圧倒的 魔王ヴァージル!
最奥部に、デヴィラン最高幹部はいた。
あのとき遭遇した黒騎士だ。
黒騎士は、エース・スリーの面々と戦っている。冒険者最強と呼ばれる彼らは、軽くあしらわれていた。
「よくぞ参った。貴様のせいで、この砦はおしまいだ。さすがコウガよ」
黒騎士が、ヘルメットを脱ぐ。金髪の男性が、苦々しい顔でこちらを睨む。
「だが、こちらもパワーアップが完了した。さきほど貴様が倒した北方の王女による貢ぎ物で、この肉体は新たなる力を得た。その褒美に新しい肉体をくれてやった。しかし、活かせずに死んだか」
マントで全身を覆い、黒騎士は一瞬で早変わりした。自分が見たオオカミ怪人より、いかほどかたくましくなっている。
「やはり、オオカミ怪人の正体はあなただったのですね、ヴァージル王子」
「我が正体を知っているか。しかし、今の我は、これまでとは違う」
黄金色に輝く体毛も煌びやかで、肉体は黒い金属の装甲に覆われている。王者の風格とも呼べた。
『再改造を受けたのか?』
「左様! これが我がデヴィランが誇る最強の魔物、【フェンリル】なり!」
オオカミ怪人が、自身をフェンリルと名乗る。神話クラスのオオカミだが、それだけ言わせる自信があるのだろう。
「くっちゃべってるヒマがあるのか、てめえ!」
ドワーフのモンクが、鉄球を全力で投げつける。
『エーススリー、退け。後はオレがやる!』
「うるせえ! こんな獲物を横取りされてたまるかっての」
コウガの静止も聞かず、エース・スリーの面々は戦闘をやめない。
オオカミ上位怪人は身をかわすが、鉄の鎖が怪人を縛り付けた。
好機とばかりに、モンクジャンプキックを繰り出す。鉄球と挟み撃ちにする気だ。
「今はコウガと話している」
怪人は鎖をたやすく引きちぎった。鉄球とモンクの蹴りを、掌打で抑え込む。
掌打によって、鉄球が砂と化す。
モンクの目が白くなり、身体が跳ね上がった。人間の死に方をしていない。掌打の衝撃で、全身の骨が砕けたのだ。
「舐めんじゃないわよ!」
手のひらで炎の球を作り出し、魔女はオオカミ怪人に放つ。
「くだらん」
真正面から炎を受け止めて、なおも怪人は前進する。
魔女は何度も、怪人に火球を浴びせた。その技術だけでも凄まじい。だが、魔女は怪人の進撃を止められなかった。
怪人の手刀による突きが、魔女の身体を貫く。
「よくも仲間を!」
剣士が長剣を、怪人に振り下ろす。
オオカミ上位怪人は、片腕による横薙ぎでカウンターの構えをとった。
鍛え抜かれた剣を、怪人は片腕だけで防いでしまう。
しかも、剣士もろとも武器を両断した。
「人間ごときが、人をやめた我に敵うはずもなし」
最強クラスの冒険者すら、歯が立たない。一瞬の出来事だった。
『オオカミ怪人! たとえ貴様がどれだけ強くなろうとも、オレたちは必ずお前を倒す!』
ベルトから、コウガは銃を出す。
『フィーンドバスターッ!』
ライジングフォームによって威力を増した魔法弾だ。
しかし、黄金のボディはコウガの銃撃を弾き飛ばしてしまう。
『利かない!?』
「我を倒すことなどできん。我は神。魔物の神であるぞ」
確かに、今までの怪人とは格段に違う。
『ならば肉弾戦だ、トゥア!』
宙返りで接敵して、ハイキックを見舞った。
相手が避けたところに、左フックを。
こちらは上腕のガードで防がれる。ボディーへのヒザも止められた。
イノシシ上位怪人ですら防御できなかった攻撃を、オオカミ上位怪人はすべて受けきる。
「無理だ。コウガの力を半分も引き出せておらぬ。そんな非力な腕では、魔王となった我に傷一つ付けることはできんぞ」
コウガのキックは、軽々と持ち上げられ、放り投げられた。
壁に激突する。
オオカミ怪人の手刀が、コウガの胸を貫こうとした。
『まだ終わっていない!』
突きと同時に、キックを放つ。
「ぬお!」
カウンターの蹴りで、怪人の腕を弾き飛ばす。
「おのれ!」
反撃の裏拳を押さえ込み、つかみ合いになった。
『なぜだ。なぜ人を襲う? お前がデヴィランに心酔する理由は何だ?』
オーカスという上位イノシシ怪人が、ドランスフォード、主にコーデリアへ強い恨みを持っていたのは理解できる。逆恨みとはいえ、だ。
しかし、この男がドランスフォードを手に掛けようとした目的が分からない。
「我こそが、コウガのベルトの装着者になるはずだったからだ!」
『なんだと?』
「生まれた月の周期が違うだけで、我はコウガの所有者になれなかった。これだけの力がありながら、我は!」
大きく腕を振り上げ、怪人はコウガの拘束を解く。
「コウガの適合者は、コーデリア・ドランスフォードだと決まってしまった。ありえない!」
オオカミ怪人は、憤りを拳としてコウガにぶつけてくる。一撃一撃は、コウガの装甲すら叩き割らんとするほどの力だ。
「我こそコウガを得て魔王になるに相応しい存在なのに! あんな小娘をコウガが選ぶなど!」
『そんなよこしまな考えだから、コウガに見放されたのだ!』
「黙れ!」
咆哮に近い怒声を、怪人は浴びせてきた。




