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発覚と炎線

それじゃあ、まず手始めに。


「ごふっ!?」


辺りを彷徨く奴隷の喉に親指を除く四本の指を突き刺して絶命させる。それと同時下の段に向けて投げ捨てる。


グジャッ!!と肉が潰れる音が聞こえ、下の方から悲鳴が上がる。


今のは簡単な舞台を作り出すための材料。相手に正常な判断をさせなければ、立ち回りをミスらなければ相手を翻弄できる。例え、私がどれだけ鈍足でも。


弾丸を地面から一つ取り出してリボルバーに装填。それと同時に狙いを定め引き金を引く。


ダン!!という発砲音と共に弾丸は放たれ、奴隷のこめかみを貫く。そして、地面に倒れるのを確認するとリボルバーをホルスターに戻す。


さて、この暗闇の中でリボルバーの引き金を引いた。


弾丸を射てばマズルフラッシュが出る。この暗闇の中で引けば、それはそれは目立つだろうよ。


「おいっ!向こうにいるぞ!!」

「さっさと殺してここから出てやる!」


銃から放たれた閃光を見た奴隷や兵士たちが殺到する。それを私は近くの横穴に入る。


この暗闇の中、人間たちはマズルフラッシュの光だけで動いている。だが、そこには統率は一切なく、その場の勢いで動いている。


そして、俺が射ったマズルフラッシュは反対側からも見える。まさか、向こうが俺を普通の人間と同じくらい頭が回るとは思ってもいないだろう。


そう思っていたら、さっき引いた弾丸が罠であること位理解できる筈だ。


「「「ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」


絶叫。


前から来ていた人間たちと後ろから来ていた人間たちが衝突しぶつかり合う。勢いで動きを止めることは出来ず、闇雲に得物を振るえば確実に死んでいく。中には、押し倒されて踏みつけられてく者や段から落ちる者もいる。


それを見ながら私は《形状変化》で左肘から先を刃に変える。


人間の頭なら、上の段で起きている事は何となく予想できてしまうだろう。なら、それの裏を読み動くだけだ。


右手を地面に触れさせた瞬間《錬金術》が発動、私の周りの地面が砂に変わり、下の段の横穴に落ちる。


着地すると同時に辺りの気配を確認し横穴から出る。


暗闇の中、人間は視覚よりも聴覚の方で過敏に反応してしまう。僅かな物音で咄嗟に反応してしまうのと同じだ。


なら、その大きな音が響く上の段に意識が向けられるのは自然だ。


一番近くにいた人間の首に目掛けて刃を水平に振るう。肉を切り骨を断つ感覚と共に首が切り落とされ、首が地面に落ちると同時に別たれた身体も地面に倒れる。


切れ味は問題なし、と。近接なら《錬金術》ではなく《形状変化》で対応した方が良いかもしれない。


「なっ――むぐっ!?」


それを偶然見てしまった人間を足を払い地面に倒すと口に刃を入れ、上半身を切り裂く。


死体から離れると上に向かおうとして通りすぎようとした人間の胴と下半身を分かつ。返す刃で近くの人間を袈裟斬りにする。


さて……向こうも大分収まってきたようだ――これは、少し動きを早めないといけないな。


上から響いていた喧騒が小さくなっているのを確認すると私は意識をより真剣にし、左腕の刃を元に戻して地面に手をつく。


弾丸を一つ取り出すと左手に持ち、リボルバーを引き抜き装填。近くで話し合っている人間に銃口を向ける。


ダン!!という音と共に発射された弾丸は男の右目を撃ち抜き、男はよろけながら下に落ちる。


「なっ――!?こっちだ!こっちにいるぞ!!」


そして、銃声とマズルフラッシュは人間どもにとっては本体の居場所を示す合図となる。


声を発した人間に近づくと同時に首をへし折り絶命させる。人間の死体が地面に崩れると同時に辺りに火の玉を放つ。


繰り返し、マズルフラッシュと銃声による共倒れを狙うというのは悪くない。だが、それでは時間が惜しい。


見える空間が歪んでいる。暗闇である筈の空間が金に近い黄色に変色している。


気がついたのは俺が中段に来た時だ。あのときには既に変化していた。


理由は分からない。だが、仮説はある。


私が魔力を視る事ができるのは《魔力視認》のスキルの力だ。だが、それはカメラのピントのようなもので、通常の状態で見えてる世界をより見えるようにしているようなものだ。


では、そのピントを狂わすほどの力――《魔力視認》の情報を完全に狂わせ正常に見せてしまうほどの魔力が常にこの空間内に詰め込まれていた。そう考えた方が良い。


魔力が通常通り見えるようになったのは、恐らくこのレンズのピントがようやく正常に戻ったのだろう。


他の人間は……まあ、気づいてないだろう。当然だ、魔力を視認したり感じる事ができるはそうそういない。出来るとしたら、半魔と呼ばれる連中だけか?


まあ、そこら辺はどうだって良い。今、ここには半魔はいない。半魔には半魔の独特な色合いの魔力があり、それはこの空間内には存在しない。


なら、もう手加減する必要はない。


「いたぞ!殺せ!」


遅い。


辺りに散らばった十の火の玉が私の周り浮遊する。明るい火の中に佇む私目掛けて人間たちが殺到する。


なるほど、これは効率が良い。


その瞬間、火の玉から一斉にワイヤー程度の太さの炎の線が吹き出し人間たちを貫く。悲鳴が出ないよう、貫かれた人間はコンマと経たずに内部から焼かれ、穴という穴から炎が吹き出していく。


やはり、私は緻密な魔力操作をする事に長けているのか。というよりも……【炎魔法:フレイムバースト】を元に火を拡散させて焼く魔法を発動しようとしたら、別の魔法になってしまっただけだが。


恐らく、私は魔力の緻密な制御に長けた代わりに大規模に魔力を吹き出す事ができないのだろう。無限の湧き水は湧き水でも、滝ではなく蛇口だと言うことか。


名付けるなら【炎魔法:炎線火柱】と名付けるか。


《レベル4からレベル5に上がりました》


お、上がった上がった。だが、今はステータスを見ている時間も惜しい。


私の意思で火を鎮火させると下の段に降り、下に続く通路を発見する。


さて、ここからはかなり危険な綱渡りになるが……あの兎耳の少女に助けると言ってしまったんだ、助けるしかないだ――いや、ちょっとまて。


下の通路を降りようとした直前、私は足を止める。


妙だ。これほどの大規模鉱山なら半魔が何人もいても可笑しくない。なのに、彼女は俺が助けた少女のみを助けてと言った。これはつまり、他の半魔は助けるならと言っているのと同義だ。


少女は嘘を吐いていなかった。だが、それは裏側にある真実を知らずに喋っていただけだとしたら。


……俺の考えが正しければ、人間はとてつもなくおぞましいものに手を出そうとしている。もし、止めなければ確実に凄惨な惨劇に陥る。


……止めなければ、ならない。


私は自分が出せる全力で走り始める。


人間が手を出そうとしているものがどれだけの怪物だと思っているんだ……!!あれは、人間が手を出してはならないものだぞ!!

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