表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/48

Beginnig (1)

 【ご注意】

全てフィクションであり、登場人物、時代背景、起きた事件など全て実在するものではありません。

作品の構成の都合上、一部の人にとっては不快に感じる描写などがあるかもしれません。

それをご理解の上、お読みいただけますようお願いします。


投稿作品の宣伝をしないダメダメ筆者のTwitter -> @SekkaAsagiri

1. Beginnig


 僕の人生はあの不可解な事によって決まったのだろう。

大学1年生の夏に起きた事件―――あの事件の裏にあったのは歴史に埋もれ隠され続けていた真実。

その事実を知ってしまった事で、この道に進むのを選んだ。それ以外にもあの事件で知り合った人物のお陰とも言えるのだが。

今は、事件の時にお世話になった人がいる会社で、その人と同じ仕事をしている。

そして、今もあの事件の真相に関わる事を取材し、ちょうど記事を書いていたところだ。

ふと昔の事を思い返してみると、あの事件のはじまりは僕の妻が最初の犠牲者でもあり、唯一の生き証人。

当時は彼女だった妻から聞いた話を思い出してしまい、キーボードを叩く手が止まってしまっていた。


そうか、あの事件からもう8年か・・・そう思うと時の経過の速さを痛感する。

あの事件のキッカケになった事も、こうやって忘れ去られるなり歴史に隠されたのかもしれない。


◇◆◇◆◇◆


 大学に入学し、1年の夏休み、私は仲のいいクラスメイト達と首都圏からほど近い県の 山間にあるキャンプ場に来ていた。

メンバーは私と最も仲がよくてこのメンバーの盛り上げ役になる事の多い情報通の太田さん、太田さんの彼氏の大泉君、怖い話が大好きでアウトドア好きの藤岡さん、そんな藤岡さんの事が好きなのに硬派を気取ってバレないようにしているつもりの高山君(けど、実際には藤岡さん以外にはバレバレなので見てて面白いんだけどね)、今回のキャンプの計画を持ち出してきた赤城君の6名。

本当なら、ここに私の中学の頃からずっと同じ進路を進んでいて高校の頃から付き合っている彼氏の戸田君と、赤城君の幼馴染で何かあれば彼の暴走を何時もとめている児玉さんが来る予定だったのだけど、戸田君は入学前の学校説明会の時にある教授に色々と質問してしまったのが原因でひどく気に入られてしまった為にその教授の手伝いをしないとならなくなってしまい来られない。

そして、赤城君の暴走を毎回止めている児玉さんは、児玉さんで運悪くこのキャンプの数日前に交通事故に遭って入院中。

あの二人が居ないのがすごく不安を掻き立てる。

このキャンプの話が出た時もほぼ赤城君の暴走に近い状態だった。


 それは、夏休みに入る数日前の事。

「とーとつだが、夏休みにキャンプ行くぞ!もう場所も予約済みだ!!」

赤城君の突然の宣言に全員が困惑した。

「はぁ?何言ってるの?みんなの予定っていうのがあるでしょ!!」

何時もの調子で赤城君を怒る児玉さん。

「もう予約も済んでるし、金も支払ってあるんだけど。どーしろというんだよ!児玉!」

毎回、赤城君が暴走すると同じパターンになって、最終的には児玉さんか赤城君のどっちかが折れるまでの言い争いが始まる。

ただ、今回は違かった。

「赤城君、キャンプって何処でやるつもりなの??」

アウトドア好きの藤岡さんが二人の口論に割って入った。彼女にとってキャンプという言葉には反応せざるを得なかったのだろう。

「ああ、〇〇県の××村。透明度本州一って言われる沼のそばでだよ。」

「マジで?一度そこでキャンプしてみたかったんだよね!」

案の定だけど藤岡さんが食いついた。首都圏から近いとことはいえ、2000m近い標高の所にあり、バスや電車などの公共機関で行こうと思うと無理に近い場所だからだ。

藤岡さんがこうなると高山君も行くというのは目に見えていた。

そうなるとどうするかを決めるのは、私や太田さんの役目になるだろう。太田さんが行くとなると大泉君も行くだろうし。戸田君も私が行くとなるとメンバー次第では行くというと思う。特に今回は赤城君提案だから余程の事がない限りは来ると思いたい。

それに、私と戸田君はこのメンバーの6人に私達が付き合っている事は隠している。高校生の頃に恋人同士になった関係だから言わないでおいた方がいいかなーって理由で言っていない。

特に赤城君にバレたら何が起こるかわかったモノじゃないから慎重になって気をつけていた。

大学に入ってこの人達と仲良くなって暫くしてからの事だけど、赤城君の子守役とも言える児玉さんから「あの馬鹿、絵里(私)の事を狙っているようだから気をつけてね。絵里は好きな人いるんでしょ?」と釘を刺されている。

何せ赤城君はワガママ放題育ってきたようで周囲の事はお構いなしな所があったからだ。


「・・・で、佐野さんはどうするの?」

考え事をしてた私が悪いのだけど、唐突に太田さんから話を振られた。

「え?」

「え?じゃないよー。話聞いてなかったの?私も大泉君もバイト休みとれそうな時だから行こうかなーって話になってるんだけど。」

「あ、そうなんだ。私は・・・どうしよう。」

悩んだ顔をすると戸田君がちらりと視線で合図してくれた。『絵里に任せるけど、不味いと思ったら断っていい。この流れだと強制的に連行されそうだし。」と。

私が悩み続けていると赤城君が強硬決断をした。

「じゃ、全員参加だな!みんなで行くのに車も買ってもらったから足も心配ないよ!!」

全員が「え?!」という顔をする。

車を買ってもらったって何処まで用意周到なんだと。しかも、よりによってヴェルファイアを新車でって。何処まで赤城君はワガママ放題しているのかと。

誰も口には出さなかったけれど。

私も戸田君も出身が田舎なのもあって、高校時代にこっそりと免許を取得した。戸田君も車は持っているけど、それはバイトして貯め続けたお金で買った中古のルークス ハイウェイスター。車買う為にって高校入学してからずっとバイトし続けて貯め続けていたのを知ってた。


私がなんだかなーって顔で呆れ返っていると赤城君が近づいて、私の肩に手をおいた。

「行く時は是非とも、絵里ちゃんは助手席に乗ってナビをしてくれないかい?」

・・・何考えてるのこの人と呆れて何も言えないでいると児玉さんが私の肩に置かれた赤城君の手を抓り払いのける。

「馬鹿な事言ってないで、その汚い手をどけなさい!何処まで赤城は親の脛をかじり尽くすのだか。」

こんなやりとりがあったのが、キャンプに行く3週間前の事だった。


☆★☆★☆★☆★


 キャンプに行く1週間前の事。

児玉さんが交通事故に遭った。横断歩道を渡ろうとした瞬間、信号無視をした車に跳ね飛ばされた。軽い怪我で済んだのが幸いだったけれど、1ヶ月ほどは入院して安静しなければならなくなってしまった。

そこは普段は事故など起きる事が殆どないまっすぐで見通しのいい道の交差点。歩行者や横断者が多い道なのでどの車も速度を落とし、何が起きても大丈夫なように走るような所で起きた事故。

児玉さんは「私は大丈夫だから。それよりもあの馬鹿には絶対気を付けるようにね」と言ってくれていたし、赤城君以外の人達にも「あの馬鹿が絵里含めた他の人達にちょっかい出すようなら締めあげていいからね!」と言っていた。自分の事よりも人の事を心配できるぐらいだから大丈夫大丈夫と。

ただ、私は嫌な予感しかしなかった。

そして、児玉さんが事故に遭って4日後、キャンプに行く3日前の事。

戸田君が急遽行けなくなってしまった。彼を気に入っている教授の研究に助手として付き合わなくてはならなくて、その日から4日間、国内の某所の調査をする事になってしまった。

初めのうちは他の人に頼めないのかと教授に確認をしていたようだけれど、教授も教授で特別単位というエサを用意していたようで断る事が出来なくなっていた。断ったら今後の単位にも影響があるかもしれないというのもあるのだろうけど。

戸田君には教授からの依頼が断れないとわかった日に物凄く謝られた。

「絵里、ごめん。教授の依頼断るの無理だった。」

「ううん、なんとなく事情はわかるから仕方ないよ。俊君が来れないのは寂しいけど。」

「もし危険な目に遭うような事があったらすぐに行くから。本当にごめん。」

彼が心配してくれる気持ちはとても嬉しいのだけれど、心配はかけたくなかった。

「大丈夫だよー。心配性なんだから。」

私は彼にそう言うと「俊君こそ無理しないでね。」と付け加えて笑顔で返した。

ただ、正直な気持ちを言えば不安はないわけではない。他の人達がいるとはいえ、あの赤城君の事だから何をするかわからない。

私は不安を抱えたまま、キャンプ当日を迎えるしかなかった。

そして、その不安が現実のものになっていく―――。

お読みいただきありがとうございます。

この続きは2020/06/22 21:00頃に公開します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ