イスリーブの街
イスリーブの街が見えてきた。
門番に見えない場所で、バイクをベルトに収納する。
『こんな大きい品物まで、ベルトに収まるのか』
「コウガの持ち物なら、な。俺のバギーなど、他人の私物は持ち出せん。気をつけろ」
『分かった』
馬車の停留所で、アテムや子どもたちと別れた。
「じゃ、ギルド前で待っていてくれ。この子たちを送り返したら、すぐに戻るから」
子どもたちから、手を振られる。
コデロも振り返した。
「少しは落ち着いた感じがするわね、コデロ」
ミレーヌが、コデロの様子を伺う。
「子ども相手ですから。私だって愛想くらいは振りまきますよ」
これ以上茶化せば、また頑ななコデロに戻りそうだ。
『それにしても、大きい都市だな』
気を紛らわせるために、話題を変える。
「これだけ活気があったら、きっと純喫茶も受け入れてくれるわ。行ってくるわね」
さっそく、ミレーヌは商業ギルドへ。空き店舗がないか、調査へ向かってしまう。
「商売っ気の強い女だぜ」
呆れながら、ダニーが頭をかく。
「いいじゃないですか。アグレッシブな子で」
すぐに、ミレーヌが帰ってきた。
ドランスフォートと同等か、それ以上に発展した街だ。産業革命というか、スチームパンクっぽい世界観だ。国境を越えるだけで、ここまで風景が変わるとは。バイクを隠さなくても違和感がなかったかも。
「珍しいだろ? でもな、もはやドランスフォードのような街の方が珍しいんだ。ほとんどの街が、魔術と科学とが入れ替わりつつある」
「ドランスフォードがよその国に負けたのは、必然だと?」
「怒らないでくれ。お前の祖国をバカにしているわけじゃない。こんな激動の時代で、よくあれだけの魔法技術を残せたと思っているよ」
追い出された身とはいえ、ダニーは決してドランスフォードの悲劇を面白がっているわけではないと主張する。
「いえ。そう聞こえたなら謝ります。ですが、ここまでとは」
コデロは、時代の移り変わりを痛感しているようだった。
「だが、発展が急激すぎる。国王も懸念しているのだが、ロデントス伯爵は開発を強引に推し進めているらしい」
そうやって私腹を肥やしているとも聞こえる。
「お待たせ」とアテムが戻ってきた。
「じゃあ、ギルドに依頼の報告へ向かおう。こっちだよ」
アテムに連れられて、イスリーブの冒険者ギルドへ。
依頼達成の報酬を受け取る。
貴族の子どもたちを守ったということで、相当な額だ。
成り行きで助けたコデロにさえ、結構な量の金貨を受け取る。
これなら、ミレーヌが欲しい店舗も借りられるだろう。
「これは、あんたらが全額もらってくれ」
あろうことか、アテムは大量の金貨をすべて、コデロに差し出した。
「こんなにいただけません」
「あの化物を追っ払ったのはアンタだ。受け取ってくれ」
「あなたが生活できないじゃありませんか!」
「いいんだ。その代わりに、これでアタシを強くして欲しいんだ」
コデロが拒んでも、アテムの意志は固い。
「ワケを話してください、アテム」
事情を聞こうとすると、そこへミレーヌがやって来た。
「お店の営業許可をもらえたんだけど、お取り込み中かしら?」
「いいえ。ちょうどよかったです。ではアテム、お店の開店を手伝ってください」
頭にハテナマークが浮かんでいる状態のアテムを、コデロは無理矢理引っ張っていく。




