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43話:これからは。

 



「っ――――! クソッ!」


 ジョルダン様の大きな声に、肩がビクリと跳ねてしまいました。

 それに気付いたジョルダン様が悲しそうなお顔になられてしまいました。

 

 へたり込んでいた私の目の前に、ジョルダン様がゆっくりと座りました。


「いっそのこと――――辞めてしまおうか?」


 おっしゃられている意味がわかりません。いったい何を『辞める』のでしょうか。

 

「別に金銭には困ってはいない。騎士団を続けている意味は…………忠義、だけだしな」

「え……騎士団を辞め……?」


 兄から聞いたことがあります。

 ジョルダン様は王太子殿下と幼い頃にした約束を果たすために騎士団に入り、騎士団長になったのだと。

 王太子殿下とは幼い頃からのお付き合いで、その頃から殿下を絶対に裏切らない右腕になると決めていた、と。


「あぁ。たった一人の愛しい存在を護れず、何が騎士だ」

「でも、殿下とのお約束は……」

「……マクシムから聞いたか」


 こくんと頷くと、ジョルダン様がハッと鼻で笑われました。


「何かがあって、何かを選ばざるを得ないとき、その時に私が一番大切だと思うものを選ぶと宣言している。殿下を裏切るかもしれないと」

「っ……」

「引いたか?」


 ジョルダン様が悲しそうなお顔で、聞いてこられます。

 私の中には、王族の方々を裏切るという選択肢は存在していなくて、絶対的な忠誠を誓う相手だと思っていて。

 なので、ジョルダン様のお考えが、少しだけ恐ろしく感じてしまいました。

 それとともに、仄かな喜びも。


「私は、君を手放さない。絶対にだ」

「…………っ、はい」

「だからちゃんと話してほしい。全部受け止めるから」


 ジョルダン様のお言葉で、全身から無駄な力が抜けて行くような気がしました。

 

 何度目でしょうか、ポタポタと涙が溢れます。それをジョルダン様が優しく拭ってくださいます。

 素敵な旦那様。


 ご迷惑をおかけしたくなかった。

 わがままを言って困らせたくなかった。

 でも、全て構わないと言われます。

 

「いっぱい、ワガママ言いますよ?」

「ああ。構わない」

「いっぱいいっぱい、ご迷惑をおかけしますよ?」

「ああ。望むところだ」


 覚悟を決めて、口を開きました。


「こんなのが新婚旅行だなんて、嫌です」

「ん、そうだな。すまなかった」

「でも、お仕事をされているジョルダン様の姿を見れて嬉しかったです」

「うん」

「もっともっと、二人きりで過ごしたいです」

「うん」

「ジョルダン様が仕事に打ち込んでいる姿は…………いつか生まれてくる子供に見せたいと思っているくらいに、素敵です」

「っ…………ん」


 ジョルダン様のお顔が真っ赤になりました。

 たぶん、私の顔はそれ以上に。


「ソフィ」

「はい」

「これからは、もっとちゃんと話し合おう。小さいことだからと我慢せず、どうしたいか、どうしてほしいか」

「はい」

「二人だけの夫婦の形を作っていこう」

「はい――――」


 ゆっくりと重なる唇は、いつもより熱く、いつもより甘く感じました。


「さて、今すぐ子作りしようか」

「っ!?」


 ――――あれ?


 あれれれれ?

 なぜか夜の帝王が出て来ましたが?

 私、完全に墓穴を掘ってましたかね?




次話も明日の朝に投稿します。

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