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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ハズレスキル持ちを追放し続けた第二王子、異世界から聖女召喚するのでお前はもう要らないと私に婚約破棄を告げ心霊スポットに向かったまま帰って来ません。一体何があったのでしょう?

作者: 騎士ランチ

「すまないがお前を愛する事は出来ない。婚約破棄させて貰う」


 卒業パーティの最中、この王国の第二王子であるフォーアウト様は突如私にこう告げました。いえ、突如ではありませんね。前々から彼は、より役立つ者が見つかればそちらを婚約者にすると常日頃言っていました。つまり、その時が来た。ただそれだけの事なのでしょう。


「この国の為、婚約破棄を受け入れて国外に出て行ってくれるな?冤罪を掛けるのも面倒だからな」

「分かりました。私も己の身がかわいいので、今日の内に出ていきます。しかし、その前に新たな婚約者となる方を教えてくれませんか?」

「うむ、俺は遂に聖女召喚の術を完成させたのだ。そして、召喚に必要な霊地も見つけた。ここから東にある邪教の神殿跡は知っているだろう?」


 東にある神殿跡、そこは心霊スポットとなっており、霊感が無い一般人でも近づくだけで体調を悪くする程の力が働いているそうです。


「確かにあそこの力を上手く使えば召喚の魔力は足りるかも知れませんが…、成功しますかね?そもそも、異世界から召喚した聖女様が我々の言う事を聞く保証はあるのですか?」

「これからこの国を出るお前が心配すべきは、自身の生活の事だろう。今までご苦労だった。俺はこれから直ぐに聖女召喚に取り掛かるから、この話はここまでだ」

「そうですね。それでは殿下、今までありがとうございました」


 一礼してパーティ会場を出ると、フォーアウト様が用意したであろう馬車が入り口に待機しているのを見つけました。


「公爵令嬢様、どうぞこちらの馬車にお乗り下さい。隣国の屋敷までお送りします」

「ええ。よろしくお願いします」

 

 こうして私は生まれ育った王国を後にしました。


■ ■ ■


「それにしても、あれからフォーアウト様はどうなってしまったのでしょう」

「うん、不思議だよねー」

「不思議不思議!」


 婚約破棄を告げられ、フォーアウト様が邪教の神殿跡へ旅立ってから一ヶ月が過ぎました。ですが、神殿跡に到着したらしいという知らせを最後に情報は途絶え、私は追放先の屋敷の中で子供達と一緒に不思議がる事しか出来ませんでした。


「あの第二王子は何でもかんでも直ぐに決めちまうから、とっくに聖女召喚自体はやってると思うんだ。俺達や公爵令嬢様を追放した時だってあっという間だったろ?」

「そうね、あの方は良し悪しはともかく決断が速い人でしたからね」


 ハズレスキルの少年の意見を私は肯定しました。フォーアウト様は他人も自分も全く信じない人で勇猛で脳筋、に見えて実際には非常に臆病な方でした。


 彼の決断の速さはその尋常ではない臆病さから来るものであり、だからこそ彼は過去に前例が無いスキルが発現した少年少女を謀反に繋がると恐れ遠くへ追いやり、自身の父や兄を幽閉して自らが権力を握り、更には異世界人や怨念の力に縋ろうとしている。私からしてみれば、異世界の聖女こそ危険な存在なのですが、過去に聖女がこの大陸に平和をもたらしたという神話がフォーアウト様には安心の保証として映ったのでしょう。


「まあ、どうせ神殿の悪霊に取り憑かれて死んだか、聖女の召喚に失敗して死んだかだよ。へへへ、ざまぁ見ろってんだ!」

「ざまぁ!ざまぁ!」

「貴方達、まだそうと決まった訳じゃありませんよ」


 ピンポーン


 私が子供達を注意していると、玄関のチャイムが鳴りました。


「はーい、今向かいまーす。あら、貴方はたしか」


 玄関に現れたのは、私を馬車でこの屋敷に送った男性でした。


「お久しぶりです公爵令嬢様。ヤラカスでございます」

「あら、ヤラカスさん。本日はどのよつなご要件で?」

「フォーアウト様が行った聖女召喚について。あの後、とんでもない事になってしまいましてな。私以外の同行者は全滅。私もあと一歩で死ぬ所さんでした。それ程の大失敗と混乱故に情報の伝達が遅れ、今こうしてようやく、公爵令嬢様にお伝えする事が出来る様になった次第です」


 何やらとんでもない結果になってしまったみたいです。私はヤラカスさんを中へ案内し、詳しい話を聞くことにしました。


■ ■ ■


【心霊スポットでの聖女召喚・ヤラカス視点】


「遅れて申し訳ございません。ヤラカス只今到着致しました」


 公爵令嬢を屋敷に届けたヤラカスは、そのまま東へと馬車を走らせフォーアウトと取り巻き達に合流した。追いついた時には、既に邪教の神殿の調査は終わり、これから大広間で聖女召喚をする所さんだった。


「ヤラカス、お前は何かあった時の為に馬に水を与えて、いつでも走れる様にしておけ」

「ははーっ!」


 退路の確保の役割を与えられたヤラカスは内心ほくそ笑んだ。ヤラカスの計算では、この儀式は180%失敗する。この神殿跡に巣食う存在により失敗するのが九割、聖女を言いなりにするのに失敗するのが九割、足して十八割という計算だ。


 少し離れた場所から召喚の儀式を見届けていると、案の定様子がおかしい。安全な距離を確保しつつ確認すると、人の形をした黒い霧が王子達を襲っていた。


「帰して…私を元の世界に帰して…」

「な、何だ、何を言っているのだこの怪物は!」


 この神殿で崇められていた存在が何かをフォーアウトは理解していなかった。この黒い霧の正体は先代の聖女だ。彼女は役目を終えた後に元の帰ったとされるが、それは当時の王家が捏造した嘘。実際には死ぬまでこの世界で酷使されていたのだ。


 この神殿は聖女が亡くなった後に建てられ、彼女の霊が悪霊とならない様に祈りを捧げる場所だった。だが、この神殿の存在が王家にとって都合が悪かった為に取り壊され、邪教の神殿として後世に伝わった。フォーアウトはそれを知らず、聖女が呼び出せそうな霊地とだけ理解し足を踏み入れた。その結果がこれである。


「聖女を騙した王家の末裔が、聖女の霊が留まる地で再び聖女召喚をしようとしたら、まあそうなるわなあ」


 兵士達が悪霊と化した聖女に次々とへし折られていくのを見ながらヤラカスは呟いた。彼は歴史の真実を知る数少ない人間だったが、フォーアウトへの忠誠心を持ち合わせていなかったので、その事を黙っていた。


 そして、とうとうフォーアウトも悪霊に捕まり、兵士達同様に背骨をへし折られよっとしていた。


「貴様、何者だ!父か兄の放った暗殺者か?だとしたら、許さんぞ!」

「許さない…?それはこちらの台詞だ!」


 この期に及んでも自分が何を相手にしているか分からないフォーアウトに対し、悪霊の怒りが頂点に達する。ギリギリと背骨の軋む音が響き、フォーアウトが苦悶の表情を浮かべる。


 そして、遂に限界が訪れた。



 ぼきんっ


「ギャアアア!!!!」

「ハアッハアッ、手こずらせやがって!」


 背骨が砕け絶命したのは悪霊の方だった。相手に触れられるという事は実体が有る。そして、悪霊が使用したサバ折りという技は、技をかける側と受ける側の体勢がほぼ同じであり、自らもサバ折りされる危険がある諸刃の技。ならば、後は腕力と体力の勝負。フォーアウトは状況は把握せずとも戦況を把握し、サバ折り合戦を制したのだ。


「もしや、この女はこの神殿にて信仰されていた何かか?まあいい。さて、邪魔者も居なくなったし聖女召喚するか」

「ええっ!?」


 驚くヤラカス。先代聖女の悪霊に襲われ、もう自分と王子しか残ってないのにまだ聖女召喚しようとするその姿に呆れるしか無かった。


「ヤラカス、死体を一箇所に集めてくれ。この地に集まっていた魔力が、何故か急激に薄まっている。よって、この死にたてホヤホヤのこやつらを有効活用するのだ」

「は、ははーっ!」


 ヤラカスは正直帰りたかった。だが、今帰りたいと言ったら絶対殿下怒る。普段は味方に暴力を振るわない殿下だが、今はかなり怪しい。弾みとかノリで次のサバ折り対象がヤラカスになる可能性は十分にあった。


「で、では私は死体を集めて、その後は引き続き撤退準備に戻ります」

「うむ。何かあった時は頼むぞ」


 もう何かあった後だよ!とは口が裂けても言えないヤラカスだった。サバ折りだけは回避したかった。


「ユーテーミヤオーキムコーホリーユージキヤープテツバサスモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモモ」


 死体の山を囲む様に魔法陣を描き、フォーアウトは聖女召喚の呪文を高らかに詠唱する。


「モモモモモモモモモモモモモモモモモモモモ」


 床に描かれた魔法陣が光り、兵士の死体が蒸発したかの様に消えると推定十代の少女が現れる。


「モモモモモモモモモモモモモモモモモモモモ」


 これ絶対言う事聞かねえな。少女の顔を見て、ヤラカスはそう察した。


「…ここは?それに、この身体から湧き上がる力は?」

「モモモモモ、ぷはぁ!よくぞ来た聖女よ。ここは、お前から見た異世界で、俺がここにお前を召喚した。その力こそ聖女の証だ。聖女は王国に從うもの。その力を国の為に振るって欲しいモモモモモモ」

「つまり、貴方は誘拐犯という事ですよね」

「モモ?」

「聖女の力と言うのが悪を打ち倒すものならば、まずは目の前の極悪人を、ね」


 ボボボーボボーボボー!


 蒼き聖なる炎が一瞬でフォーアウトを包み込み、彼の全身を焼く。


「ギャァァァァァァァァ」


 悲鳴を上げて手足を振り回すが聖女が生み出した炎はそんな事では消えはしない。


「熱いあづいぃ!ごめんなさい!ごめんなさい!」


 自力では炎が消せないと分かったフォーアウトは、何度も謝りながら額を叩きつける。


「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめ…」


 額を打ち付け謝罪する事百八回、炎はようやく消えたが、フォーアウトは全身が焼け爛れ見るも無惨な姿となっていた。


 そして、百八回額を打ち付けられた聖女は、防壁魔術を突破され頭蓋骨が砕け眼球が飛び出し首の骨が折れ絶命していた。


 手に入れた力を楽しみながら、嫌な奴を苦しめて殺したいと考えた聖女。とにかく自分が助かりたい一心で、最速で火元を消しに行ったフォーアウト。覚悟の差が勝敗を分けた。


「クソっ、何てことだ。聖女は神からの贈り物、一度召喚条件を満たせば無条件で助けてくれる存在じゃ無かったのか!」


 フォーアウトは自らの手で殺した聖女を床に寝かせて眼球を顔に嵌め込むと、神へと捧げる事にした。


「天の神よ、どうかこの者の魂をお導き下さい」


 魔法陣が光り、聖女の代価として使われた兵士同様に聖女の死体も消えていく。


「あの子、それに最初に殺した女性には悪い事をしてしまったな。今すぐ国へ戻り、聖女召喚の失敗と禁止を伝えなければ。ヤラカス、帰るぞ」

「ははーっ」


 命令を受けヤラカスは馬車を走らせる。まだ、フォーアウトが乗っていないのに。


「ヤラカス、どこへ行こうというのだ」

「やる事も無くなりましたので国に帰るのでございます」

「一人だけでか?俺も乗るから、馬車を戻せ」

「ふへへへへ、聖女召喚などと、その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ!」

「なにィ!?」

「俺の狙いはお前を王都から引き離して、その間に公爵様に国を奪わせる事だったのさ。聖女召喚には失敗するだろうと思っていたが、ここまでボロボロになってくれるとは期待以上の結果だったぜ!ふぁ~ははははww」


 本性を現し、笑いながら馬車と共に去っていくヤラカス。王都から遠く離れた神殿跡に重傷の状態で一人残されたフォーアウトだった。


■ ■ ■


「まてぃ!許さんぞヤラカス!」

「ゑゑっ!?」


 ヤラカスは驚いた。完全に場面転換して公爵令嬢パートに戻る流れだと思っていたが、フォーアウトにはまだ走る余力が残っていた。ズシャリズシャリと激しい足音を立てながら、あっという間に馬車に追いつくと、ヤラカスを掴み上げて強引に馬車の荷台にねじ込んだ。


「そんなに帰りたいなら、今すぐ王都に送ってやるわ!」

「ひ、ヒイィィィ」

「うおおおおおおお!落ちろカトンボ!」


 フォーアウトはヤラカスと水と食料と医薬品と夢と希望と愛と勇気と美少女奴隷が詰まった荷台を持ち上げ、投げやすいサイズまで圧縮すると、王都の方角へ全力でぶん投げた。


 ちゅど〜ん


 荷台は見事に目標地点に着弾し、白い歯を見せサムズアップするヤラカスと公爵と美少女奴隷の顔が空に浮かぶ。そう、ヤラカスはこの時死んだのだ。


■ ■ ■


「そ、そんな。ヤラカスさんは回想の中で死んでるじゃない!じゃあ貴方は誰なんですか!?」

「ぐへへへへ、ざまぁな後日談を聞けると思っていたお前の顔はお笑いだったぜ。変身魔法解除!」


 ヤラカスさんの肉体が急速でシワだらけになり皮膚が剥がれ落ちると、その下から火傷を負ったフォーアウト様の顔が現れました。


「俺だ!」

「で、殿下!さっきの話の流れだと殿下は水も食料も無しで魔力も空っぽの状態で何もない場所に一人残されたはずです!何で餓死してないんですか!」

「馬はうまーい!」


 成歩堂、ジンギスカン作戦ですか。


「それで殿下、聖女やヤラカスさんや父上に続いて今度は私達を殺しに来たのですか?」

「バカを言うな。俺は己可愛さに勢い余っで相手を殺害はしても、計画的に意図して殺人を行った事は一度として無い!これまでの付き合いや、さっきの回想シーンでそれは分かっているだろう」


 ああ、そうでした。この人は王の器からは程遠いビビリでした。


「俺はな、お前との婚約破棄を取り消そうと思いここに来たのだ。聖女が使えん以上、俺を助けてくれるのはお前とこの屋敷に集めたハズレスキルのガキしかおらん」

「私達が貴方に従う理由がありません」

「ハズレスキルに対する差別が無いこの地へお前達を送ったのも、生活費を出してるのも俺だぞ?俺がその気になれば、お前等のお茶会のスイーツを業務用スーパーのプリンにする事だって出来るんだぞ」

「確かに貴方に協力する理由はありましたね。まあ、取り敢えずお茶をどうぞ」


 殿下は私から毒杯を受け取るとそれを勢いよく飲み干し、首を傾げながらおかわりを要求しました。


「はい殿下」

「ああ。んんー?悪い、もう一杯くれないか」

「はい殿下」

「んー、んんんー?ポットごとくれ」

「はい殿下」

「これさ、もしかして毒杯?昔お兄ちゃんに飲まされたやつと同じ味するんだけど」

「はい殿下」

「どぼじでごんなこどずんのぉ!!!」


 殿下は喉を押さえてその場に蹲り、土石流の如く尿と下痢を排出しましたが苦しみ続けています。


「すみません殿下、私にもノブリス・オブリージュがございますので父の仇である貴方を許す事は出来ません」

「そ、それは公爵が先に俺を嵌めたから仕方無かったんだ!解毒剤!解毒剤をくれぇ!」

「殿下って本当にお馬鹿ですよね。毒杯って苦しめずに即死させる為の薬なので解毒剤は存在しないんです。さあ、アンタ達出番だよ!」


 私の合図で屋敷中の青少年が集まり、殿下を遠巻きに包囲します。


「やあっておしまい!」

「「「アーラホーラサッサー!!!」」」


 いつか来るかも知れない日の為に用意していた、フォーアウト絶対殺すの陣。それは、彼から五メートル以上離れた状態で全方位からハズレスキルの力をブッパするというものでした。基本的に物理攻撃と儀式魔術しか使えないアホの子かつ、なるべく殺しを避けようとする殿下なので、このまま距離を保ってハメ殺す。


「殺るなら今しかねぇ!殺るなら今しかねぇ!」

「お前の一挙一動が誰かを苦しめ、お前がどれだけ反省しても死んだ人は戻らないんだ!」

「いい人ごっこしてるアンタは本当に気持ち悪いよ!」


 思いの丈を吐き出しながら子供達はは殿下への攻撃を続けました。メンタルの弱い殿下にはこれは非常に効果的です。殿下は何度も反撃の為に拳を振り上げては下ろすのを繰り返しながらどんどん弱っていきました。


「殿下、これで終わりにしましょう」


 私は殿下が十分弱りきったのを確認して、巨大な槍をアイテムボックスから取り出しました。


「ロンギヌス。貴方を殺すこの槍の名前です」

「や、やめてくれ。そんなものを身体に受けたら…間違い無く死んでしまう。だ、たからっや、やめ」

「死ぬからやるのです。殺したいからやるのです」


 ズブリ


 ロンギヌスの先端が殿下の腹部に刺さり、私が力を込めると徐々に槍が深く埋まっていきます。


「や、やめてとめてやめてとめてやめてとめて」

 

 ズブブ


「やめてとめてやめてとめてめ、や、や、や、もうとめられないっ!」


 バイーン


「えっ?」


 ブボボボボボボボボ


「ええっ?」


 殿下の腹筋に弾かれてロンギヌスが明後日の方向へと飛んで行き、次の瞬間、先程以上の勢いで殿下が尿と便を漏らしました。


「「「ギャアアア!!!」」」


 悪臭が辺りに漂ったと思ったら、子供達がバタバタと倒れていきます。そ、そうか!殿下が死んでしまうと言ったのは私達の方だったのか!体内で濃縮された毒杯の成分が排泄により気化して毒ガスとなったのか!


「だ、だから言ったじゃないかぁ!お前等だけは本当に殺したく無かったのに!お前等ハズレスキルで周りから疎まれてたから俺の気持ちが分かると思ったのに!うわああああー!」


 殿下は涙をボロボロ流し、必死に言い訳をしながら屋敷を出ていきました。そして、どうやら私も限界の様です。子供達よりは耐えられましたが、間もなく父のもとへと向かうでしょう。


 きっと殿下はこの先も何度も考え無しの行動と我が身可愛さで周囲を巻き込んで自滅したり、危険視されて暗殺されたりするのでしょうね。


「第二王子フォーアウト、貴方には心を通じ合える友も恋人もこの先一生現れない。貴方はこの世でなるべく苦しみ抜いてから死んで地獄に堕ちて下さい」

 

 私は最後の負け惜しみを彼の背中に向けて言い放つ。


「何でそんな人が傷つく事言うの!」


 あ、聞こえていたみたいですね。走って戻って来ました。


「俺は、絶対に諦めねえからっ!これまで皆に迷惑掛けてきた分のツケはどんな手を使っても支払って、その道の先で理解者をっ、みづげるがらっ!ぐずっ、うわわわーん!」

「手段は選んで下さい、周りが困るから」

「取り敢えず!ここの死体を使って、もっかいだけ異世界人召喚してみる!今度は三十連ガチャ(クラス転移)でだ!多分、きっと、一人ぐらいは言う事聞いてくれるだろ!」


 やれやれ、この先の世界はどうなってしまうのでしょうね。召喚のコストとして使われ、光に溶け込みながら私は考えるのでした。

 

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― 新着の感想 ―
[気になる点] いつかどこかのゲーム世界にジョブチェンジしてそうな世界と、何かのフィールド(ステージ)になっていそうな王子がいる、と思いました。 ステージボスとかじゃなくて一歩進む度HPが減る毒沼と…
2023/10/31 16:11 退会済み
管理
[良い点] 強くなり過ぎ持て余す勇者を返さなければ膨大な経験値(呪い)で新たな脅威を生み出す存在になりますね。 王家の自業自得感が良いです。 [一言] 外れスキルだと思っていたら、わが身可愛さと生存本…
[良い点] タイトルで読む前に抱いていた印象がいい意味で読んだ後で裏切られました。 王子のキャラが完全に予想外です。 ざまあがないのに読後感が意外にスッキリ! おもしろかったです!
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