プロローグ 役立たずの最弱冒険者、追放される。
新作です。
なんの影響を受けているか、分かる人には分かる件(*‘ω‘ *)
「……ったく。弱い奴が二人になったところで、役立たずなんだよ!」
「く……!?」
ボクはパーティーリーダーの言葉に奥歯を噛み締める。
悔しかった。それはきっと、自分だけではない。ボクと共にあり、そして共に戦い続けてきた『彼女』もまた、この言葉に傷ついていただろう。
でも、言い返すこともできない。
何故なら相手のそれは、どこまでいっても正しかったから。
「レアスキルだって聞いたから、俺はお前らを引き取ったんだ。だがな、それがこんなに弱っちいなんて聞いてねぇんだよ! ――聞いてんのか、オド!!」
「…………はい。すみ、ません……」
ボクは唇を噛み、詰まりながらも頭を下げた。
こうやって叱咤されるのも、何度目だろう。そう思っていると――。
「もういい、お前らは追放だ」
「――え?」
ふと、呆れたような声でリーダーはボクに告げた。
思わず面を上げると、そこにはあからさまにこちらを見下す彼の顔。寒気を覚えるようなそれに、固い唾を呑み込む。
すると、そんなボクを見て相手は言った。
「じゃあな、取り柄ナシの最弱冒険者」――と。
◆
ボクことオド・アルディンは、深いため息をつきながら街を歩いていた。
今までどうにか誤魔化しながら続けてきた冒険者稼業も、さっきの一件で途切れてしまったのだ。これでは生まれ育った孤児院への仕送りどころか、自分の生活すら怪しい。
もっとも、いずれ終わりは見えていたのだけど……。
「どうしよう、これから……」
大きな独り言。
冬季に突入して寒さ厳しい中で、それは白く染まって消えていった。
自分への呆れのこもった言葉を見送って、ボクは改めて深くため息をつく。すると、そんなボクに声をかけてくる少女がいた。
「ため息ついても仕方ないよ。前を向かなきゃ!」
「そうは言っても、難しいって。――マナ」
いつの間にか傍らにいた彼女――マナに、ボクはそう返す。
闇に紛れるような黒い髪と瞳。中性的な顔立ち、そして背丈もボクにそっくりだ。唯一の違いといえば、性別だろうか。ただ、それもマナの自己申告なので真偽不明だ。
そんな少女、マナ・アルディンはこちらの意に反して明るく笑ってみせる。
「大丈夫だって! アタシとオドの二人なら、何でもできるよ?」
「うーん……」
数メイル先を進んだマナは、こちらを振り返ってそう口にした。
ついさっき追放されたのだけど、どうやら彼女にとってはたいした出来事ではないらしい。ボクは自分の鏡のようなマナの言葉に、一つ息をついて頷いた。
「なんでも、か……。そうだね、諦めるのはまだ早い」
「そうそう、その調子!」
いつものように笑う少女。
小心者なボクとは対照的に、マナは昔から楽天的だった。
それに救われた回数は、指の本数では足りないほど。今回も弱気になりそうな気持ちを奮い立たせ、マナに訊ねた。
「それで、具体的にどうするの?」
「ん?」
「え?」
「え?」
「…………」
「…………」
――しかし、沈黙する。
どうやら、マナも今後についてはまったく考えていなかったらしい。
こちらの冷めた視線に、苦笑しながら頬を掻く少女。ボクはいつもと変わらない相方に、むしろ安心感を覚えるのだった。
「とにかく、当面の生活費を稼がないとね」
その上で、そう提案する。
そうなのだ。
ボクとマナは、ただいま無職の状態。
まずは、最低限の日銭を稼がなければならない。そう――。
「そうだね! でも、二人なら――」
マナが、笑顔で言うように。
「『一人分の生活費』なんて、すぐに稼げるよ!」
ボクとマナには、それだけで十分なのだから。
面白かった
続きが気になる
更新がんばれ!
もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームを★★★★★にして評価など。
創作の励みとなります。
応援よろしくお願いいたします!!
<(_ _)>