コウガ・ライジングフォーム
自分の生体エネルギーが、月の石に流れ込んでいるのだとわかった。何が起きたのかは分からない。しかし、何かが起きそうな予感がした。
『変……身!』
コデロと同じ変身ポーズを取る。
だが、何かが違った。体中を駆け巡る魔力の質が、レイジングフォームと異質なのである。
レイジング時は、血が沸騰するような痛みがあった。が、今はなんだか、温かい。体中が月の光を浴びているかのような、穏やかさに包まれている。
「なんでしょう? 不思議と力がみなぎってくる感覚があります」
コデロまで、穏やかな声になっていた。
『オレもだ。不思議な感覚だぞ?』
リュートは、変わりゆく自分の手足を見つめる。
『こ、これは!』
コウガの全身が、銀色の姿になっていた。膨大な力が、溢れ出す。
「なんと、コウガにこれだけの力がまだあるなんて! さっきまで、死に体だったのに!?」
生まれ変わったコウガの姿を見て、大怪人が恐怖に怯えている。
そんなにスゴイのだろうか? 試しに、コウガのステータス画面を開く。
『これは、【コウガ:ライジング・フォーム】だと?』
コウガの第二形態だという。レイジングフォームは、怒りに捕らわれている状態で、力は強いが鈍重だそうだ。このフォームはレイジングの腕力に加え、身体も軽くなっているらしい。
だが、この姿には見覚えがある。
リュートが死んだあのとき、コウガはこのフォームだった。
歓喜、興奮するリュートは、叫ぶ。
『レイジングがコデロのコウガなら、こっちはオレのコウガなんだ!』
ライジングフォームの両手を、コウガは握りしめた。
「怒りを超えて、誰かを守るための力に目覚めた、と?」
疑問点をコデロが告げるが、リュートは首を振る。
『分からない。正義感がピークに達したフォームという可能性だってある。とにかく、今は全力を尽くすのみだ!』
「はい。あの化物をやっつけましょう」
コデロも前向きになった。今なら、あの大怪人を倒せる気がする。
「キラッキラになったから、なんだっていうのです? その体中から膨れ上がってくる魔力、すべてワタクシがいただきますわ。そしてワタクシは、王をも超える存在に!」
大怪人が、王笏を振り下ろしてきた。コウガを叩き潰す気だ。
『トゥア!』
ハイキックで、コウガは王笏を押し出す。
丸太のような腕が、吹っ飛んだ。背骨を抱きしめるかのようにへし折れ、あらぬ方向へと曲がる。
「ああああああ、ワタクシの腕があああああ!」
巨大な腕を、いとも容易く砕くとは。
「パワーでは、ありませんね」
『相手の力を利用して、跳ね返したんだ』
ライジングフォームには、レイジングフォームのような腕力はない。だが、相手のパワーを反射する力に長けるようだ。
「まだですわ! これでも喰らいなさい! カオオオオオッ!」
大きく息を吸い込み、怪人は口から火炎を吐き出す。
炎のブレスは、ガレキを溶岩へと変えた。
溶岩は大怪人の足さえ焼くが、怪人は涼しい顔をしている。
『冷凍ガス!』
コウガは両手からガスを発生させ、炎を完全に消し去った。溶岩さえ固めてしまう。
「な、なにいいいい!」
これは勝てないと踏んだのか、怪人は背を向けようとした。
だが、固まった溶岩に足を取られ、バランスを崩す。
「冷凍ガスの威力も増しています」
『魔力も高まっているのか』
レイジングとは逆に、魔法の威力が上昇しているらしい。
『とどめだ! 憤激・改!』
ベルトから、光子の剣を召喚した。
ジジジと、剣が火花を散らす。
『トゥア!』
憤激・改を上位イノシシ怪人に投げつけた。
「こしゃくな!」
剣を、王笏で弾き返そうとする。
しかし、光の剣は黄爵を真っ二つに切り裂いた。勢いに任せ、上位怪人の胸を貫く。
「ぎゃあああ! なぜぇ!」
『これが闇を断つ光の力だ! いくぞ、トゥア!』
コウガは大地を蹴った。
これまでとは違う。身体が異常に軽い。
大怪人さえ飛び越える勢いだ。
風の魔法で全身を包み込む。上空に火炎の魔法を発動し、爆風を起こした。勢いに任せ、その身を嵐の弾丸と化す。
月光を背に、足刀を突き出した。
『くらえ、【ライジング・キック】!』
光の剣を蹴り込み、上位怪人の胸に突き刺す。
今のコウガは、物理的な攻撃力こそ低かった。
が、魔力によって勢いを上昇させた蹴りは、レイジングキックの数一〇倍の威力を持つ。
脂肪だらけの肉体に、コウガの破壊エネルギーを流し込む。
怪人の全身が、膨らんだりしぼんだりする。コウガの撃ち込んだ魔力が暴走し、巨大な肉体を内部から破壊しているのだ。
「うぎゃああああ! 魔王ヴァージル、デヴィランの王よおおお!」
伯爵夫人の巨体が、コウガのキックを浴びて爆砕した。自分の屋敷さえ粉砕して。
「コウガ、脱出しろ! こっちだ!」
ダニーとアテムの先導で、コウガは建物から逃げ出す。
怪物のアジトだった伯爵の屋敷は、瓦礫の山となった。
『そうらしいな』
ベルトに収まっていた宝玉は、太陽の力を有していた。月の石が太陽の石と反応して、第二の変身を遂げたらしい。
詳しいことは分からないが、コウガは新たな力を手に入れたといえた。
「ドレイク様に聞いてみるか?」
アテムの意見をは一理ある。
伯爵討伐の報告も必要だ。一度は顔を出していいかもしれない。
「とはいえ、コウガについては明るくないようですが?」
「行こう。伯爵をけしかけた奴らがどこにいるか、突き止められると思う」
ダニーの一言により、ドレイク卿と面会することを決めた。




