翼竜怪人、【ワイバーン】
コデロはバイクで、レプレスタへの道を進む。
ミレーヌ含め、他のメンバーは、自動運転の装甲車両で移動していた。ダニーか魔力を供給している。
『キミのお兄さんのことを、聞いていなかった。どんな人なんだ?』
「ベルト様のお言葉を借りるとするならば、いわゆるオタクです」
コーデリアの兄ノーマンは、魔術師になりたがっていた。二〇を超えても結婚せず、魔法学ばかり学んでいたという。
「何が、彼をそうさせたんだ?」
「彼には、師事している教授がいました。コートニー・スケルディングという女性魔道士に弟子入りして、魔法学にのめり込んでいきました」
しかし、様子を見た限りでは、それだけではなかったらしい。
『なるほど。初恋の人だったんだな?』
「そうなんでしょうね。けれど、コートニー教授は相手にしていないようでした」
魔法の先生としては優秀だったようだ。しかし、プライベートは全てにおいて謎に包まれていた。
「ですが、あるとき師匠は行方不明になって」
それから、さらにノーマンは魔法の道を進む。
「潜在魔力の総量においては、おそらくベルト様に匹敵するでしょう」
『オレと、ほぼ互角だというのか?』
「はい。戦闘経験の差から、まだベルト様の方に分があると思いますが。魔法の知識も、あなたより兄のほうが上でしょう」
アドバンテージがあるとすれば、実戦経験の有無しかない。
「付け入るスキがあるとすれば、イクスの方でしょう」
『どうしてだ』
聞いた限り、かなりの危険人物と思われるが。
「好戦的すぎる性格が災いして、私相手には勝てていませんでした」
『なるほど』
「とはいえ、手強いことには代わりありません。まして、彼女はデヴィランを倒す力を手に入れました。その力が、正しく使われればいいのですが、彼女は自分の都合を優先するきらいがあるので」
城壁の前に、コデロはバイクを止める。
「あれが、エルフの民が住まう、オンディール半島です」
レプレスタのあるオンディール半島は、森に囲まれた大陸だ。ドランスフォードの北東、イスリーブの南東に位置する。
だが、向かいに浮かぶ島に、魔物が棲み着いた。街へ降りては、度々悪さをしてくるとか。
かつては、冒険者たちも魔物退治に息巻いていた。しかし、あまりの強さに尻込みしているという。
『おそらく怪人の仕業だろう』
「少しずつ国を疲弊させ、一気に叩く作戦でしょう」
急激に攻め込まないのは、エスパーダの存在があるからに違いない。しかも、彼女はコウガに匹敵する戦乙女の力を手に入れた。厄介さは増している。
「言ってる側から、おでましたぜ!」
ダニーが銃を抜く。
「あれは?」
「ゲアアアア!」
手のない龍が、大空を飛び回っていた。怪人が追いかけ回しているのは、白いペガサスである。
「イスリーブの王子を迎えに来たのが、運の尽き! おとなしくこの【ワイバーン】のエサとなるがよい!」
ワイバーンと名乗った翼竜怪人が、口から火炎の球を吐き出す。
『あのペガサスは、怪人ではないな』
「森の住民のようですね」
ペガサスは回避するが、翼に炎がかすり、燃え移ってしまう。
車両の窓から、ラキアスが身を乗り出す。
「おそらくペガサスは、イスリーブ王子の案内を勤めていたのですわ。しかし、魔物に襲われているようですわ!」
「ならば、急ぎませんと」
ペガサスを援護しようと、コデロは変身ポーズを取った。
「変、身!」
右手を天へとかざし、コウガへと変身する。
「フィーンドバスター」
コウガはベルトに手をかざし、銃を取った。
しかし、敵の位置が高すぎる。
「これでは、狙えません!」
「銃弾も届かねえ!」
そうこうしている間にも、ペガサスはワイバーンの吐く火球を浴びて、今にも死にそうだ。
「見ていられませんわ、コウガ!」
崖の上から、凛とした声がした。黒い馬に乗ったエスパーダが、崖からこちらを見下ろしている。
「見てらっしゃい、とう!」
なんと、高い崖からエスパーダが急降下した。ワイバーンの背中を狙って。
「無茶です!」
「そんなのは承知の上!」
エスパーダは無謀にも、ワイバーンの背後に取り付こうというのだ。
「何を、小癪な戦乙女!」
エスパーダの攻撃に気づいた翼竜怪人が、首をエスパーダに向ける。必殺の火炎を吐き出さんとした。
そこへ、ペガサスがタックルする。
「ごへえ!」
火炎を吐く直前で、ペガサスは怪人の首に重い一発を食らわせた。骨が折れる音がする。
「おのれ、こざかしい!」
翼竜怪人が、ペガサスの脊髄に噛み付く。
「その汚いお口を開けなさい! お覚悟を!」
直後、エスパーダの一撃が、怪人の背後に突き刺さった。
「えがああ!」
怪人が、ペガサスの首から口を放す。
「ダメージが浅いですわ! ならば」
エスパーダは剣を引き抜き、翼をもぐ。
「今ですわコウガ、トドメを!」
「分かっています。レイジングキック!」
真上から落ちてくる翼竜怪人に、コウガは前蹴りを食らわせる。
「ごおおお! おのれコウガぁ!」
翼竜怪人がきりもみの体勢で墜落、爆発した。




