エルフ冒険者との再会
「たしか、クリスとレンゲでしたね」
「覚えていてくれたか」
「イクスの知り合いなら、忘れません」
エスパーダの本名を知って、レンゲが反応した。
「イクス様をご存知でしたか」
「あなたは?」
「私は、幼少期のイクス様をお世話しておりました」
冒険者になる前、レンゲはイクスの家庭教師だったらしい。
「主に剣術を、では?」
レンゲが、息を呑んだ。
「よくご存知で」
「彼女は、腕の筋肉のつき方が独特です」
重い装備で固める剣士は、全体的に筋肉質だ。
しかしイクスは細身で、圧縮されつつバネのある肉付きをしていた。パワーより、スピードを優先しているような。
『あれは、居合道だな』
「よくご存知ですね」
リュートの反応に、レンゲは驚きの顔を見せる。
「東洋でしか知られていない特殊な剣術ですのに」
コデロは、自身の身の上を語った。リュートのことも隠さず。
「こういった事情がありまして」
「なるほど。よく分かりました。その地球とやらにも、同様の技があるのですね」
「で、あなたはイクスの武術指南を」
「はい。弓を引き絞るかのような動きが必要なのです」
レンゲは、イクスに剣術と弓を教えていたという。
「待っている時間に耐えきれず、弓は早々と辞めてしまいましたが、剣は波長が合ったようでして」
今や、イクスの腕はレンゲを遥かに超えてしまった。
一方、クリスはあまりイクスを知らないらしい。
「オレは昔、ローグだったんだ。いわゆるコソ泥さ」
悪徳金持ちを相手に、盗人をしていたという。人は殺さず、女は襲わず、子どもや年寄りは泣かさず、を貫いてきた。
『いわゆる義賊か』
「そんなキレイなもんじゃねえって」
だが、とある王族のお城でドジを踏んでしまう。
「兵隊に囲まれたところを、エスパーダに助けられたのさ」
それ以来、エスパーダに忠誠を誓っている。
「今回はレプレスタからのお触れですが、エスパーダからの依頼といっていいでしょう」
レンゲの報告に寄ると、魔力石を採掘する洞窟は近い。だが、魔物が増えすぎて入れないという。
「でよぉ。オレたち戦闘要員で現場に向かおうってわけ」
「危険な任務です。やりますか」
コデロは、うなずく。
「もちろん。参加致します」
「よしきた。ついてきな。道案内してやる」
手続きを済ませ、洞窟へと続くルートに向かう。
「結構、遠いですよね。どうやって行くのです?」
普通に歩けば、丸一日掛かりそうだ。
「こうやって行くのさ」
クリスが、輪っか状にした指を口に当てて、笛を吹く。
どこからともなく現れたのは、二頭のペガサスだ。
「エルフとペガサスに交流があるというのは、本当なのですね」
「もはや、欠かせぬ存在です」
レンゲとクリスが、ペガサスに乗り込む。
「オレたちは、これに乗っていく。あんたは確か、バイクって早い乗り物があるんだよな?」
「はい。これで行きます」
コデロは、ベルトに手をかざす。
何もなかった地面が光って、羽の生えたバイクが現れた。
「ふへー。ペガサスの羽が生えてやがる」
「死んだペガサスの命を感じます。コデロさんを信頼なさっているような印象を受けますね」
コデロが事情を説明すると、二人は納得する。
「ワイバーンとの戦いで死んだペガサスが、力をくれました」
「厄介なヤロウだぜ。ワイバーンのヤツめ」
コウガがすべて倒したので、空の危険はないだろうとのことだ。
「ですが、この翼さえあれば、敵の本拠地へもひとっ飛びでは?」
「そうでもないんだ。できたら、とっくに乗り込んでる」
どうも、事情はそんな都合よくはいかないらしい。
このペガサスさえあれば、島の向こうにあるという敵のアジトまで飛べると思っていたが。
「ペガサスにも限界がある。途中で湖の水を飲まさねえと」
「ガス欠になると?」
「そうなんだ。あんたの翼だって、例外じゃないかもな」
コウガの魔力だけでは、向こう岸にはたどり着けない。
さらなる作戦が必要だという。
「ワイバーンを殺ったから、向こうだって手はないはずだ。何か仕掛てくるかもな」
「とにかく、今は鉱山へ急ぎましょう」
急かされたコデロは、バイクで鉱山まで飛ばす。
『イクスはどうして、ペガサスに乗らないんだ?』
そういえば、イクスが駆けつけたときには、普通の馬に乗っていた。
「ペガサスを使えば、自分がエスパーダとバラすようなものだ」
「なので、イクス嬢は市販の馬を利用しています。足がつかないように」
彼女専用の足さえあれば、いいということか。
『もう一台、バイクがあればいいのか』
「また、あなたは。ですが、あの子なら考えかねませんね」
呆れつつも、イクスの行動パターンを読んで、コデロは納得する。
「見えてきたぞ。あれが魔王石の鉱山だ」
虹色に光る鉱山が、見えてきた。近くにペガサスとバイクを下ろす。
「様子を見てくるから、あんたらは引き上げてくれ」
「一日待って口笛がならなかったら、自力でギルドへ」
クリスとレンゲ両名は、ペガサスにそう告げた。
「言葉が通じるのは、いいですね」
「エルフの言葉だけだがな」
頭で翻訳できるように伝えれば、人間でもペガサスの言葉を把握できるらしいが。




