68話:老朽化。
ミヌエットとのお出掛けから戻り、両親の元にシルヴァンを受け取りに行きました。
「ほらほら、バァバのところにいらっしゃい!」
「こらこら、ジィジの方に来るんだ!」
「「……」」
ハイハイするシルヴァンがどちらに来るか!? みたいな勝負を両親が開催していました。
地味に結果が気になるので放置して見守りたいと思います。
ちなみに、私とジョルダン様でやった場合、ジョルダン様の圧勝な気がするので開催しないことを心に誓いました。
「ほぉらほら! おいでなさーい」
「シルヴァン、ジィジが高い高いしてやるぞぉ」
「あら、私は美味しい離乳食を作りますわよー」
驚くほどに効果のなさそうな誘い文句でした。
シルヴァン、理解できないと思うのですが……?
「「あっ……」」
両親が私とミヌエットの帰宅に気付いた瞬間、シルヴァンも私に気付いてしまいました。
「「ああっ」」
のたのたとハイハイをしながら、私の元へと来るシルヴァン。
床に座り、寂しそうに右手を伸ばしながらそれを見る両親。
それを指を差して爆笑するミヌエット。
一言で言うと、カオスでした。
実家に泊まって一週間。
自堕落になるのかと思いきや、わりとせかせかと働いています。
あぁ、あそこのカーテンがほつれてる……。
あぁ、あそこの絨毯が……。
あぁ……。
あぁぁぁぁ……。
「ソフィ、何してるの?」
「床のささくれが気になって……」
朝イチから床にしゃがみ込み、ヤスリなどで補修をしてしまうこの貧乏性。どうにかしないと、シルヴァンに遺伝してしまうのでは!?
「遺伝って生まれる前に決まるんじゃない?」
「ふあっ!? 手遅れ!?」
「いいから立ち上がりなさいよ」
ミヌエットにドでかい溜め息を吐かれてしまいました。
執事も雇えてるし、使用人も二人は雇えてるんだからと。
「でも手が回らないでしょ?」
「だからって、伯爵家の奥様がやったらだめよ」
「うん……」
屋敷の老朽化は著しいもので、そろそろ床板の張替えや大型リフォームなども考えているそうです。
お姉様の子供もまだ小さいですし、シルヴァンももちろんまだまだ小さいので、早めの対処が出来るといいのですが。
私は嫁に出ているし、収入もありません。口出しも提案も何も出来ないのが少しだけ悔しくもありました。
次話も明日の朝に投稿します。




