76話:デジャヴのデジャヴのデジャヴ。
人は誰しも、同じ過ちを繰り返すことだってあると思うのよ。
そんなとき、寛容に笑って許しあえたらいいわよねぇ。
「えへ」
「…………はぁ」
くるりと棒のように丸められた数枚の書類が、ジョルダン様の手に握られ、執務机にバッシンバッシン叩きつけられています。
執事からジョルダン様が執務室で呼んでいると言われ、スキップで訪れましたら、結構にキレ散らかされていました。
四十代に近付き、最近凄みがましたように思えます。
とにかく格好良いのです。
「ソフィ、話を逸らすな」
「えへ」
何でしょうね、この……デジャヴのデジャヴのデジャヴ感は。
「デジャヴではない。現実だ。しかも今までで一番酷い」
「えへっ」
◆◇◆◇◆
少し前に話していた、お引越し計画が本格的になり出し、ジョルダン様の執務机の上には、色んな書類が置かれるようになりました。
本を借りに時々訪れるのですが、机の上に革張りの立派な書類挟みが開かれて置いてありました。
ジョルダン様が放置するパターンは珍しく、それはつまり軍には関係ないものということ。
ちょっとした好奇心でチラリと書面を覗くと、購入予定の屋敷の詳細が書かれたものでした。
「ふんふんふん……あら、二階建てなのは一緒なのね。部屋数が三〇!? すごっ…………わ、お庭が広い……」
三〇も部屋があるのなら、一つは図書室にしてもいいわよね?
部屋を二つぶち抜いて、子どもたちの遊び部屋を作ってみたり?
いま流行りの運動部屋なんてもの? まぁ、私はしないけど。
それから……子供部屋は………………。
主寝室は……………………。
お庭には…………。
「ふぅ!」
いろいろと妄想しきってスッキリしました。
新しい家の内装を考えるのって、楽しいですわね。
◇◆◇◆◇
「……ほぉん」
「えへっ」
あぁ、本当に、デジャヴのデジャヴのデジャヴです。
ジョルダン様の執務机は立派なので、壊れそうにはありませんが。
次話も明日の朝に投稿します。




