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35話:何かが出る気がする。

 



 晩餐会が終わり部屋に戻り、お風呂も済ませました。

 ベッドに入っても、ジョルダン様はなんとなく元気がありません。

 ……あ、いえ、閨の方ではなく、精神的な方ですよ?

 あ、いえ、そちらも精神的な問題であれがあれであれしますが、あれ……。


「何をブツブツと言っているんだ?」

「ひえっ、にゃんでもごじゃりませぬ!」

「ふはっ! なんだその返事は」


 ジョルダン様がクスクスと笑いだされたので、ちょっとだけホッとしました。

 これでも、お疲れじゃないかなとか、お腹は満たされてるかなとか、眠たくはないかなとか、色々と気にしてはいるんです。けれど、疲れさせている要因のひとつである私がどうこう言えるわけもなく……。


「ジョルダン様、連日お疲れ様でした。今夜はゆっくり休まれてくださいね」

「ん、少し…………抱きしめさせてくれ」

「はい」


 ジョルダン様が右手で私の腰を抱き寄せ、左手を首の下へと差し込まれました。

 がっしりとした長い腕に包み込まれて、安心感のような、愛しさのような物で体中が埋め尽くされたような気分になりました。


 三分もしない内に、頭の上からスウスウと静かな寝息が聞こえてきました。

 本当にお疲れだったようです。

 心身共に疲れすぎていると、笑顔も出ませんものね。


「ジョルダン様、本当にお疲れさまです。おやすみなさい」


 小さな声でそうお伝えすると、更にキュッと抱きしめられた気がしました。

 どうやら今日はこのまま眠ることになるようです。

 ジョルダン様の胸に顔を埋め、目蓋を閉じました。




 ――――ぐ、ぐるじい。


 全身を太いロープで強く締め付けられているような感覚があります。

 身動きが取れなくて、息苦しくて、暑い…………。

 

「うぎょ……」


 更に締め付けが……………………ん?


 バチッと目蓋を開くと、目の前はジョルダン様のはだけた胸。朝からごちそうさまです、って違う!

 締め付けられている原因はジョルダン様でした。

 ちょっと、流石の私もこれ以上の加圧は、何か折れたり何か出たりすると思うのですが。


「じょ、ジョルダンざば……ぐるじぃでず…………」

「ん…………ん?」


 更に締め付けられるものだから、本当に出るかと思いました。


「っ、はっ! すまないっ!」


 真っ青なお顔のジョルダン様が謝られていますが、それよりもはぁはぁと胸で息をしているのが気になります。

 どうしたのかと聞いてみると、まさかの悪夢を見ていたそうです。


「君を失う夢だった。細かくは覚えていないが、君が泣きながら別れを言い出して――――あるわけないのに、な?」

「えー? こんなにジョルダン様が大好きなのに? ありえませんってー!」

「んはは。ん、安心した」


 ベッドの中でもう一度、今度は柔らかく抱きしめられ、唇への甘いキス。

 ちょっと妄想が暴走したり、ノリと勢いで何かしらやらかしたりはしますが、本気で別れを告げることなんて、万が一にもありません!




 このときは、心の底からそう思っていました――――。

 



次話も明日の朝に投稿します。

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