バイク
「これは。こんな乗り物が、異世界にあったとは」
外装は、薄い鉄板を使用している。ギルド長であるオーガ族に頼んだらしい。エルフ特製の魔法石を動力として走るという。
「各部制御系やミラー、計器類は俺が作った。細かい調整が必要だからな」
驚いたのは、車輪につける「ゴム」があったことだ。
「全然、試作段階だ。旅はコイツのテストも兼ねる。実用化されれば、戦闘はグッと楽になるだろう。しかし、まだまだ道楽のレベルでな。それでもいいと思うが」
本当なら、バイクは快適な旅のために作られるべきである。とはいえ、平和ではない世界だと実用的な技術が要求される。
「運転してもらいたい。使い方は分かるか?」
コデロにまたがってもらう。
ハンドルを握った瞬間、どう動かせばいいのか分析できた。
『これも、ベルトの力で操縦できそうだ』
ベルトとほぼ同じ工程で作られたのだろう。
感覚で把握できる。
最後に、ダニーとミレーヌが荷台に乗り込んだ。
「発進します」
コデロが、アクセルをふかす。
『待て、コデロ。ダニー、ちょっといいか?』
リュートは、コデロにストップをかけた。
「どうした?」と、ダニーが荷台から顔を出す。
『どれだけ飛ばせばいい? 荷台の屋根が吹っ飛ばないか』
よく見たら、荷台の壁が布である。
バイクのスピードに耐えられるのか?
「気にするな。そんなにスピードは出ない。馬よりちょっと早いくらいだ。風は受け流せるように設計してあるさ」
『なるほど、馬力重視というわけか』
たしかに構造上は、風を受けても流れていく設計にはなっていると思う。
「俺の科学力は完璧だからな」
『そこまで言うなら』
改めて、コデロがアクセルを作動した。
バイクがゆっくりと発進し、荷台を引く。
『スゴイ馬力だ』
これだけ荷台が大きいと、馬が二、三頭は必要なはず。しかし、バイクは難なく動いた。バランスもいい。
「では、向かいます。イスリーブへはどちらへ?」
「その前に、向かうところがある」
ダニーから指示をもらい、フーゴから少し離れた場所に向かう。
しばらく走っていると、霊園が見えてきた。
「ここで止めて、コデロ」
ミレーヌの要求に応じ、コデロはバイクを止める。
「ここは?」
「女房の墓だ」
霊園の片隅に、小さな墓標があった。
ダニーとミレーヌは、その墓の前で手を重ねる。
「行ってきます、お母さん」
「おっかあ、ちょっくら留守にするが、帰ってくるから。この形だけど、お前さんも連れて行く」
ダニーは、胸からロザリオを出す。
「よし。用事も済んだ。行くか」
わずかに涙声をこらえ、ダニーは出発を促した。




