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台所の排水詰まりを自力で解決した話  作者: 沖綱真優
第三部 唸りを上げて噛み砕け
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三の十 自由への噴出 〜開放〜

 通水確認とは、排水管洗浄あとのチェックだ。実際に水を流してみて排水状況を確認する。

 家人に頼み、キッチンシンクの洗い桶一杯に水を溜め、ひっくり返してもらう。

 第一汚水枡の横穴をじっと見詰める。


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 噴き出し、叩く。

 横穴から飛び出した水は、噴き出したと形容するのが相応しい勢いで、向かい側にある汚水枡の壁を叩きながら落ちていった。

 少しずつ長々と流れるのでなく、一息に流れていった、この水の流れは。


 理想の流れ。


 排水管の中をゆっくりと流れていく、排水管内部と触れ合う時間が長くなればなるほど、排水の温度は低下して、含まれる油脂が固形化、排水管に付着しやすくなる。

 また、付着した油脂分を押し流すためにシンクから一気に水を流しても、勢いがなければ効果は見込めない。

 だから、床下排水管から勢い良く飛び出したこの水の流れは理想的なのだ。


 これまでは、台所シンクから多量の水を流しても横穴から出る水に勢いはなく、ちょろちょろと縦穴に沿って流れていた。

 違和感があったが、違和感の正体に気付かずに今までいた。

 あるいは、長い排水管を流れる間に減速されるようにできているのだと、知らず内に納得させていたのかもしれない。

 シンクの排水口に吸い込まれていった水が、どのような経路で流れていくか、排水トラップ、蛇腹ホース、それから床下排水管を辿って汚水枡へと流れ着く経路と、傾斜を含む構造を正しく理解していなかったというのも大きい。


 ともかく、水の流れを減速させていたのは油脂の固まりだった。


 排水管洗浄により取り除かれたあのかまぼこ状の怪人たちが、排水の流れを滞らせていたのだ。

 奴らは正常な流れを阻害するだけでなく、流れを緩やかにすることにより仲間を増やしていた。

 特に冬の寒い日には周辺の温度の助けも借りて、緩やかに流れていく排水に含まれる油脂分をねっとりとした半固形へと変えて、自らの内に取り込もうと手を伸ばす。

 公共下水道まで流れて処理されるのを待つよりはと安易にか、望んでか、誘い水ならぬ誘い脂に乗った油脂たちは、やがて大きなかまぼこへと変貌を遂げた。


 だが。

 長らく床下に潜んでいた怪人たちの目論見は、もろくも崩れ去ったといって良いだろう。

 どばどばと汚水枡を叩くほどの水の流れを取り戻した今、怪人たちの呻き声か鳴き声か、勝鬨の声ではあるまいが、眠りを妨げてきた不気味な音も止むに違いない。


 自由を手に入れた。

 排水も、流れの上に暮らす者も、ある種の不自由さから解放されたのだ。

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