74話:イチャイチャ。
ブランケットに押し倒されながら、何度も角度を変えて唇を重ねました。
「――――っ、ジョルダン、さま」
「……………………ん」
いやまさかここで!? そりゃ、人はいませんけど、さすがにこうも開けた場所は……というか外ですし!?
とかとかそんなことを色々と考えていましたら、ジョルダン様の体から力が抜け、ドフリと落ちるようにのしかかって来られました。
ちょっと重たいです。
「ジョルダン様?」
「ん……」
顔が首筋に埋められていて、くぐもった声しか聞こえませんでしたが、要約すると『愛している』でした。
なんだか可愛いなぁとジョルダン様の頭を撫でていると、首にチクリとした痛み。
「これくらいは、許してくれ」
顔を上げたジョルダン様は、少し困ったような寂しそうな表情でした。
つい。両手を彼の頬に伸ばして、もう一度だけと唇を重ねました。
花畑の表面を風が撫でて行くさまを眺めつつ、二人並んでサンドイッチを食べました。
驚くほどに穏やかな時間で、特に何も話さずにただ寄り添っているだけ。ずっとこうしていたいと思えるほどに幸せなのですが、少しだけ静かすぎる気も。
「「シルヴァン」」
二人同時に『シルヴァン』と呟いてしまいました。
「っ、はは! 私はシルヴァンをここに連れてきてやりたいな、と思ったんだが、ソフィは?」
「ふふっ、私もです。シルヴァンにもこの景色を見せてあげたいです」
二人でクスクスと笑いながら、軽いキス。
ジョルダン様が木の幹に背を預けると、腕の中においでと言われました。
ジョルダン様の膝の間に座ると、後ろ抱きですっぽりと包まれました。
お腹に回された腕に手を重ね、ゆっくりと撫でていると、後ろからクスクスと笑う声。
「どうされました?」
「いや、夫婦は考えることも似てくるのかなと思ったら、なんだか面白くてな。私もソフィみたいに変な妄想でもしてみるかな」
「あははは。例えば?」
「んー? そうだなぁ――――」
ジョルダン様の語られる妄想は、シルヴァンが大きくなったらどっちに似るか、何をして働きたいと言うか、どんなお嫁さんを連れてくるか……など、とても可愛らしく健全なものでした。
次話も明日の朝に投稿します。




