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52話:ジョルダン様と王太子殿下。

 



 ジョルダン様は王太子殿下のご学友として、早くから王城に出入りされていたそうです。

 そこはお付き合いしていた頃にちょこちょこ聞いていたのですが、当時のジョルダン様はけっこう嫌々だったというのは初耳で……。


「デメトリオ殿下はわがまますぎるー! って家で叫びまくっていたのよねぇ」

「そうそう! デメトリオにも直接言ってたのだけど、あの子って本当に人の話を聞かないのよね……」


 不敬罪レベルな気がするのですが、大丈夫なのでしょうか?

 いえ、王妃殿下も一緒になって王太子殿下をディスってますが。


「とにかく、こうすると決めたら絶対に曲げない子でね。それに振り回されるジョルダンはいつも息を切らして走り回っていたわね」

「屋敷に帰ってくると、倒れるように寝ていたわ。懐かしいわねぇ」


 王妃殿下とお義母様が、柔らかく微笑んで話されていますが、内容はちょっとえげつないです。


 木のてっぺんから景色を見てみたい。だから登るぞ。

 どの高さまでなら飛び降りても平気か。実験するぞ。

 王城の外周を走るとどれくらい掛かるのか。走るぞ。

 会議は重要な事を決めているらしい。覗きに行くぞ。

 王太子は仕事をせねばなるまい。仕事を持って来い。

 このまえ誘拐されかけた。お前、騎士になって来い。


 真面目(?)なジョルダン様は、これらの謎な命令を全てやってのけたそうです。

 そして、騎士の訓練に十二歳で参加し、どハマリしたのだとか。


 ――――え? どハマリ?


 王太子殿下の為はもちろんだったけれど、規則正しく行動する騎士に安心感と安寧を覚えたのだとか。


 ――――安心感と安寧!?


「全体が目標や任務にしっかりと向かって動き、目的を達成する。任務は明確に伝達され、円滑な相談・連絡・報告のシステムも構築されている。殿下の雑な命令しか受けていなかった私には、目から鱗でね」

「ほわっ!? ジョルダン様!」


 急に後ろから声が聞こえ、スルリと腰が抱かれました。

 ナチュラル夜の帝王です。


「酷い言われようだなぁ」

「因果応報ですよ」


 ジョルダン様と王太子殿下の登場によって、懐かしの『あとはお若い方同士で』のパターン。

 王太子殿下、オフェリア殿下、ジョルダン様、私の四人が対面のソファ席に取り残されました。


「貴方の幼い頃の話を聞いていましたのよ」

「ふははは! 沢山の悪口を聞いたわけだ」

「ええ」


 オフェリア殿下がくすくすと楽しそうに笑われています。

 これは、なかなかいい空気です。ジョルダン様に他には何があったのかお話を聞いて、話題提供しましょう。


「他にはどんなご命令があったのですか?」

「んー? あ……あれは酷かったな。陛下の馬に乗りたいから、馬小屋から盗んで来い――――」


 結局、一緒に忍び込んで馬を連れ出すのには成功したものの、すぐにバレて陛下に二人して拳骨されたのだとか。ジョルダン様的には、拳骨は王太子殿下だけで良かったんじゃ? と未だに思っているそうです。


「なんですのそれ! ほんと馬鹿ねぇ!」


 オフェリア殿下が笑いすぎて、目元を拭っていました。

 王太子殿下は、なんだかとても幸せそうで柔らかな笑顔です。


「王太子殿下に忠誠を誓われたのは、いつ頃で、なぜですか?」


 ジョルダン様が質問の意図を理解してくださったらしく、深く穏やかな笑顔を向けてくださいました。めっちゃめちゃ格好良いです。


「ある時、大きな水害があったんだ――――」


 ジョルダン様はまだ騎士見習いから上がったばかりだった。

 雑用として現地に派遣され、そこで国王陛下と共に王太子殿下が会議に参加し、国民が普段の生活にいかに早く戻れるかの案を出し、自ら指揮を取ると申し出た殿下の姿を見たそうです。

 そして、『ああ、この人はしっかりと国民を見ているのだな』と思った事が転機だったそう。


「王太子殿下は、国は国民によって出来ている。自分たちはその国民たちが安全かつ円滑に生活を営むための防御壁だといつも言われています。殿下が国王になられたとき、沢山の壮大な政策を打ち出される予定です。オフェリア殿下、どうかデメトリオ様を支えて下さい」


 ジョルダン様が臣下の礼をオフェリア殿下にされました。私もそれにならい、深く礼をしました。

 ちらりと見えた王太子殿下のお顔は妙に感極まり、オフェリア殿下は真剣に頷いて下さっていました。




次話も明日の朝に投稿します。

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