーん……」


「でも、願い事を変えるというのは難しかったみたいです。でも、あなたの粘り強い交渉で何とかなったのですが、厳しい条件があったのです。それからあなたはルナのことをずっと心配してくれました」



 妄想もここまでいくと、ちょっと引くぞ。



「今度はルナが頑張る番なのです。だから、この腕は放しません」

「どういう結論だよ!」

「これ以上は神命に関わってくるので、話せないのです」

「そうかい」



 もう何も言えないわ。



「……」

「……」

「だがら、沈黙したらキスモードになるのやめろ!」

「じゃあ、ルナがキスします」

「『じゃあ』の意味が分からん」



 このまま放っておいたら、本気でキスしてきそうだ。ここは話題を変えよう。

 どうせなら、異世界で俺は最強だったのか、そういう話を聞きたいね。

 あいつの妄想だけど……。 



「それで俺は、向こうではどんな感じだったんだ?」

「ルナにとても優しくしてくれました」

「いや、そういうことじゃなくて。やっぱり最強だったりする?」

「あなたは神命を受けた勇者だったので最強でした。でも、いつでもルナのことを気に掛けてくれたのです」


「そういうのはいいってば」



 異世界で最強だったら、その記憶が無いのは悔しいな。いやいや、あいつの妄想だった。それより、いつまでも妄想に付き合っていられない。

 そろそろ、勉強をしたいところだが、放してくれないだろうなぁ……。

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