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狙撃

ギチギチと身体からあがる悲鳴が頭の中に響いてくる。


身体の各部が圧縮され、押し込められ、人の形に近い物へと変化していく。それと同時に熱が籠る。


感覚の鈍いこの身体でさえ分かる程の高温。エネルギーの余熱であろうそれでさえ、この熱。かなりのエネルギーが使われていると判断して良いだろう。


項垂れそうになる熱さの中、冷静な思考で判断していく。


私は今、身体の方を改造している。銃を使うためにもゴツい身体では身を隠すのに不向きだからな、必要な事だ。まあ、こうなるとは予想外だったけど。


それにしても……どうやら、上手くいっているようだな。


熱は次第に収まり、次第にシルエットが確かな物になっていく。


ゴツかった腕や脚は平らかつスリムに、削っただけの手は人の手のように精緻に動かせるように、太かった身体は細くもなく太くもない、ちょうど良い太さに変わっていく。


見た目をイメージするのなら、砂色のマネキンがイメージしやすいか。


これが《錬金術》か。身体の感覚は変わってないし、質量や物質その物は変わっていないのだろう。余剰分は身体の内部に圧縮されて保管されている筈だ。


……まあ、《肉体改造》が私の身体では使えなかった事が予想外だったが、代用品があって良かった。あのスキルはあくまで『生物』を対象としたスキルで、『鉱物』である私は対象外だったのは想定外だ。


その代わり、《錬金術》で似たような事が出来たから良しとしよう。


それに、《錬金術》を使ってみて欠点も把握する事ができた。メインに使っていく上で知る必要があった欠点を早々に見つけれて良かった。


それにしても……なんだろうか、生物の気配がする。


辺りを見回し、生物がいないことを確認し岩陰から下を見る。


……なるほど、あれが気配の原因か。


斜面の下部から登ってくる人間を目視しすぐに岩の陰に隠れる。今回の場合は《第六感》と《鷹の目》……視力を自由に操れるスキルが機能しているから先に見つけれた。


だが、相手だって命を賭けている。単体では勝てない魔物を勝つために何かしらの手段を講じてくる筈だ。


岩に凭れ、手を斜面と平行に沿うように空に向ける。肘から先に魔法陣のような図形が現れる。


その瞬間、肘から先が熱と共に熔ける。しかし、粘性の高い液体は地面に落ちず次第に次第にスナイパーライフルの形状へと姿を変えていく。


《錬金術》を発動するとき、まず『融解』という工程を踏まないといけない。その後から『形状』、『物質』、『構築』と続く。《錬金術》がどんな物質でも変化できる所以でもあるが、四つの工程を一つ一秒と換算しても、最低でも四秒かかる。中々に長いロスだ。


地面に手をつき、《錬金術》を発動。地面から弾丸を取り出すと装填。膝をつき、岩陰の横から覗き見て人間の様子を《鷹の目》で見る。


スコープは裸眼でもスコープ並みに良く見えるからいらないし、瞬きをすることも呼吸する事もない。《集中》で集中力を高めているし、よく狙える。


距離は800メートル。人数は一、二、三、四人か。全員の動き方から察するに、私には気づいてない。


口の動きや表情を見るに、警戒も怠っている。この荒涼とした山に住む魔物なんてゴーレム系、特に私のようなロックゴーレムばかりだから警戒しなくても問題ないからだろう。


私からすれば、ふざけてんのかと言ってやりたいところだが……今は良い。どうせ、殺すのだから。


銃身を岩陰から出し、人間の一人に狙いを定める。


……そういえば、どうやって引き金を引こう。引き金を引かないと銃は撃てないじゃん。


その瞬間、


ダァン!!


凄まじい轟音と共に銃弾が発射される。


なっ!?……まさか、銃を撃つときはイメージをするだけで良いのか!?


驚きが頭に響くがすぐに頭を冷し、敵の方を見る。


幸い、何の音なのか把握しきれず、慌てているな。狙いも定まっていない状況で撃ったから当たってすらいない。……だが、一発目を外したんだ、二発目は必ず、当てる。


銃弾を再び作り出し、装填。狙いを定める。

集中……集中……今だ!


引き金を引くイメージをする。


ダァン!!


同時に再び轟音が鳴り響き、弾丸が弩以上の速度で放たれる。


……ヒット。


弾丸は人間の胸に装着されたプレートを易々と撃ち抜き、そのまま地面に倒れる。


頭を狙って撃ったつもりが胸に落ちてしまっている。流石に、風や重力の影響を受けているか。

だが、次はもう……外さない。


《錬金術》で弾丸を三つ、作り出し一つを装填、二つを左手の中指と人差し指の間に挟む。


残り三人で三発、全てが一発勝負。だからこそ、精神は研ぎ澄まされる。


慌てて背中を見せて下る人間、一番奥の脳天に狙いを定め、引き金を引く。

ダァン!!


……ヒット。


弾丸が人間の頭を穿ち、即座に死亡した人間は勢いをそのままに地面を転がり落ちていく。


すぐに二発目を装填、狙いを定めると同時に引き金を引く。


ダァン!!


……ヒット。

弾丸が首の付け根を穿ち、勢いのまま崖に落ちていく。もう生きて日の目を見ることはないだろう。


続けて装填、狙いを定めていると最後の人間が地面に両膝をついて懇願するような動きをとり始める。


……命乞いか?私が一番嫌いなのは……そうやって、他人に自分の命を差し出す行為そのものだ。


生きたいのであれば、逃げるなり何なりとした方が良い。そっちの方が好感を持てる。


だが、今回のように次に繋げ兼ねない連中は許すつもりは一切ないが。


ダァン!!


無感情で引き金を引き、最後の人間の脳天を穿つ。


これでよし……と。


辺りの気配を確認し、安全だと判断し腕のスナイパーライフルを元の腕に戻す。


……どうやら、レベルが上がるとレベルアップまでに必要なものの量が増える、と言ったところか。


それにしても、裸眼で狙いを定めるのは中々難しいな。スコープ要らずの《鷹の目》があるけど、狙いを定めるためにスコープも作ろうかな。


だが、これで遠距離での戦いにはそれなりに戦えるようになる事が証明されただろう。……懸念はあるがな。


私は斜面を歩きながら前世の最後の記憶を思い出す。


私が死んだ場所は学校の教室。最後に見えたのが強烈な閃光だった。恐らく、爆弾でも仕掛けられていたのだろう。私はそれだけの事をしたのだからな。


その時、教室にいたのは私以外の同級生27人と歴史の教師。私の完全なとばっちりで死んだ連中。こいつらは銃というものを知識として知っている。


そして、私は既に人殺しだ。なら、敵対しても可笑しくない。


……まあ、敵対したところで殺すが。こっちはあの事件のせいで何日もの間、人を殺し続けたのだからな、銃を使った人殺しの経験は豊富だ。


私は凭れていた岩から身体を起こし、再び歩き始める。


そう言えば、この身体って体力とかあるのかな。三大欲求とかあった方が良いけど……。まあ、無くてもそこまで残念ではないけど。


==========

体力:鉱物にあると思うのか?

欲求:鉱物にあると(ry

==========


……やっぱりこのステータスは喧嘩売ってるのか?買えるのなら良い値で勝ってやるよ。



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