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Beginnig (5) / 異変のはじまり (1)

 みんな疲れた様子でキャンプ場に戻ってくるとそのまま無言でコテージに男女に別れて入る。

別れ際に赤城君に何か言われた気もしたけど、そんなのを聞いている余裕はなかった。

あの緊急速報が流れた後からずっとずっと誰も居ないハズなのに見られている感覚が抜けず、ベットに入った今も不安が拭いきれずにいる。

隣のベットでは藤岡さんや太田さんが疲れ切っていたのか何時の間にか眠りについてた。

私も夜が明ける前に眠りにつくようにしなければ、そのまま眠れずに明日の1日を過ごす羽目になりかねない。

不安を抱き抱えたまま目を閉じ、何も考えないようにと意識をそらすようにしているうちに何時の間にか私は眠りについていた。

眠りにつけた事で、不安も廃墟で遭った事も何時の間にか忘れていた。本当であれば忘れてはならなかったのに。これから起きる事をこの時に解っていれば・・・。


 2日目はみんな前日夜が遅かったのもあって、目が覚めると太陽はすでに高い位置に来ていた。

時間を確認するとちょうどお昼ぐらい。それだけ昨日の夜の事でみんな疲れていたのだろう。こういう私もだ。

ただ、みんな昨日の夜の事はなかったかのようにしていた。下手に思い出させて赤城君の機嫌を損なうのも面倒だし。

それ以外にも何かあったような気もするけど、思い出したくない。思い出そうとするとモヤモヤとするし、大した事じゃないんだと思うし。

そんなこんなはあったけれど、疲れが抜けないからかそんなに大騒ぎもせず、2日目も無事に終わって、明日は帰るのみ。

何度か赤城君からちょっかいは出されたけど、他の人達のお陰で回避できているし、帰れば戸田君に逢えば助けてもらえるし、入院中だけど児玉さんに相談する方法もある。

このまま無事にキャンプも終わり、何時もの日常に戻るだけ。

やっと戸田君に逢えるんだ。彼は私がキャンプに行っていた間、どんな生活を送っていたんだろう?と思いながら眠りについた。

 3日目の朝を迎えた。この日は荷物をまとめ、車に積みこみ、管理人室に挨拶を済ませ帰路に着く。

何もなかったかのように、全ては終わったかのように。


◇◆◇◆◇◆


 あのキャンプから2日後、キャンプに行ったメンバー6人とキャンプに行けなかった戸田君を合わせた7人で集まる事になった。

集まった理由は児玉さんの誕生日が近い事もあって、入院中の児玉さんを励ますためにも何かしようという事になったからだ。

そして集まったのは戸田君が軟禁状態になっている事の多い、羽生教授の研究室。戸田君をえらく気に入った教授というのがこの大学で各地域に伝わる伝承や歴史などを研究しているのがこの研究室の主である。

その主に戸田君が気に入られて軟禁状態で居る事をいい事に仲良しメンバーは邪魔にならない範囲で研究室の一角を借りてはのんびりと雑談している事が多かった。

案の定、今日も今日で夏休みのハズなのに戸田君は大学の教授の研究室にいた。

ちょうど全員が集まる頃、戸田君も一区切りついたようでみんなの元にやってきた。

「戸田君、お疲れ様。そういえばあの日からずっとこんな状態だったの?」

私が心配そうに聞くと戸田君はコクリと頷いた。

「いや、こんな事になるなんて思ってもみなかったよ。4日間は現地だったけど、戻ってきてからはずっと研究室で資料の取りまとめと整理になってたし。」

目の下にできたクマの様子をみると相当大変だったんだというのがわかる。

「無理しないでね。」

戸田君は眠そうな顔をしながらも「わかった」とだけ返してくれて、全員分のお茶の用意をし始めた。

「絵里は戸田には優しいんだな。」

一番最後にきた赤城君が嫉妬に満ちた目をしながら呟いたのだけれど、無視する事にした。

「それじゃみんな集まったし、今日は児玉さんの誕生日の件についてなんだけど―――」

この件の言いだしっぺである太田さんが話をはじめた時に、私のスマートフォンが突然鳴り出した。

「ブオッブオッブオッ―――」

言うまでもない、この音は緊急速報の時に流れる例の音。

私以外の人のスマートフォンもならなければおかしいハズの音がけたたましく鳴り響いたのと同時に私には何かがみえた気がする。

言葉ではうまく言えないけれど、大きな影というか大きな闇。それが私を今にも飲み込もうと波のように迫ってきていた。

「な、なに・・・あれ・・・。」

私は座っていた椅子から転げ落ちるように床に落ちるとそのまま、後退りをするように逃げるしかなかった。

逃げても逃げても無駄というように大きな闇は私を飲み込もうと迫ってくる。気がつくと私の背後には壁が迫っていてもう逃げられない状況にまで追い詰められていた。

もうダメ―――そう思った瞬間、私の視界は完全に暗闇に包まれて、その後の事は覚えていない。


☆★☆★☆★☆★



2. 異変のはじまり



「大丈夫か?!絵里!!」

僕は研究室の壁にもたれかかって意識を失っている彼女に近寄るなり思わず声を上げてしまった。

ここに来た時までは何もなかったかのようにしていた彼女が、あの心臓に悪い警報音が鳴ったかと思えば、顔を真っ青にし何かから怯えるように逃げ、突然意識を失ったからだ。

僕には何があったのかは分からない。そして、突然おかしな行動をしだした絵里の様子をみていた他の5人も何があったのかわからないという顔をしている。

ただ、この状況で僕がすべき事はただ一つだ。意識を失っている絵里をこのままにしておくわけにはいかない。

以前に教授ととんでもない山の中へ調査に行く前に教わった事を思い出しながら、絵里の状態を確認する。

「脈拍は大丈夫、心拍音も聞こえる。瞳孔は開いているけど、意識レベルはなし・・・。身体の外傷は見当たらない―――。」

もし、何かあったら大変なので動かす事に躊躇しそうになったがこのままにしておくわけにも行かず、お姫様抱っこに近い格好にはなってしまったけれど、彼女を抱き抱えあいているソファーに横に寝かせた。

僕が絵里の事で対応している間、何やら騒がしくなっていたけれどそれどころではなかったのでどんな騒ぎになっていたかは知らない。

「戸田、お前何勝手な事してんだ!!」

突然胸倉をつかまれて赤城に怒鳴りつけられた。

「勝手な事って何がさ?」

「絵里の事だよ!なんでてめぇが勝手に介護してるんだ!って聞いているんだ!」

コイツが何故こんな事を言っているか僕にはわからない。

他の人達は突然倒れた絵里の事が心配でソファーの周辺で彼女の様子をみている。この状況で下手に手出しをしてはならないしどうしていいのか分からないのかもしれない。

赤城が声を荒げ興奮した状態でいるのもこの状況を悪化させている要因かも知れない。

研究室内の片隅とはいえ、騒ぎが続いている状況に我慢がならなくなったのか教授がどこからともなくでてくるなり、赤城を名指しで怒る。

「何騒いでいるのかね?!赤城君だったか、悪いけど今すぐ出て行ってくれ。命令が聞けないのなら、君の言動全てを君の担当教授達に話すぞ。」

この大学にもどうやって入れたのかわからない部分の多い赤城だけに、教授からの一言が相当効いたのだろう。僕を睨みつけながら研究室を出ていった。何やら怨みのこもった言葉を言いながらであったが。

「教授、ご迷惑をおかけしてすいません。」

そう謝ると教授は絵里の状態を聞くなり、僕に救急車の手配と内線で施設管理課への連絡の指示をし何処かに電話をはじめた。

「あ、〇〇大の羽生なのですが、内線番号2111、薬師寺先生をお願いできますか?・・・・・・羽生なのだけど、忙しい所ごめん、実はウチの生徒が原因不明で倒れてしまって。悪いんだけど救急車でそっち向かわせるから診てもらえる?・・・わかった恩にきるよ。それと―――」

教授が電話をしている間、救急車の手配と施設管理課への連絡を済ませ、教授に報告をし、僕は絵里のそばに戻る。

 教授も電話を終えると絵里の傍でずっと彼女を心配そうに見つめていた僕のところに近寄ってきてくれた。

「彼女が戸田君の彼女さんかい?」

僕は教授の言葉にそのまま頷く。

「そうか。やはりか。戸田君には私もお世話になっている所があるから少しばかりおせっかいをさせてもらったよ。病院の手配は済んでいるから、救急車が来次第、××医科大学付属病院へ向かうように伝えるように。そうすれば、あとは私の友達が診てくれるから。救急隊員は施設管理課に案内されてくるだろうから、そちらには私から伝えておくよ。」

そう言い残すと教授は奥の資料室に戻っていった。


それから数分後、救急隊員が到着し、絵里は××大学付属病院に搬送された。搬送の際に付き添いが必要との事だったので僕が付き添う事になった。

この事で赤城以外の5人には僕と絵里の関係がバレたのは言うまでもない。

お読みいただきありがとうございます。

この続きは2020/06/26 21:00頃に公開します。

=-=-=-=-=-=-=-=-

投稿作品の宣伝をしないダメダメ筆者のTwitter -> @SekkaAsagiri

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