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75話:引越計画。

 



 時が経つのは早いもので、いつの間にやらシルヴァンが五歳になりました。

 元気に庭を走り回っているのですが、どうにも手狭感。

 しかも、お腹には新たな命も……。


 まだ暫くは大丈夫でしょうが、数年で確実に暮らしづらくはなりそうですね、とジョルダン様と話していました。


「ここは立地的に拡張や増築は難しいからなぁ」


 両隣にもお屋敷が立ち並んでいるので、もし広い屋敷がいい場合は引っ越しになるそうです。

 もともとゲストハウス的な持ち家だったらしく、そこをジョルダン様が一人暮らし用に使っていたのだとか。

 

「王城からは少し遠くなるが、もう少し大きめの空き屋敷にするか、王城近くで新たな屋敷を購入するかだな」


 ノーザン家は、王都内外にあと四つ屋敷を持っています。

 パーティ用、ゲスト用、領地の親族が王都に来たとき用など、様々な用途に使われているので、そのどれかを私たちで潰すのもどうかとは思うのですが。

 かと言って、新たに購入など、一体どれだけのお金が動くのか。考えただけで恐ろしいです。


「シルヴァンが生まれたときに、新築計画を進めていれば良かった……」


 ジョルダン様がなぜか別方向で悔しそうです。

 新築にするとなると、あと一年は掛かるので待てないんだとか。


「ご実家に――――」

「嫌だ」


 なぜに断固拒否なのですか。ご両親との仲は普通に良いのに。


「ソフィは、父にすぐ見惚れるから」

「…………」


 何も言えません。

 お義父さまってば、渋イケメンなうえに渋艶ボイスすぎるんです。いつかジョルダン様もこうなるんだと思うと妄想が捗ります。

 見つめるなというのが無理ってもんです。


「それに、二人だけの時間を邪魔されたくはないしな?」


 にこり、深く微笑むジョルダン様は薄らっと夜の帝王が降りかけていました。

 素早く「そうですね!」、「子どもたちのためにも!」、「購入できそうな新たな屋敷を探しましょう!」と、全力で叫ぶ勢いで伝えました。

 休日の朝から帝王降臨はご遠慮したいです。


「おかぁさま、どうされたのですか?」

「なんでもないわよー。ほら、あそこに蝶がいるわよ」


 庭の奥を指差すと、シルヴァンがパァァァと笑いながら駆けていきました。

 ふう……どうにか誤魔化せました。

 

「この子のためにも、少し広めの屋敷に引っ越そうな」

「はい!」


 私のお腹を撫でるジョルダン様の手に、自分の手を重ねて一緒に撫でました。


 ――――ぐごるぎゅぎゅぎゅ!


「……」

「ブッ! っ、やっぱりソフィはソフィだな」


 ジョルダン様はとても楽しそうに大爆笑。

 私は恥ずかしさで顔を覆い、ついでに泣き真似。


「おかぁさま!? どうしましたか!?」

「シルヴァン…………グスッ……ジョルダンさまがいじめるの」

「おとうさまはそんなことしませんよ? おかぁさまがまたドジしたんですね?」


 五歳児にまで把握される私のポンコツぶり。何なんでしょうか?

 取り敢えず、横で酸欠になっているジョルダン様に呪いでも掛けておきましょう。


「毎朝、スクランブルエッグの卵の殻に当たればいいのですわ!」

「ぶははははははは!」

「うぇー」


 ジョルダン様は更に大爆笑。

 シルヴァンは苦虫を噛み潰したような顔。


 どうやら私の呪いは幼い子供にしか効かないようです。


「…………ふぅ。ほら、怒ると胎教に悪いから……ふふっ」

「むーっ」


 未だにクスクスと笑い続けられているのに、ジョルダン様に頭を撫でられてちょっと嬉しかったなんて、絶対にバレてはいけない気がします。




次話も明日の朝に投稿します。

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