72話:ねちっこい性格!?
ジョルダン様たちがスラビア国の視察から戻られて一週間。国からの発表がありました。
国交は再開するが当国が認めた商人のみの入国制限。
スラビア国に渡るためには、国に申請書を提出すること。
スラビア国民と結婚し当国に住む場合、細かな審査がされること。
様々な取り決めがあったようですが、国民が把握しておいたほうが良さそうなのは、この三点のようでした。
騎士団としては、親善試合と合同訓練を行ってきたとのこと。かなりハードに。
脳筋兄が悶え苦しむ程に、ジョルダン様が無双していたのだとか。
「ジョー団長、マジで凄かったぞ」
「えーっ!? ちょっと見たかったですわ」
「別に見て楽しいものではないだろう。普通の訓練だ」
ジョルダン様は涼しい顔でそう言われますが、脳筋兄はブンブンと首を横に振っています。
親善試合はトーナメント戦だったそうですが、兄はジョルダン様に命じられて全員をフルボッコにしたのだとか。
「フルボッコ……」
「負けたら殺す。手加減したら殺す。怪我しても殺す。優勝しないと殺す。って言うんだよ…………いやぁ、本気で燃えたな!」
普通は燃えませんし、実行できませんし、本当に優勝してくるなど思いもしません。
兄は強いらしいとは聞いていたものの、本当に強かったんだと今更実感しました。
そして、合同訓練においては、総指揮をジョルダン様が執り行ったそうです。
訓練で死屍累々を大量生産し、以前私を誘拐した実行犯の男性には『特別プログラム』などという名目で対多数の戦闘訓練や、ジョルダン様自ら真剣を取り打ち込み稽古の相手をしていたそうです。
「いやぁ、久々にあそこまでねちっこい団長を見たぜ」
「なるほど……マクシム、お前は今日も体力が有り余っているようだな?」
真顔のジョルダン様が口角だけをクイッと上げて、ニヤリと笑われました。
それはそれは、新たな扉を開いたレベルの魔王様度合いで。なぜにこうなるとわかっているのに、脳筋兄は煽るのでしょうか。
「本日もお疲れ様でしたぁ!」
脳筋兄がビシッと敬礼して、足早に逃げてしまいました。
魔王も連れて行ってとは思うものの、今お仕事から戻られたばかりなのでそうも言えず…………。
「さ、夕飯にしましょうか」
「ん? ん、そうだな。ハァ……」
ジョルダン様が少し疲れたようなお顔で溜め息を吐かれました。連日お仕事で疲れ果てているように見えますが、ジョルダン様は大丈夫だと言うばかりです。
次のお休みは、ジョルダン様がゆっくりと出来るように、何か考えたいなと思いました。
次話も明日の朝に投稿します。




