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台所の排水詰まりを自力で解決した話  作者: 沖綱真優
第一部 見慣れぬ穴の正体
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一の二 昏い水の底 〜探索〜

二○二一年もあと数日となったその日、大掃除最中に水の溢れた縦穴を見つけた。


 勝手口ポーチの一段下、コンクリ打ちっぱなしに開いた穴にはキワまで水が溜まる。

 覗いても、底どころか側面すら数センチほどしか見えず、白茶色いカスが浮いている水としか思えない。


 が、顔を穴に近づけると、真冬にも関わらず、鼻先を臭いが刺した。


 いわゆるドブ臭さ。

 嗅いだことのある臭い。


 その臭いは、台所シンクの排水管にパイプ清掃用薬品を流す際、排水トラップを取り外すと漂ってくる臭いだった。


 ドブ臭い水が溢れた穴、黄土色の汚れ、地面に染み込んだ水。

 台所との位置関係、最近のシンクの排水状態。


 周辺の状況から、()()()()()()は明らかだった。


 『おすい』フタを吹っ飛ばし、水が噴き出した。

 水は、台所シンクからの排水だ。


 上に置いてあったゴミ箱まで十数センチも動かした。結構な力だ。


 排水が吹き出したのだから先は詰まっているに違いない。しかし、何がどう詰まっているかは分からない。

 穴の内部は見えないのだ。


 さて、どうする。


 思案しつつ辺りを見渡せば、お誂え向きとばかり、園芸支柱の残骸が転がっていた。


 そろり入れる。


 静かに吸い込まれていった支柱の先端に意識を据える。


 固い、手応え。


 トントンと突っつく。動く気配はない。

 柔らかな土のようなモノが溜まっているのではない。

 二十センチほど入っていった棒で、内部をかき混ぜてみる。刺激しすぎないように優しくぐるりと。


 それで状況が変わるでもなく、軽く突いたり混ぜたりだけで解決するようなモノでは無さそうだ。


 構造が分からない以上、触れているのが部材でないともいえず、傷つけたり壊したりが怖くて力は入れられない。


 状況の悪化だけは避けなくてはならない。

 修理業者を呼べるのかどうかも分からない年末なのだ。

 呼べたとして幾ら取られるか。


 支柱をそっと引き上げる。

 先端には、周囲に散らかっていた黄土色の汚れがこびり付いている。


 鼻を近づけなくても臭う。相当のものだ。

 シンクの排水トラップを外した際に上がってくる臭いを濃縮したような臭い。

 水自体も臭いが、この黄土色の汚れが臭いの大元と考えて良いだろう。


 支柱をころんと脇に転がし、『おすい』フタを戻し、ゴミ箱を戻した。

 そして、何事も無かったかのように裏庭の草を軽く抜き、反対側の犬走りの点検を済ませて、家に入る。

 

 臭いモノにフタをして放置、ではない。

 すでに夕方、始めるには遅すぎる。


 まずは、状況整理と情報収集だ。

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