66話:久しぶりに。
ジョルダン様がスラビア国に出発された日、久しぶりに実家へ戻りました。
両親は大歓迎。ミヌエットも大歓迎。
「って、ミヌエット、なんで侍女服着てるの?」
「え? 動きやすいんだもの」
ミヌエットは脳筋兄と婚約して侍女を辞め、この屋敷に同棲することにしたのまでは聞いていたのですが、まさかの侍女服。
よくわからないので、放置することにしました。
「さあさぁ、シルヴァンを抱かせてちょうだい」
「はいどーぞ」
シルヴァンは八ヶ月になり、体重は十キロに近くなっています。ずっと抱き続けていると腕がもげそうです。
お母様にシルヴァンを渡して、肩をぐるぐると回していましたら、ミヌエットにオジサン臭いわよとツッコミを入れられてしまいました。
「ずっと抱っこしてると分かるわよぉ。もうオジサンになるしかないから!」
ちなみにジョルダン様の場合は軽々と持ち上げ、楽しそうにお世話をし、キラキラとした笑顔のままですが。何ならちょっと若返っている気もします。
「それ! マクシム様も言ってたけど、最近のジョルダン様って凄くキラキラしてるらしいのよ。何なのキラキラって」
「えぇ? キラキラはキラキラよー?」
「貴方たち兄妹に聞いた私が馬鹿だったわ」
「酷いっ!」
ミヌエットとのこんなバカなやり取り、久しぶりです。
お母様も喜んでいますし、いい機会をくださったジョルダン様に感謝です。
実家に泊まって三日目、今日はお父様がお休みなのでシルヴァンは両親が見ておくと言われました。
首もすわり、一人座りもでき、何ならハイハイしそうな勢いですし、離乳食も色々と食べられるようになっています。
半日くらいなら任せても大丈夫でしょう。
ということで、ミヌエットと二人カフェにお出かけです!
「わぁ、馬車が買えたのね!」
「そうなのよ。ジョルダン様のおかげよね。感謝を伝えといてね」
「またぁ?」
実家が何かしら普通の貴族の様相に近付けるたびに、お父様からは感謝の手紙が届き、脳筋兄はこれ幸いと屋敷に乱入してきています。
「そういえば、お兄様がジョルダン様ラヴなのはいいの?」
「え? いいんじゃない? 体の関係は流石に諦めたらしいし」
「そもそも、その期待があったことに驚きなのだけど?」
あの脳筋、恐ろしいわね。
まさかのジョルダン様の貞操の危機があっただったなんて!
「ジョルダン様ってほんと心が広いわよね。私ならマクシム様は一発クビだわ」
「私もそう思うわ。なんだかんだでクビにならないのよね」
ちなみに、兄の私室は恐ろしいほどのジョルダン様グッズで溢れています。
ジョルダン様が古くなったからと処分しようとした騎士服から始まり、手袋、額縁に入れられた割としょうもないことが書いてあるメモ、その他もろもろ。
それらを見て平気なミヌエットもまあまあ恐ろしいのだけど。そこは黙っておきましょう。
次話も明日の朝に投稿します。




