黒猫
僕はお母さんの暖かい毛皮の毛布の中にいた。
それはとても柔らかくてふかふかでいごこちが良かった。
僕は3人兄妹の2番目だった。
お兄ちゃんがひとりと、妹がひとりだ。
いつもと変わらない穏やかな日だった。
そんないつもと変わらない日々が僕は幸せたった。
僕たちはお母さんのおっぱいを飲んでいたんだ。
その時、僕とお兄ちゃんと妹が飼い主さんに抱き上げられた。
そして、小さな箱にいれられた。
自転車でどこかに連れて行かれるようだった。
もう時刻は夕方になっていた。
僕は箱の中で少し寒さを感じてお兄ちゃんと妹にくっついていた。
その時だった。
妹が箱からだされてどこか地面に置かれたようだった。
妹は「にゃ〜!にゃ〜!」と鳴いていた。
僕はとても心配なった。
しばらく自転車は走っていた。
次にお兄ちゃんが箱からだされてどこか地面に置かれたようだった。
お兄ちゃんも「にゃ〜!にゃ〜!」と鳴いていた。
僕はとても心配になった。
僕は箱の中にひとりになった。
またしばらく自転車は走っていた。
すると、今度は僕が箱から出されてどこか地面におかれたようだった。
雨が降ってきた。
僕はお兄ちゃんや妹と同じように「にゃ〜!にゃ〜!」と一生懸命に鳴いた。
たくさん「にゃ〜!にゃ〜!」と鳴いたんだ。
お母さんに会いたかった。
また、あの暖かなふわふわの毛皮の毛布の中に戻りたかった。
お母さんがとても恋しかった。
雨がシトシト降っている。
僕は「にゃ~!にゃ~!」と鳴き続けたんだ。
しばらくすると、人の足音が聞こえてきた。
ひとりの女の人が僕のところにやってきた。
その女の人はただ黙って立って僕をみていた。
僕は「にゃ~!にゃ~!」と鳴きながらその人の足元にヨチヨチ歩いて行った。
僕はその女の人の足にたどり着いた。
そこでも僕は「にゃ~!にゃ~!」と鳴き続けた。
その女の人は傘もさしていなかった。
その女の人は僕を指でつまんで持ち上げた。
そして、手のひらに乗せたんだ。
僕の左目はちょっと曇っていてあまり見えなかった。
その女の人は僕を手のひらに乗せて僕をみていた。
しっぽを触ってきた。
その女の人は僕を大事そうに抱えてどこかに連れて行った。
僕はその女の人の家の中にいた。
部屋の中はとても暖かくて僕はホッとしたんだ。
その女の人のほかにもうひとり人がいた。
「まだ、子猫じゃないか。目も開いたばかりみたいだな」
「そうみたいね。他にも捨てられてる子がいるみたい。あっちからもこっちからも鳴き声が聞こえるもの」
その二人はそんな会話をしていた。
しばらくすると、もう一人のひとはドアを開けてどこかに行ってしまった。
僕は女の人の暖かな手の中にいた。
そして、小さな黒いケースのような箱の中に入れられた。
その中はとても暖かだった。
僕は眠くなって眠ってしまったんだ。
僕は口にお母さんのおっぱいを感じた。
僕はそのおっぱいを思いっきり吸ってミルクを飲んだ。
それはとても甘くて暖かくて優しい味だった。
僕はお腹がいっぱいになった。
そして、また眠ってしまった。
目が覚めると白衣を着たたくさんの人がいるところにいたんだ。
僕は体重を図られたり、聴診器をあてられたり、目薬をさされたりした。
「先生、この子は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫ですよ。左目は見えなくなるかもしれないけど猫ちゃんは片目だけでもちゃんと生活できますからね」
そんな会話が聞こえてきた。
僕は、その女の人に病院に連れられてきたみたいだった。
僕は診察が終わると黒いケースのような箱にいれられた。
そして、車に乗せられて、その女の人の家に帰って行ったんだ。
僕はその女の人の家に帰るとまたミルクを飲ませてもらった。
僕は黒いケースのような箱の中で眠った。
翌朝、僕は女の人と黒いケースのような入れ物に入れられて一緒にどこかに行った。
そこにはたくさんの人たちがいたんだ。
そこは女の人が働く会社のようだった。
僕は黒いケースのような入れ物に入れられて机の下に置かれた。
僕は朝、ミルクを飲んだのでお腹がいっぱいだった。
そしてまた、眠ってしまった。
お腹がすくと目が覚めてその人に「にゃ~!にゃ~!」と鳴いた。
すると女の人は僕を黒いケースから出してミルクを飲ませてくれた。
僕はお腹がいっぱいになるとまた眠ってしまった。
そんな日が何日か続いて行った。
僕は毎日その女の人と一緒に会社に行っていたんだ。
そんなある日。
女の人は僕にこう言ってきた。
「あなたはこれから私の家で暮らすのよ。名前をつけましょうね」
そう言うと優しく僕をなでてくれた。
僕はその女の人に「にゃ~!」と鳴いたんだ。
「あなたはよく鳴くから『にゃあちゃん』て名前にするわ」
女の人はそう言って僕を抱き上げた。
その時、僕は新しいお母さんができたのだと思ったんだ。
とても嬉しかった。
そして僕はただの黒猫から「にゃあちゃん」ていう名前をつけてもらった。
僕の片目はあまり良く見えないけど、新しいお母さんを一生守っていこうとその時思ったんだ。
僕はお母さんのナイトになると決めた。
僕はお母さんと一緒にいるととても幸せだった。
僕は今日もお母さんを守っている。
おわり。