表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
台所の排水詰まりを自力で解決した話  作者: 沖綱真優
第一部 見慣れぬ穴の正体
9/36

一の九 未知なる液体 〜警戒〜

 小さなバケツに半分の汚水を三度捨てたところで、ようやく水が減り始めた。

 勝手口ポーチの階段に設けられた汚水枡のキワまであった水が、少し水位を下げたのだ。


 汚水枡の先は道路の公共下水道に続く配管で、先は詰まっているのだから、これまでの水の出処は台所シンクからの排水管だと推測できる。


 排水はフタを吹き飛ばしつつ()()飛び出したのではなく、一部は排水管内に留まっており、汚水枡からすくい取った分だけ補充されていたのだ。

 水位が下がったということは、排水管内に残っていた排水を処理し終わったことになる。


 どうやら、間違ってはいなかったようだ。


 作業は始まったばかり、何より汚れ仕事用に整えているから休憩もできなかったが、見当違いの作業ではなかったことに、ほぉと安堵の息を吐いた。


 さぁ、ここから。


 再び汚水枡に向かう。


 水を掬って捨て、掬って捨てる。

 バケツの水切りネットに固形物が増え始める。

 茶色いカケラに大きなモノが混じるようになり、水色も茶色く濁り始める。


 続いて。


 手応えが変わった。

 ()()()()

 潮干狩りのような手応えに。


 掬い取る。上げる手は先ほどより重い。


 中には、泥。

 鼻を突く異臭。


 バケツに入れる。

 重みで水切りネットが沈む。

 白の混ざった黄土色の泥が悪臭を放っている。


 ようやく、()()といったところか。


 手探りで()()進む。


 最表面でひたひたの水を掬っていた先ほどとは変わり、お玉を中に入れれば自分の手で塞がれて、狭い汚水枡の中は見えない。

 手の感覚だけで、じゅるりと水分を含んだ汚泥を掬い取り、バケツに移す。


 数センチ掘った辺りで汚水枡の形状が変わった。

 円筒の直径の外側にお玉は吸い込まれ、柄が()()に動く。


 内部で広くなっているのか。


 怪訝を抱きながらも上から下に掻くように動かして手を持ち上げると、お玉を半分埋めるぎっちりとした質感の汚泥。


 バケツに捨て、汚水枡を覗き込む。

 塩ビ管の青っぽい側壁の色が、その部分は灰色掛かっている。泥が詰まっているのか。


 考えるよりも先に手が動く。


 掻き出し、バケツに移す。

 灰色、それから、白と茶色の混じった泥、ややオレンジ色に近い色にも見える汚泥。


 水分が多いためか重く、三度バケツに移すと、水切りネットが外れて落ちる。

 軽く絞って二重のナイロン袋に入れる。

 バケツの中には()()()()()液体が残される。


 そのまま流すのは憚られ、裏庭の洗い場で薄めながら捨てる。

 園芸ホースでバケツに水を入れると茶色が泡立ち、一層奇っ怪な液体へと変貌する。


 ぶくぶくと肥える茶色い液体。


 バケツを傾けると、古い油色をした液体は洗い場の排水口に消えていく。

 しばらく水を流す。


 正体も分かっている、戻って来るはずもない。が、出来るだけ遠くへと。


 見送った。

ブクマ、評価など、応援よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ