ペンギン怪人
現れたのは、人間サイズのペンギンだった。顔の上半分を鋭い目の付いたパーカーで隠している。レオターをに身を包み、手は羽根で、足は人間の女性という出で立ちだ。
一見すると、着ぐるみを思わせる。見た目こそ愛らしい……と言えるが、目の奥に邪悪な気配を感じた。
『ペンギンの怪人だと?』
「失礼ね! アタシは魔物、【ハーピー】よ!」
自らをハーピーなどと名乗る怪人が、配下に指示を送る。
「こんなヤツやっておしまい! ささ、お子ちゃまたちはアタシと遊びましょうねー」
ペンギン怪人は、子どもたちを連れ去ろうとする。
『待て! 子どもたちをどうする気だ!』
「アタシのペットにするに決まってるじゃない! ちゃんと無傷で返すわよ! この子たちにデヴィランのしつけをたぁっぷり教えてからね!」
子どもたちを洗脳する気なのか。
『そんなことは、このオレが許さん』
「しつけが必要なのはあなたの方ね! 喰らいなさい! クケエ!」
ペンギン怪人が腕を振って、カマイタチを発生させた。
「くっ!」
コウガは剣で武装し、馬車に迫るカマイタチを防ぐ。
弾けた衝撃波が、岩や馬車に傷を付ける。味方であるはずの戦闘員すら、カマイタチに巻き込んだ。
『衝撃波か!』
人間に近い身なりの割に、攻撃力が計り知れない。「次は当てるわ! クケケェ!」
立て続けに、ペンギン怪人は衝撃波を放つ。
コウガはバスの盾になり、なすすべがない。
後ろから、子どもたちが声援をくれていた。
だが、今ココで打開策を打たねば、危機を脱出できない。
『こうなったら』
剣を収め、コウガは両手を胸の前にかざした。
「何? 降参のつもり? なら、ひと思いに斬り捨ててあげるわ!」
『修行の成果を見せてやる! 冷凍ガス!』
冷凍のガスを、周辺に撒く。氷魔法と風魔法を融合させたのだ。最初は安定しなかったが、原理さえ分かってしまえば長時間扱える。
「ムダよ! 突風で吹き飛ばしてあげ……何ですって!」
カマイタチが発動しない。
『分からないのか。氷のガスで空気を重くしたのだ』
冷たい空気は、温かい空気と違って重いのだ。
いくら怪人がバタバタと腕を振り回しても、風が発生しない。
『ペンギンベースの怪人と言えど、寒い世界の特性を知らないとは』
「ええいこしゃくな。こうなれば直接攻撃で切り刻んでやるわ!」
ペンギン怪人が、水平チョップを繰り出す。
岩を真っ二つにするほどの凶悪な刃となって、コウガを襲う。
「ベルト様、剣には剣を」
『キミの剣術に託そう』
コウガはベルトに触れ、両手に二振りのショートソードを召喚した。




