15話:謎の帝王降臨。
ジョルダン様に滾々と怒られています。
ダイエットは止めはしないが、もう少し考えなさいと。
風邪を拗らせて命の危機に陥ることもある。肺の病に倒れることもある。心配なんだと。
「ふぁい」
「無理な食事制限はしていないな?」
「……ふぁい」
「なんで一瞬目をそらした?」
「ふぉっ」
ヤヴァイです。尋問モードになってしまいました。
別に無理ではないとは思いますが、地味に小腹が空くのはどうしょうもないけど、それを言うとジョルダン様が『無理な』に認定してしまいそう……とか考えてしまい、目をそらしてしまいました。
「適度な運動とバランスの取れた食事を心がけなさい」
「はいっ!」
しかし、山登りは適度な運動だと思うのですが。
どうやらジョルダン様的には却下らしい。
「それならば……私と適度な運動でもしようか?」
「ぅひょわっ!?」
あれか!
夜の帝王降臨か!
どエロの伝道師ジョルダン様、爆誕か!?
「をい……なぜそうなる」
ジョルダン様に蟀谷をガッシリと掴まれてしまいました。
「いたいいたいいたい!」
「適度な運動は、ダンスの練習の相手などだ。何を想像している」
「いたいいたいいたい!」
「お馬鹿なのはわかっていたが……ちょっと本当に心配になってきた」
「しゅ、しゅみません」
謝り倒して、どうにかこうにか許してもらえました。
ふいーっ、痛かった。
しかし、ダンスの練習は魅力的ですね。
そも、早々ダンスなどすることもないので、最近は練習していなかったので踊れるのか謎ですが。
「結婚式で踊るが?」
「あ……」
完全に失念していました。
やばいですね。絶対にやばい。踊れる気が一ミリもしません。
「ソフィ…………今からでも遅くはない。おいで」
はぁ、と大きな溜め息を吐いたジョルダン様に手を引かれました。
「ここがいいだろう」
我が家で一番広いのは玄関ホール。
そこでなぜかダンスをすることになりました。
曲は、まさかのジョルダン様の鼻歌。
「んー、んんんー、んーんー、んんーんー。そこでターンだ」
お腹に響くような低い声を音に乗せて揺らめかせる、私の耳元で。
エグ過ぎます。
なんですかこの帝王は。
何の帝王ですか!?
謎の帝王に足腰がクタクタになるまで踊らされました。
わりと体力はある方だと思いましたが、現役の騎士とは比べ物にもならなかったようです。
「はぁ、はぁ……」
「ん、思ったより踊れているじゃないか」
「はひ……ありがとうございます」
ジョルダン様のエスコートが上手過ぎて、自分史上かなり間違えずに踊れました。
「結婚式までは、こうやって練習しよう。いい運動になるだろう?」
「ふぇい」
確かにかなりいい運動ではあります。
ですが、別のことで気疲れするというか、足腰より、腹腰に来るというか……。
でもジョルダン様のどエロい鼻歌は聞きたいというか。
色々と誘惑が多すぎる問題です。
「また明日の夕方に立ち寄る」
両頬を包まれ、おでこにちゅ。
いつもならそれだけで幸せ満開なのですが、明日も来るという恐ろしい宣言にちょっとだけ後退りしそうになったのは内緒です。
次話も明日の朝に投稿します。




