45話:約束?
王太子殿下と護衛の方々が、我が家を訪問されました。
四阿で構わない、とのことでそのままお話する事になったのですが、なぜか殿下に深々と頭を下げられています。
「散々迷惑をかけておいて更に申し訳ない事になりそうなのだが、約束を覚えているだろうか?」
――――約束?
殿下とお約束したことといえば、妃殿下を迎えられた際はご友人になる、でしたが?
そうお伝えすると、殿下のお顔がパァァァ!っと輝きました。
「それだそれっ!」
「まだまだ先の話でしょう? 休日にいちいちそんなことで家に来ないでください」
ジョルダン様が辛辣です!
イチャイチャタイムを邪魔されて、眉間に大峡谷が出来ています。こんなにも突慳貪な態度を取って大丈夫なのでしょうか?
「休日までは敬わない」
「チッ! お前はそんなやつだよな! ちなみに私には休日はないがな!」
「キレ散らかさないで下さい。さっさと本当の要件を述べて下さい」
「いやだから、いま言っただろうが」
約束の確認をしにこられた、ということなんでしょうか?
約束を違えるつもりはありませんので安心して欲しいです。
「いや、その……二日後くらいに果たして欲しいんだが」
「「はい?」」
ジョルダン様と疑問の声が被ってしまいました。
わお、息ピッタリです!とか軽く現実逃避をしたかったのですが、話している相手は王太子殿下なので頑張って思考を正常値に保ちます。
「視察中のトラブルを陛下に報告しただろう?」
どうやら早馬で報告書のみ国王陛下に届けていたらしいのですが、それが恋仲であるお姫様の国の方にも伝わったらしいのです。
よく意味がわかりませんが、出向というか研修というかで、それぞれの国で高官の交換をしているそうです。
ダジャレでしょうか?
「……あー。なるほど」
ジョルダン様には理解ができたらしいです。
後でこそっと聞きましょう。
「来るんですか」
「明日には着くらしい。婚約式をこっちで執り行うとか息巻いているらしい」
「行動が早すぎませんか? というか、それは何か違う勘違いをされているような」
「だから頭を下げにきた!」
まさかの堂々宣言でした。
間違いなく、先日の誘拐犯の方々と同じ勘違いか、それ以上に酷い勘違いをしているはずなので、どうにかしたいとのことでした。
そして、明後日に歓迎の晩餐会を内々で開くので、そこに夫婦として出席して欲しいとのことでした。
なんだそれだけかぁ! と思ったのですが、ジョルダン様がとても渋い顔のままです。
どうされたのでしょうか?
「個人的に、あのお方とソフィの相性は間違いなく良いとは思いますが、碌なことにならなさそうな予感もするのですが?」
「私もそこは熟考した」
――――ん? ディスられてません?
「「ディスってない」」
あら、殿下もジョルダン様も息ピッタリですね。
「だがソフィ嬢以上の適任が思い付かん。私は彼女が過ごしやすいと思える環境を整えたい」
「ハァ……まあいいですよ。ソフィも乗り気ですし。気持ちもわかりますし」
ジョルダン様に「いいかい?」と聞かれましたので、うんうんと光速で頷いて返事をしました。
もとより、とても楽しみだったのです。
王太子殿下からちらりとお伺いした人物像としては、とても明るく夏の花のような方らしいので。
そうと決まれば、晩餐会用のドレスを確認して準備しなければですね。
次話も明日の朝に投稿します。




