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61話:爆誕です!

 



 廊下を右往左往するジョルダン様を見に行きたい気持ちをグッと堪えて、いきみました。それはもう根性のように。

 こんなに痛いことってあるの!? というくらいに痛いのなんの!

 ふぎゃぁー! とか、ぼえー! とか、ぎえぇぇぇ! とか、おんどりゃぁぁぁ! とか、なんか色々と叫んだ気がします。

 お医者様に煩いって怒られた気もします。


「あとちょっとですよ!」

「にゅおぉぉぉぉ!」




 ◆◇◆◇◆




 ソフィが産気付いた。

 側にいたかったのだが、夫は外で待つのが基本なのだという。たしかに出産のことについてはど素人だ。邪魔でしかないだろう。

 あそこは女性たちの戦場だ。


 分かってはいるが、気になる。心配になる。

 ジッと座っていることもできず、執務室で仕事など以ての外。廊下を歩き回ったところでなんの解決にもならないが、何か動いていないと落ち着かない。


 剣を持って素振りをしてみたら、執事に怒られた。

 腕立て伏せをしてみたら、また執事に怒られた。

 腹筋はやる前からするなと言われてしまった。


「ふぎゃぁぁぁぁぁ!」

「産まれたのか!?」

「いえ、ソフィ奥様の叫び声です」

「…………たしかに、ソフィの声だな」


 執事に突っ込まれ、少し冷静になれた。


「出産とは叫ぶほどに――――」

「ぼえぇぇぇふぬぉぉぉんどりゃぁ!」


 話している最中も、ソフィの叫ぶ声が響き渡る。

 本当に大丈夫なんだろうか?


「……おそらく、ソフィ奥様くらいです」

「なに? 難産なのか!?」

「いえ、皆さんそれぞれ唸ったりはされますが……叫び方がこうも独特なのは、ソフィ奥様くらいです」

「ぎえぇぇぇぇ! はよでてこーい!」

「……あ、うん」


 完全に冷静になれた。

 誰のせいなのか、おかげなのか、横に置く。

 私は冷静に座って待つことができる男でいよう。

 うん、座ろう。




 ◇◆◇◆◇




「あと少しですよ!」

「ざっぎがら、あどずごし、あどずごじっでぇぇ」

「頭はほとんど出ていますので!」


 侍女に汗を拭ってもらったり、鼻水をかませてもらったり、飲み物を渡されたりしながら、ふんふんふんふといきみ続けていましたら、本当にあとちょっとのところまで来ているそうです。


 長かった! 難産でした! いえ、超安産ですよ、とか聞こえません!


「はい、いきんで」

「出てこーい!」

「ちゃんといきみなさい!」

「ふぬぅぅぅ!」


 私がいきむと、なぜか手伝いに入っている侍女たちがクスクスと笑います。謎です。


 あとちょっと、と言われ続けて十五分。

 ずっとあった張り詰めたような感覚がフワッと軽くなった瞬間、ふにゃふにゃと仔猫のような鳴き声が聞こえました。


「奥様! おめでとうございます! 立派なご子息ですよ」


 様々な後処理をしてからそっと渡されたのは、ふわふわと透き通るような金色の髪の毛が生えたシワシワの男の子。

 瞳の色はまだよくわからないですが、ちょっとお猿さんっぽい。でも、可愛い。

 とっても愛おしい!


「ふあぁぁ、可愛いぃ。はじめまして、これからよろしくね……あ! ジョルダン様! 呼んで呼んで!」


 侍女たちにまたもやクスクスと笑われながら、ジョルダン様を呼んでもらいました。

 ジョルダン様に早く見せてあげたいです。可愛い男の子ですよ、ジョルダン様と同じ色ですよ、って。


 息子、爆誕です!




次話も明日の朝に投稿します。

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