59話:真夜中に知る寝相。
夜に激しく動く赤ちゃんが、お腹の中で何をしているのか。そんな疑問を漏らしたら、まさかの寝相問題に。
「ほへぇ!? 私、そんなに悪くない………………はず?」
「…………ははは」
ジョルダン様が、死んだような目で乾いた笑いをされています。まって、どんな感情ですか!?
「ソフィはね、グルングルン回って、ぐにょんぐにょんと動いて、起きる頃にスッと綺麗な寝相に戻るんだよ」
死んだような目のまま、口元だけに笑みを乗せて、そう言われました。
◆◇◆◇◆
はじめの頃は、ベッドの中でソフィがもぞもぞと動くのは緊張しているのだと思っていた。
「ウグッ……」
ソフィが寝返りを打つ瞬間、膝が腹にドシュッと入る。局部でなくてホッとする。
寝返りの勢いでブンッと飛んでくる腕は、いつもそっと受け流してはいるが、いつ間違えて反撃してしまうか、ハラハラしている。
ソフィが右にゴロゴロ左にゴロゴロ。起きる直前に定位置に戻り大人しくなる。これは見てて面白い。
だが、これが毎日、何年も続くのであれば、流石に寝不足になりそうな気がしている。
マクシム曰く、本人は気付いていないらしい。
大半は可愛いから放置しておきたいが、問題や事故が起きる前になんとか対策をしておきたいとは思っていた。
「あらまぁ! 小さい子のようねぇ」
「そうなんですか?」
母とソフィの話になったときに、つい漏らしてしまった。そこでまさかの子供と同じという情報。
子供はよく夢を見ているときに動いていたりするらしい。もちろん人によりけりなのだろうが。
「あとは寝具が合っていないとか、室温が合っていないとかもあるらしいわよ」
「なるほど…………そういえば、ソフィは硬いベッドのほうが寝慣れていると言っていたから、硬めにしていたが……」
「あとは――――」
結果から言うと、ある程度の弾力があるタイプがソフィが一番大人しかった。
ソフィには私の寝やすさに合わせてもいいだろうかと聞くと、ぶんぶんと頭を縦に振って謝罪された。「ジョルダン様のお体を一番に優先してください!」そう言われて、この子は本当に良い子だな、と更に惚れ直したのは秘密だが。
そして、母からのアドバイスも試してみた。
腕枕だ。
子供は、それをすると落ち着くのだとか――――。
「――――こんなにも!? こんなにも大人しいのか!」
青天の霹靂だった。
あと、腕の中ですやすやと穏やかに眠るソフィは、得も言われぬ愛おしさがある。
◇◆◇◆◇
――――まさかの!
寝相もですが、ジョルダン様がベッドのスプリングを入れ替えたり、抱きしめて眠られるようになったのは覚えています。
あと、その頃からとても眠りが深くなったのと、疲れがよく取れるなぁとは思っていました。
「どんなソフィも可愛らしいんだがな。私が無意識に反撃してしまうのだけは阻止したくてな」
いやむしろ反撃してください。脳天べチーンと叩いてください。
ジョルダン様が紳士すぎます。
「フッ……脳天にはキスだけだ。さあ、おやすみ」
脳天にだけでなく、目蓋、頰、鼻、唇へとキスを下さいました。
夜中に知った衝撃で眠れないかと思いましたが、ジョルダン様のキスと抱擁が暖かく、結局ぐっすりと眠ってしまいました。
次話も明日の朝に投稿します。




