ロデントス伯爵の正体は?
「魔力が高ければなおさらいいらしいぜ。自然界とコンタクトを取れるヤツは、感度も高いそうだからな」
兵士たちが、爆笑し出す。
もうこいつらに用はない。今すぐにでも、彼らを始末したかった。だが、ロデントスをおびき寄せねば。
「少々下品ですよ。レディたちには敬意を払いなさい!」
豚のような顔の男が、豪華な服を着て歩いてくる。女性たちの誰よりも背が低い。
取り巻きに、小鬼の戦闘員も連れている。
やはり伯爵は、デヴィランと繋がっているのだ。
こんな姿にさせておいて、敬意を払えとは。どの口が言うか。
異様だったのは、隣に美しい少女を連れいていることである。
夫人だろうか。
淫靡な狂宴に、自分の配偶者を連れてくるなんて。
「どれどれ、どのような少女たちが」
いやらしい目つきをしながら、伯爵はとらわれの少女たちを吟味していく。
だが、コデロの前に立つと、伯爵は立ち止まった。
「なっ、貴様はコウガ!」
伯爵が後ずさる。
どういうわけか、伯爵はコウガの正体を知っていた。
コデロに向けて、戦闘員が槍の先を突き立てる。
「なぜ私の正体を?」
「これで、ご理解いただけるかな?」
伯爵が、顔の前で両手をクロスさせた。
顔が、みるみるイノシシ怪人へと変わっていく。
ドランスフォードを襲い、コウガに初めて土をつけた怪人と同じ姿に。
「お前は!」
「その通り。貴様らの街を襲ったイノシシ怪人【オーク】よ! お前のせいで、吾輩は深い傷を負った!」
服をめくり、イノシシ怪人は胸の傷を露わにする。
「この傷の痛み、貴様の肢体を以て償ってもらう!」
正体を知られたからには、もう手加減しない。
「そうはいきません! ベルト様!」
コデロは腕力だけで、鉄の鎖を引きちぎる。手首のカセも外した。
『承知した!』
「変身!」
変身のポーズを確認し、コウガへと変身する。
同時に、精神もリュートに入れ替わった。
「それが、本当のコウガか! 貴様は殺さぬ! 死ぬまで我がペットにしてくれよう。コウガを抱けるとは、どんな味がするのやら!」
イノシシ怪人が、舌なめずりをして、飛びかかってくる。
『トゥア!』
パンチ一発で、怪人は戦闘員のグループに突っ込んだ。
弱い。いや、コウガが強くなったのだろう。
これまでコウガは、数々の怪人と戦い倒していった。
その戦闘経験により、並の怪人なら圧倒できる力を得たのだ。
「いけ、かかれ!」
怪人の盾になり、戦闘員が襲ってくる。
番兵も戦闘員に変化した。
『フィーンド・バスターッ!』
銃をベルトから召還して、コウガは戦闘員らに撃ち込む。
同時に威力を弱め、女性たちを拘束していた手カセを解き放った。
『逃げるんだ。さあ早く!』
コウガに焚き付けられ、女性たちは一斉に逃げ出す。
「おのれ、けえい!」
怪人は死んだ戦闘員から槍を奪う。
槍先を、コウガに叩き付けた。
だが、コウガには傷一として付かない。
「バカな。これほどまでかコウガ!」
『どうした怪人! 今度はこちらから行くぞ。トゥア!』
コウガはキックを怪人に見舞う。
「ひい!」
戦闘員を犠牲にして、怪人は逃げ惑った。
苦し紛れに襲いかかる戦闘員を、軽くあしらう。
『どうした? 貴様の相手はこのオレだ! 自分で掛かってこい!』
「くそう、コーデリア・ドランスフォードさえ手に入れば、貴様なんぞ!」
『なんだと?』
聞き捨てならない言葉が飛んできた。
『ドランスフォートを襲ったのは、貴様の仕業だったのか!』
「そうよ。魔術の軍事利用阻止をうたうドランスフォードなど、目障りで仕方なかった! だから、ヤツらから魔法技術を奪うつもりだったのだ!」
どうも、ドランスフォードは魔術を使って高度な文明を隠し持っていたらしい。
『あの国から何を吸収しようと?』
「次元転送装置だ!」
魔法という割りには妙にSFじみた単語が、怪人の口から発せられる。
「なんと。次元転送装置ですって?」
『コーデリア、なんだそれは?』
「別の世界を行き来できる装置です。本来は異世界文明人と交流するために開発したのです。が、結社デヴィランの動きを察知して、封印を」
しかし、ドランスフォードは陥落、装置は奪われてしまった。
「だが、それもデヴィランに便乗したまで! 本命は、コーデリア王女の魔力よ!」
『コーデリアの魔力だと?』
「ワシは女を抱くことで、その女が持つ魔力の根源を奪い取ることができる! 我がデヴィランに対抗するコーデリア王女から力さえ奪い取れば、このワシが王になることだって可能。それほどの可能性を、あの女は秘めていたのだ!」
なんというゲスな理由だろう。
「あの麗しい美貌を、是非ともワシの手に!」
ヘンタイじみた欲望のために、コーデリアの祖国は焼かれたのだ。
「ベルト様、交代を」
『うむ』
ここはコデロ……いや、コーデリアに任せた方がいいだろう。
「そんな下らない作戦のために、私の家族は殺されたのですね?」
コーデリアの声を聞いて、怪人が後ずさる。
マスク越しだから、コーデリアの声も澄んでいた。
「お、お前は! いや、あなた様は、コーデリア・ドランスフォード王女!」




