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特撮ヲタ、姫騎士のヒーローベルトに転生!  作者: 椎名 富比路
2-5 「決着をつけます」「長きに渡る因縁もここまでですわ!」

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116/119

本当に裏切ったんですか⁉

 エスパーダの剣と、コブラ大怪人の杖がぶつかり合う。


「深手を負ったアタシは、支配を配下に任せたのさ」


「その中に、あなたもいたのですね、レンゲ?」


 レンゲは、悲しげな顔になる。


「ワタシはレネゲイドとして、レプレスタの城に潜入し、現王国の弱みを握ることにしました。ディアナ様が、要塞を起動させるほどの力を持つと知ったのです」


 レンゲは、ディアナにピアノを教えることにした。

 母を失って消沈していたディアナに、母親が得意としていたピアノを教えるという口実で。


「メトロノームに擬態させた像を置き、ディアナ様の魔力を奪っていたのです。長年の間」


 だから、ディアナは病弱になったのか。 


「あとはクイラスの内部にある武装を開放するのみ。さあ、ディアナよ、そのピアノを弾きな!」

「ピアノが要塞となんの関係が?」

「ディアナの演奏によって、要塞に設置されている砲門のスイッチが開放されるのさ!」


 エネルギーは、炭鉱で集めた魔法石で潤沢に集まっている。

 あとは、起動させるだけらしい。


「レプレスタの血が濃いディアナの力さえあれば、要塞は無敵の破壊兵器と化すだろうね!」

「そこまで、ディアナの力は強いといいますの?」

「ディアナがというより、こいつの母親が強いのさ」


 イクスたちの母は、エルフ王国オンディールの王女だった。

 強いのは間違いない。末妹のディアナに目をつけていた。


「あんたも兵隊として取り込もうとしたけど、魔力は大したことなかった。レプレスタの武術センスだけ受け継いだようだね。そこで、ディアナに目をつけたのさ。いやあ、すばらしい! オンディール王女の生き写しかと思ったよ!」


 アロガントが、ディアナに好奇の目を向ける。


 青ざめて、ディアナが身震いした。


 ディアナは、姉妹の中でも魔力が特別強い。

 アロガントはレンゲに指示を出して、ディアナから魔力を奪い続けた。

 あとはディアナ本人を要塞へいざなうのみ。


「さっさと演奏しな! あんたの絶望感を食らって、要塞の魔力はより濃くなっていく!」

「いやです! どうして、わたしが故郷を破壊しなければならないのですか!」

「うるさい小娘だね! 黙って演奏するマシンになりゃいいんだよ! レンゲ!」


 レンゲが、ディアナを諭すかのように隣に立つ。


「乱暴をしないでくださいまし!」

『待って、イクス。様子がおかしい……』


 レンゲには、ディアナを虐待する徴候が見られない。

 どこか、見守っている気配さえ感じる。


「何をしている? 折檻でも罵倒でもいいからピアノを弾かせるんだよ!」

 アロガントが急かす。


「あんたがやらないなら、ワタシが無理矢理にでも」

「やらせません。あなたを、ディアナの元ヘは行かせませんわ!」

 エスパーダの剣を、コブラ大怪人の杖が弾く。


「どこまでも邪魔な女だね!」

 大怪人が、エスパーダの腹に膝蹴りを入れた。


 圧倒的な戦力差に、エスパーダは壁に叩きつけられる。


「考え直してくださいレンゲ! あなたは、本当に裏切ったんですか⁉」

 よろけながらも、エスパーダは立ち上がる。


「ワタクシとあなたは、仲間じゃなかったんですか?」


 エスパーダのアゴに、無情にも大怪人の杖がヒットした。


 顔を打ち抜かれ、エスパーダが大きく宙返りをする。


 レンゲはエスパーダの言葉を無視して、ディアナに演奏を促す。


「ワタシを信じてください」


 優しく、レンゲはディアナの手の甲に、自分の手を載せた。


「よしなさい、ディアナ!」

 うつ伏せになりながら、エスパーダがディアナを呼ぶ。


『待つんだイクス。なにか変だよ』


 ノーマンの言葉にも、イクスは素直に従えない。

 無理にでも、立ち上がろうとしてしまった。


「あんたは地べたを這いずって、よく見ておくんだね! 自分の故郷が焼かれるさまを! アハハハ!」

 大怪人が、エスパーダの背中を踏み潰す。


 ディアナが、演奏を始めてしまう。手の震えが止まっていて、自由に指を走らせる。


 何が起きたというのか。


 聴いているエスパーダにさえ、ディアナの雄大さを感じ取った。


 透き通った声で、レンゲが歌い始める。レプレスタの民衆に聴かせるはずだった歌を。


「これだよ! アタシが失った歌声を、レンゲは見事に再現してくれた!」

 何度もエスパーダをヒールで踏みつけながら、大怪人が興奮する。


「レンゲは無改造なのですね?」

「歌声に支障が出てしまうからね!」


 レンゲの歌は、彼女の均等の取れた肉体だからこそ成り立っているらしい。

 ヘタに改造を施せば、美しい声は失われ魔力にも影響が出てしまう。


「歌えなくなった自分の代わりに、身内に呪いを歌わせるとは。どこまでも度し難いですわね!」


「なんとでも言うがいいさ! 勝てばいいのだから!」

 コブラ大怪人が、勝ち誇る。



 だが、その顔がみるみる曇っていった。




 暴れるはずのゴーレム部隊が、デヴィランの陣営を攻撃し始めたのである。


「ど、どういうことだいこれは⁉ レネゲイド、あんた⁉」

「言ったはずです。ワタシの悲願だったと!」


 歌をやめたレンゲが、コブラ大怪人に向き合う。

 その顔は、いつもの正義に染まっていた。

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