18話:大人の階段と夜の帝王。
式場を後にし、ジョルダン様の住むお屋敷に到着しました。
使用人さんへの挨拶もそこそこに、侍女さんたちから腕を引かれ、お風呂に放り込まれました。
ぐるんぐるんと回転させられ、わっしわっしと洗いまくられ、ぬるんぬるんと香油を塗り込まれ、ツルピカのソフィちゃん出来上がり!
……そんな気分です。
侍女さんたちに夫婦の寝室に案内されました。
「しばらくお待ち下さい」
「はい」
しばらくってどのくらいだろうなぁなどとソファに座ってぼーっと考えていましたら、寝室の続き間のドアからジョルダン様が入ってこられました。
頭をワシワシと拭きながら。
なんだか、素のジョルダン様って感じです。
「ん、早かったな」
「そうなんですかね? 私史上、最長のお風呂でした!」
「はははっ。まぁ、今日は仕方がない」
トスン、とジョルダン様が私の横に座られたのですが、いつもより距離が近いです。
なんだか落ち着かなくて、こっそりお尻を浮かせてちょっとだけ離れようとしました。んがっ! ジョルダン様に腰をしっかりと掴まれて、阻止されてしまいました。
「逃げるな」
「ひょえっ…………」
「ふはっ! そんなに怯えないでくれ」
クスクスと笑うジョルダン様はとてもご機嫌な様子です。
そこまで子供でもないので、これから行われることはわかってはいるものの、どういう流れなのやら謎ですが、これはジョルダン様に丸投げしていい案件な気がします。
「ソフィ、口に出てる」
「ほわっ……すみません」
「ん。可愛いから、そのままでいてほしくもあるな――――」
顎をクイッと持ち上げられ、徐々に近付く唇と唇。
触れる直前に聞こえたのは、ジョルダン様からの愛の誓いと謎の宣言。
「一生大切にする。だが今夜は少しだけ……荒々しくても許してくれ」
ジョルダン様に口付けをされながら、ベッドに運ばれました。
このとき、器用だなぁーとかしょうもないことを考えていた私に、誰か拳骨をしてほしいです。
――――こういうことか!
ワタクシ、大人の階段を登りました。
夜の帝王、凄かったです。
ベッドの中で後ろからぎゅむぎゅむに抱きしめられていますが、ドキドキや幸せよりも疲労困憊で『もう寝かせて!』の気分です。
兄が呼び出しません!とか言っていたのは、コレがあるからですね?
今すぐ呼び出してくれていいんですけど……ジョルダン様が耳元でなんだか艶めかしく囁かれているのですけど?
「ソフィ、明日……というか、今日も休みだ」
「……ですねぇ」
「ん、もっと愛を確かめ合おう」
「…………」
ジョルダン様の腕の中でぐりんと回転し、目を見つめました。
「おやすみなさい!」
「……ん」
ジョルダン様の鼻の頭にチュッと軽くキスをして、全力で寝る宣言をしました!
チュンチュンと鳥の囀りが聞こえます。
身体はダル重ですが、爽やかな朝です。
「おはよう、ソフィ」
「っ! ……おはようございます」
目が潰れそうなほどの笑顔のジョルダン様が目の前にいました。朝から心臓に悪いです。
「ソフィの寝顔、可愛かった」
ねっとりとした唇へのキス。
昨日から解禁されたからなのか、ジョルダン様はずっと唇にキスしてきます。
嬉しくもあるのですが、ちょいちょい息切れして苦しいです。
今日は特別なんだとか。
お昼近くになっても、二人ベッドの中でぴったりとくっ付いて、キスしたりおしゃべりしたりしていました。
ジョルダン様の幸せそうな顔を見ると、お腹減ったとは言えない状況です。
次話も明日の朝に投稿します。
 




