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42話:怒り。

 



 いつもご迷惑をおかけしてばかりで、お仕事の邪魔をしてばかりで、申し訳なくて。

 離れた方がいいのでは? と思い、そう伝えようとしました。


 獰猛な野獣のような鋭い瞳になってしまったジョルダン様に睨まれて、腰が抜けました。

 本気で怒らせてしまいました。

 『逃げるな』と言われましたが、じゃぁどうすればいいの?

 

「……ジョルダン様にご迷惑しかかけれていません」

「私はそうは思っていない」

「王太子殿下のお手を煩わせているのに?」

「知るか」


 ジョルダン様が舌打ちをしながら吐き捨てました。


「今回の事件に関しては、因果応報だ」


 ――――因果応報?


 そういえば、犯人の事を聞き忘れていました。

 いったい何だったのでしょうか?


「でも…………」

「ソフィは何も悪くないだろうがっ!」


 どうしよう、どうしよう、どうしよう。

 ジョルダン様が本気で怒ってる。


「ご、ごめんなさい」

「っ――――! クソッ!」


 


 ◆◇◆◇◆




 ソフィが誘拐された。

 腕の立つ護衛をつけていたのに、だ。

 かなりの手練で、明らかに騎士のような身のこなしだった、と報告を受けた。

 そして、浅黒い肌の男だったと聞き、ピンときた。

 

「殿下が破談にしたスラビア国の者です」

「は? いや、なぜソフィ嬢が?」


 きっと同行しており、使用人の仕事をしていない令嬢だったから、殿下の婚約者だと勘違いされたのだろう。




 黒幕を探っていると、破談にした相手であるサキーナ王女自身が秘密裏に入国していたことが発覚した。

 どうやら、破談された辱めの報復らしい。


「何なんだよ、あの国は……」


 無理やり組まれた縁談。

 力関係で言えば、こちらが明らかに強い。なのにグイグイくる。

 それはスラビアの後ろ盾が強いから、でもあるのだろうが。


「嫁入りしても、ハレムにいる男娼たちは連れてくる。とか言われてホイホイ了承するか! 誰の子を産むかわからんヤツを王宮に入れるわけが無かろうが! それで恨まれても知らん!」


 あの国は、復讐は自らの手で。とかいう経典があるらしい。

 だから王女が自ら乗り込んできたのだろうと。




 誘拐実行犯の男に接触を図った。

 目立つ見た目なのに、隠そうともせず出歩いていたらしい。それに何らかの意図を感じる。


「……久しぶり、です」

「あぁ。覚悟はしているか?」


 やはり、あの王女の側近である手練の騎士だった。

 

「殿下の、婚約者様は、無事です。一切手を触れてません」


 恭しく礼をされた。

 今すぐ斬り殺したい。あの女もこの男も。

 下げられた男の頭頂部を睨むことしか出来ない自分に苛立つ。

 

「あの娘は、私の妻だ」

「…………!?」


 心底驚いたような顔をされた。

 やはり勘違いで連れ去ったんだな。

 いったい、いつの、何の情報を元に、こんな杜撰な計画をしたんだ。


 ソフィを監禁していた建物に突入し、スラビアの王女の対応は殿下に投げる。

 ギャーギャーと煩い女だった。それだけだ。

 

 地下室でソフィを発見したら…………普通に食事していた。

 しかも、ちょっと待てと言われた。

 後ろから聞こえる殿下の笑い声が余計に怒りを煽る。

 



 あの時から、ずっと燻っている怒り。

 誰に向けていいのか、どうやって消せばいいのか分からない。

 逃げようとするソフィにも怒りが湧いてしまう。


 ――――絶対に、逃さない。


「ご、ごめんなさい」

 

 泣きそうな顔で謝られてしまった。

 こんなはずじゃなかった。

 こんな予定じゃなかった。

 ままならない。

 本当に、ままならない。

 自身の立場が、自制心が、憎い。


 いっそのこと――――。




 ◇◆◇◆◇




ちょいと遅れました。

次話こそは←明日の朝に投稿します。

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