レプレスタの成り立ち
コデロは、レプレスタの城下町へと向かう。
『レプレスタとは、どういった国なのだ?』
エルフの国であるとはわかる。しかし、成り立ちまで走らなかった。
「レプレスタの初代王は昔、エルフの里を護衛する騎士団長だったのです」
騎士団長レプレスタは仕事柄、人間の街に行く機会が多かった。
世界に魔物が増え、人間と交流する必要性を、以前から訴えていたのである。
閉鎖的な里は、レプレスタの主張を退けた。
レプレスタは里から独立し、人里の近隣に国を興し、初代王となる。
ただ、里とまったく交流を断ったわけではない。
里と多種族との橋渡し役を、たびたび買って出ている。
「今の王で、十三代目くらいでしょうか?」
人間の王国と交流して、子をなして、レプレスタは勢力を拡大していった。
「ですが、里はあまりいい顔をしていないようで」
『なぜだ?』
「同族から、裏切り者が生まれたからです」
レプレスタとは違うエルフ族の一人が、魔に取り込まれたのだ。
「アロガント一族と言って、レプレスタとは違った勢力の人間と密通していたらしいのです」
一族は里から追放され、離島へ流刑にされたらしい。
『それが、あの島だと?』
「はい。また、アロガント一族と激しく対立していたのが、レプレスタだったのです」
だが、アロガントは本格的に闇と取引をして、さらなる力を得たという。
『怪人である可能性が高い、と』
「そう言えます」
こういった事態を懸念して、里はエルフがうかつに多種族と仲良くなることを避けていたのだ。
「レプレスタは、その闇的な存在を水際で防ぐ役割も担っているのです」
『聞けば聞くほど、面倒な種族だな』
イスリーブに比べたら庶民的で、フーゴの街よりは多少交易が盛んという程度か。道も整備されている。それ以外は、特に目新しい店はない。
となれば、ミレーヌの様子でも見に行こう。
ミレーヌが購入した店舗へと足を運ぶ。
「コデロ! おかえりなさい!」
ハキハキした声で、エプロン姿のミレーヌが出迎えてくれた。
「よっす」
カウンターに座ってあんみつを食べているのは、アテムだ。
「ラキアス様と同行は、していないのですね」
「ミレーヌを全力で守れ、とラキアス様の言いつけでさ」
あんみつの皿は、もう一ダースを超えている。
「退屈ですか?」
「いんや。久々の休暇を満喫しているよ。で、あんたはこれから依頼なんだよな?」
レプレスタにてイクスの食客として招かれたと、ミレーヌに報告する。
「それじゃあ、寝泊まりは向こうで?」
「そうなりますね」
「あーあ。売れ残りを誰が処理するってのよぉ」
両手で頬杖をつき、ミレーヌはカレー鍋を見つめた。鍋には結構な量のカレーが残っている。
さっそく、食べさせてもらった。
「やっぱり、コデロはここでカレーを食べている姿がよく似合うわ」
鍋を半分ほど消費した辺りで、ミレーヌに尋ねる。
「繁盛していないのですか?」
「うん、あんまりなのよ」
カレーライスが思いのほか、流行ってないらしい。
「やっぱり、エルフさんたちにはウケない味なのかしら」
『餅は餅屋といってな。エルフのことは同じエルフに聞いてみたらどうだ?」
リュートがアドバイスをしてみると、ミレーヌは合点がいったような顔になる。
「ああ、ラキアスさんね」
『魔道具開発局のレプレスタ支部を作っている、といっていたな』
お茶会の後に、様子を見に行くと出て行った。
『場所はわかるか?』
「それなら、ウチの向かいに建っている空き家だわ」
店を留守にできないミレーヌの代わりに、様子を見に行く。
「あら、お茶会ぶりですわね、コデロ様」
朗らかな笑顔で、ラキアスが出迎えてくれた。
研究所には、ラキアスの他に、イオもいる。
魔道具を製造する大きい窯の前であぐらをかきながら、イオは顔をしかめていた。
「ラキアス様、ミレーヌがカレーについてご相談があるそうです」
「そうですか。わたくしがここにいても、お邪魔ですわね」
言った後、ラキアスは後を私兵に任せて、ミレーヌの元へ。
『調子はどうだ、イオ?』
「どうしたもこうしたもないよ。物資不足だ」
苛立ちを隠そうともせず、イオが頭をくしゃくしゃと掻く。
「レプレスタの魔除け装置を優先して作れと言われて、急ピッチで作っているのだよ。ところが肝心の魔力石が枯渇しているときたもんだ。レプレスタは魔力石の宝庫として重宝されたいたのではないのかね?」
物資のある鉱山は、イスリーブが奪還してくれるという。
『至れり尽くせりだな』
「どこだが! あんな鈍くさい奴らを待っていたら、ほうれい線ができてしまうよ!」
王子の帰還も気にしなければならない。ことは急を要するのだ。
『オレも向かう。待っていてくれ』
「吾輩は、キミしかアテにしていないよ」
怪人を相手にするなら、どうしてもコウガの力が必要になってくる。
冒険者ギルドで、目ぼしいミッションなどを探してみた。
が、「魔除けの修繕」程度の依頼しかない。
大事ではあるが、レプレスタの兵と同行というのが気になる。
あまり乗り気がしない。
「よお、また会ったな」
ドランスフォードで知り合った二人のエルフが、酒を酌み交わしていた。これから任務に向かうのだろう。




