もっと力があれば……
「さて、怖い話はそこまでにして、お茶にしましょう」
ミレーヌの淹れてくれたコーヒーを囲んで、アテムの話を聞く。
「貴族様の子どもたちが遠足するってんで、護衛について行ったらこのザマだ。また勝てなかった。アタシにもっと力があればな」
自身のふがいなさに、アテムが悔しがっている。
「怪人相手なら、仕方ありません。彼らは恐ろしい肉体改造の手術を受けています」
「改造? 手術を受けたら、アタシも強くなれるのかい?」
アテムの問いかけに、コデロは首を振った。
「そうやって手に入れた力は、何もかも壊すだけ。自分の心すら破壊します」
「アンタも、その力を手に入れたのか?」
「私は違います。その強大な魔を払うために、力を得ました」
自分に起きた事情を、コデロはかいつまんで説明した。
コデロが王女ということは伏せて。
リュートが見知らぬ土地から来たことは話した。
「重大なことを、背負っているんだな。だから強かったのか」
アテムも納得してくれたようだ。
「だが、武器に関しては協力できるかも知れないぜ」
「本当か、ダニーッ!」
思わぬダニーの言葉に、アテムは目を輝かせた。
「おやっさん、アテはあるんですか?」
「ああ。お前だ」
ダニーが、コデロを指さす。
「武器を開発したとき、余剰パーツがたくさん出ただろ?」
言われてみれば、使わない武器がたくさん出てきた。
コウガ自体の力が強いため、腕力を必要とする武器は軒並みリストラしたのである。
とはいえ売ることもできず、倉庫を温めている状態だ。
パワー系武器の玩具が売れ残る原因が、今になってなんとなく分かる。
「そいつをネコソギ、アテムに引き取ってもらったらどうだ?」
「できるのか?」
「もちろんだ。その代わり、もうコウガの武装としては扱われない。スマートタグのアイテムボックスには入るから、問題ないけどな」
アテムの武装として、今後は活躍してもらうことにした。
試しに、両手持ちのバトルアックスを出す。
刃が半月状になっていて、柄の上下が繋がっていた。
コデロですら、両手で持って精一杯の重量がある。
「これがアンタの武器かい?」
重すぎる斧を、アテムは片手で持ち上げた。
「すごいな、さすが鬼族だ」
唖然としながらも、ダニーは感心している。
「なんの、すごいのはこの武器さ。なんだこりゃ。手裏剣にもなるぜ」
狭い店内で、アテムは斧を振り回し始めた。
「おいおい、うちで剥き出しの武器を素振りしないでおくれよ!」
「おっといけね!」
アテムは、斧を床に置いた。床のシミになっている部分だ。
「ぐえ」という声がした気がするが。
「おやっさん」
ダニーに意見を聞こうとしたが、「しーっ」とダニーは口に指を当てた。
「他人に武装を譲渡しても、構わないのですか?」
「OKだ。自分で使いこなせないなら、人手に渡したっていいだろう」
今後、このような事態は続く気がする。
「じゃあ、さっそく素振りしてくるぜ」
喜び勇んで、アテムが外へ飛び出す。
「それがいい。我々も行こうじゃないか。ミレーヌ、ついてこい」
「えー」と言いかけたミレーヌの口を、ダニーは塞ぐ。
「軽めの弁当を持って、外へ出かけようか。みんな支度しなさい」
ダニーがアイコンタクトを取ると、ミレーヌもうんうんとうなずいた。
「私もトレーニングが楽しみです」
ミレーヌと並んで、コデロも特訓へ向かった。
『また友だちが増えたな、コデロ』
「そう、ですね」
少し照れくさそうに、コデロはつぶやく。




