最終話:幸せで愛しい日々は、これからも。ノリと勢いで続くはず!
お腹を押さえて、堪え忍ぶ。
いえ、別に、腹痛でも子供が生まれそうとかでもなく。ただ単に胎動が激しいだけなんです。
「ふぉたたたたたぁぁぁ!」
「おかあさま、なにとたたかってるんですか?」
「……自分と、かな? ふぉたぁ!」
「がんばってください! ふぉたたたたた!」
「ふぉたたたたぁ!」
シルヴァンが優しいです。お母様、感動で泣きそうです。ふぉたぁぁぁ!
「………………楽しそうだな……?」
ジョルダン様がシラッとした目で見てきます。泣きますよ? 妊婦の情緒不安定さをなめてはいけませんよ。マジでギャン泣きしますよ?
「すまないっ! ふぉたぁ! なっ? 一緒にするから……なっ?」
「「ふぉたたたたぁ!」」
家族三人で謎の奇声。
冷静になると、ちょっとどころではなくドン引きですね。
使用人たちの苦笑いにも納得です。
「元凶が一番に冷静を取り戻すなよ……」
「えへ」
「ふぉたたたたぁ!」
シルヴァンは気に入ったらしく、スキップしながらふぉたたたと消えて行きました。
どこに行ったんでしょうか?
「もうすぐ教師が来るから部屋に行ったんだろう」
「……真面目ですね。絶対にジョルダン様似です」
「だろうな。ははははは!」
即答されました。
それはそれでモヤッとするんですが!? そして、ジョルダン様は何で爆笑してるんですか!?
「はぁぁぁ。毎日が幸せだな?」
「はいっ!」
そこは間違いなくそうなので、全力で返事をしますが。
シルヴァンは兄になるという自覚からなのか沢山の勉強をしたがり、引っ越しも順調に進んでおり、とてもとても満たされた日々です。
ふと、私たちの不思議な始まり方を思い出しました。
兄のよくわからない狙いから、ジョルダン様とお見合いすることになり、嫌々だったはずなのにお互いに恋をして。
結婚して、子供を授かって。
「本当に、幸せです」
「ん、私もだ」
「ジョルダン様」
「ん?」
ジョルダン様の名前を呼ぶと、いつでもこてんと首を傾げて、見つめ返してくれます。
「愛してます!」
「ん、私もだ」
ゆっくりと柔らかく重なる、甘いキス。
これからも、ずっとこんな幸せな日々が続くのでしょう。
「ソフィ……暫く書類や手紙は、書くなよ?」
「また!? どれだけ信用がないんですかっ!」
これからも私は、ジョルダン様の予想通りにノリと勢いで何かをやらかすのでしょうね……。
でも大丈夫、ジョルダン様はいつも笑って許してくれます!
「たぶん、な」
――――たぶん!?
―― fin ――
【神田義一さまにファンアート頂きました!】
長々とお付き合いありがとうございました!
少しでも楽しんでいただけたでしょうか?
また、何かしらの作品でお逢いできるこを願っています。
笛路。
(あ、新作の短期集中連載はじめました☆)




