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台所の排水詰まりを自力で解決した話  作者: 沖綱真優
第一部 見慣れぬ穴の正体
3/36

一の三 予見可能な禍 〜記憶〜

 吹っ飛んだ『おすい』フタ、溢れ出た臭い水、散らばる黄土色のカケラ。

 手にしたゴミ袋を取り落として狼狽えなどしない。


 ようやく解決の糸口が見えた。


 抱いていた疑義が確かな形となり、目の前に現れた。

 長らく刺さっていた棘を抜く時が来た。

 

 日々の生活の中、逃れようのない音に気づいたのは、四、五年ほど前のことだ。


 排水時の音が変わった。

 いや、音が出るようになった。


 もちろん、一度に大量の排水を流せば音は出る。

 例えば、洗い物の最後、キッチンシンクに洗い桶の水を一気に流すと、


 ごごごごご、んご。


 大量の排水は排水管内部の空気を押し出しながら下方へ流れていくため、排水管内の気圧が下がる。

 気圧が下がると引き込む力が働く。排水管内に、排水トラップの水や空気が引っ張り込まれて音が鳴る。

 一度に大量の水を流した際に音が出るのは普通のことだ。


 しかし、我が家のキッチン排水管は、いつの頃からか音を()()()()ようになった。


 ごごごごご、んご、()()()()()()()()


 特徴的な律動を刻む低い喘ぎが、毎日のように響く。

 溺れそうな息苦しさを伝えてくる。


 詰まり掛けている。

 直感した。

 排水管に汚れが溜まり狭窄していると、ネット検索でも裏付けられた。


 音の快不快の問題だけでは済まなくなるだろう。

 排水管の詰まりなどのトラブルが日常的だからこそ、ポストに広告付きマグネットが放り込まれるのだ。


 どうにか洗浄しなくては。


 まずは、薬局やスーパー、ホームセンターで手に入る、ドロリとしたパイプ掃除用液体薬品パイプフニッシュプロ(仮)を使用した。

 習慣ではないが、時々使用している品だ。


 『つまり解消にはボトルの三分の一』との指示通りの量を、排水管へ直接注ぐ。

 排水トラップに貯められた水で薄められないように、排水トラップを外して。


 ごごごごご、んご、ごっごっごっごっ。


 音は止まない。

 

 翌日、翌々日。一本使い切っても異音は無くならなかった。


 より強力な薬剤を求めて、ネットを検索した。

 発泡系粉末薬剤ピーピースルンF(仮)。

 ネットやホームセンターなどで千五百円ほどで販売している。


 この発泡系粉末薬剤は、『排水口の周辺にボトルの四分の一量をまき、五十度の温水六百ミリリットルで流す』と、強力に発泡して排水管内に密着し、こびり付いた脂などの汚れを溶かしてくれるという。


 換気扇を回し、ゴム手袋を着けた。

 スケールの上にお椀を置く。見た目ザラリとした白色の薬剤は、傾けるとサーと音がして、微細な粉末が舞う。


 分量を排水口付近にまき、温度を調節した湯を注ぐ。

 ゆっくり少しずつ注ぐと、しゅおしゅおと発泡しつつ流れていく。


 翌朝、洗い桶いっぱいの水を二度流す。


 異音が、なくなった。

応援よろしくお願いします。

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