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特撮ヲタ、姫騎士のヒーローベルトに転生!  作者: 椎名 富比路
第五章 「敵も強くなってきました」「それはこちらもパワーアップするフラグだ!」

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月の石

「おい、コウガ。相手は領主だぜ」

 ダニーが、リュートの発言を止めようとした。


 しかし、ドレイクは「続けてくれ」と促す。


「声が変わったな。口調も」

『気にせず聞いてくれ。オレは……コウガの意志だとでも思って欲しい』


 ドレイクは黙り、リュートの意見に耳を傾けている。


 コウガの力は、あくまでも武器を持たない人々のために使われるべき。貴族の個人的な私兵になるつもりはなかった。


『オレは力なき人々のために、剣を振るう戦士だ。それにあなたを含められるか、今はまだ』


「いや、あんたの言うとおりだ。あんたを見くびっていたよ」

 政治利用のために、コウガを呼んだわけではないと、ドレイクは語る。


『分かってもらえたらありがたい。とはいえ、ロデントスが、民を貪る悪であるなら話は別だ』

「ならば、情報がある。参考になるか分からないが。あの男は、美女をさらってどこかへ売り飛ばしているってのは知っているな? 受け渡しの日が、今日らしいんだ」


 近く、奴隷の密売が行われるらしい。

 そこにロデントス伯爵が顔を出すというのだ。


「人権派の国王によって、今のイスリーブで人身売買は禁止されている。もし突き止めることができたなら。そればかりか、人さらいの罪まで糾弾できる」


『分かった。引き受けよう』

 コデロは依頼を受諾した。


「場所は分かっているが、問題はどうやって忍び込むか」

「潜入捜査をします。敵をかく乱するので、後から乗り込んでください」


 冒険者とバレないように、コデロは腕輪を外す。


「おやっさん、装備を預かっていてください」


 ダニーにスマート・タグを預かってもらう。


「無茶だぜ! 武器も携帯できないのに!」

 アテムが、気遣ってくれる。


 確かに、スマート・タグも手放すことになる。


「まだ、私は面が割れていません。変身時もコウガですし、バレないかと」

「腹の紋章は、隠せないぞ」

「サラシでなんとかしますよ。では、行ってきます」


 さっそく作戦を開始しようとした。


「お待ちになって」

 が、ラキアスに止められる。


「奥方様、まさか、あなたも囮になろうとでも?」

 強めの口調で、コデロは拒絶した。


 もし、領主の奥方に万が一のことがあったら。

 コデロだってギリギリだ。

 その上、領主夫人までは守り切れない。


「いいえ、こちらの品を」


 メイドに持たせてラキアスが用意したのは、灰色の石である。

 

 宝玉かと思ったが、どう見てもキレイに磨かれた普通の石だ。


「これは、【月の石】と呼ばれる宝玉です。かつて、ドランスフォード王国にも、同様の宝玉があったと聞きますが」


 エルフ族に代々伝わる、伝説の秘宝なのだとか。

 しかし、杖に取り付けても武器にはめ込んでも、何の反応も示さない。

 どうやら、強い魔力を内包している物でなければ、この石の力を引き出せないのでは、という結論に達した。


「この石が、何の効果があるのか分かりません。ですが、ロデントス伯爵は、どうもこの石に興味があるようでして」

「馬車が襲われただろ? あれも、ラキアス様を狙ったようなんだ!」


 先日の襲撃も、この宝玉が関連しているのでは、とラキアスは考えたらしい。


「伯爵は、宝玉を求めているようなのです。しかし、この石にどのようなパワーがあるのか。そう考えている間に、あなたが現れた。もしかすると、この石はコウガのパワーアップアイテムなのでは?」


 問いかけられても、コデロに心当たりはなかった。


「では、こちらで、預からせていただけませんか?」

 ラキアスは、逡巡している様子だ。


「よろしいのですか? もしあなたが持っていると気づかれたら、あなたに危害が及ぶのではないかと」

「構いません。好都合です」


 本当に伯爵の狙いが宝玉なら、ラキアスが持っているのは危険である。


 コデロは手を差し伸べた。


「ラキアス、渡して差し上げなさい。我々には過ぎた代物だ。この石がコウガの手に渡るのは、ドランスフォードのお導きなのだろう」


「あなたがそう仰るなら」

 決心したのか、ラキアスは【月の石】と呼ばれる宝玉を、コデロの手に。


「ありがとうございます。分析はこちらで致しますので」

 コデロは、ベルトに宝玉を収納する。


 リュートはいきなり、無理難題を押しつけられた形に。


『どういった性能なんだ?』

 事細かに調べようにも、ただの石という鑑定結果しか出ない。


 だが、エルフ族にまつわる伝承があるなら、何か意味があるはず。


『ドランスフォード家に、伝承はないのか?』


「確か、月と太陽が合わさるとき、何かが起きるとだけ。私は、コウガ伝承については何も知らないままでしたので」


 周りに聞かれないように、念じるだけで話し合う。


 コーデリアが知らない。


 ではダニーなら、と思ったが。


 肝心のダニーも、首を振るだけ。


 自身で、情報を見つけるしかないようだ。

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